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13-62:一万年の因縁 上

 トリニティ・バースト発動後、結局は先ほどと同じような展開になる。要するに、誰かが誰かを相手にして、均衡を崩さないようにしている――T3がリーゼロッテ・ハインラインの、ブラッドベリがローザ・オールディスと対峙しており、残った自分とナイチンゲイルが主にダニエル・ゴードンの相手をしている形だ。


 自分がゴードンの相手を今更になって買って出たのは、幾つか理由がある。一つは、自分ならばナイチンゲイルと連携が取りやすいこと――ソフィアとの間にはいくつかの簡単なジェスチャーで意思疎通ができる他、耳に取り付けている通信機を使えば、グロリアからのメッセージを受けられるため、コンビネーションにより優位に戦いを進められるからだ。


 また、トリニティ・バーストの加護のないナイチンゲイルを誰かが援護する必要があるというのもある。自分はグロリアと共にいくつもの作戦行動を共にして来たほか、ここ一年の間でソフィアに戦い方を師事していたのは自分であり、彼女らの行動の癖をこの中でもっとも熟知している。同時に、ダニエル・ゴードンとの戦闘経験も、この中では最も多いのは自分である――星右京をアラン・スミスに任せられるのなら、敵味方の行動の癖から、上手く援護を出せるのは自分という判断があった。


「こうやって相まみえるのも何度目か……今にして思えば、金字塔で君を逃したことが、僕の失敗だったという訳だ」


 こちらの攻撃を風の壁でいなしながら、ダニエル・ゴードンは苦し気に声をあげた。グロリアも含めれば三対一、更にアラン・スミスからもらったダメージが癒え切っていないせいか、顔にかなりの脂汗を浮かべている。


 それでもなお、こちらが有効打を打ち切れないのは、やはり彼が七柱の創造神の中で最強ということの証明だろう。氷や毒の妨害魔術でこちらの呼吸や動きを阻害し、自分の接近戦や布袋劇に関しては風の魔術でいなし、ソフィアの魔術は瞬間的にディスペル、グロリアの炎熱は真空の壁で対処してくる――ほとんど三対一に近い構図だというのに適切に対処してくるのは、彼がコンピューター以上の高速思考により、瞬間的な状況把握能力とそれに対応できるだけの魔術を瞬時に編み出せるが故だろう。


 彼を手っ取り早く仕留めるなら、やはりADAMsによる高速の一撃なのだろうが――それをさせまいとリーゼロッテ・ハインラインがT3を拘束し、アラン・スミスは星右京との追いかけっこに従事している。もしくは、魔術によらない、七星結界を貫通するだけの威力のある一撃を繰り出すかだが、シルヴァリオン・ゼロがディスペルされてしまうとなれば、自分たち三人のうちに彼の防御を破れるだけの火力はないことになる。


 もちろん、ハインラインと右京もかなり危険な相手であり、とくにアラン・スミスのおかげでJaUNTに意識を割く必要が無くなったことはプラスであるし、何よりゴードンの方に疲労の色が見える今、自分とナイチンゲイルで波状攻撃を続け、相手の隙を見つけて必殺の一撃を叩き込むチャンスもそのうち見えてくるだろう。


「こうやって直接対峙するのは三度目……人形の時を含めれば四度目ですね。金字塔で仕留め損ねて妙な因縁が生まれたことは同意しますが……それは私の勝ちで占めさせてもらいますよ」

「……はは! 女の子を利用して三対一に持ち込んで勝ちというのも、情けないとは思わないのかい!? ともかく、改めて君の癖は理解した……これで仕舞にしてくれる!」


 魔術で編まれた浮遊する手が魔術杖のレバーを引きながら陣を編み、男は魔術を発動させる動作の一環としながら杖を一振り、魔術神はソフィアの魔術を無効化しつつ、こちらへ向けて無数の光弾を撃ちだしてくる。六つの陣が編まれていたことから、かなりの威力のある魔術だろう――こちらは背後へと跳びながら護符を取り出し、七星結界で相手の魔術に対抗する。


 光弾はそこまでの大きさではないものの、想像の通り一発一発の威力はかなり高い。結界を展開する右手に確かな衝撃を受けながら、光が瞬く視界の先、魔術神の動きを見逃すまいと目を見開きながら男の所作を見る――アルジャーノンはもう一度レバーを引き、そのまま次の魔術を編み始めている。


 向こうがこちらの足を止めて出す一撃となれば、以下のどちらか。こちらの七星結界を打ち破る強力な一撃か、自由を奪う拘束魔術か。どちらにしても、この場に居ればそのまま狩られる――それならばと、結界を盾にしながらダメージ覚悟で前へと出る。トリニティ・バーストで肉体が強化されている今ならば、直撃さえ免れれば多少のダメージならば耐えられる。何より、防戦が続けば向こうのバリエーションの多さに翻弄されるだけだ。

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