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13-52:虎と技術者の激突 中

『あぁ、もう滅茶苦茶……今はなんとなってますが、足場となる戦闘機が無くなったらどうするんですか?』

『どうするもこうするも、もう飛び出しちまったんだからな! あとは俺がやられるか、オッサンがやられるかだ!』


 相手の攻撃を避けるように、六機目、七機目とジグザグに蹴り飛ばしながら目標を目指す。レムには申し訳ないが、彼女のアドバイスを聞く気は無かった。自分には、最高の相棒が居た――常に背中を押してくれた友の代りは、何者にもできないのだから。


 そんなこちらの思考を読んだのだろう、レムは小さくため息をついた後、咳ばらいを一つした。


『こほん……良いでしょう、私はレム。原初の海と連結した最高のAIプログラムです。この星におけるアナタの思考パターンや行動パターン、並びに右京の残したデータベースを基にチューンナップして、アナタのパフォーマンスが向上する方向性にアドバイスを変えましょう。

 さて、敵艦のバリアは強力で、更に敵機は百五十機にまで増大し、変身の限界は刻一刻と迫って来ています。状況は絶望的、このままいけば敗北は必須でしょう。どうするつもりですか、アランさん?』

『しゃあ! 燃えてきたな!』


 どうするつもりなのか、そう聞かれると俄然やる気が出てくる。まぁ、何の答えにもなってはいないのだが――今にして思えば、かつての相棒はいつもこちらに対して「どうする」と聞いていたことを思い出す。こちらの主体性を尊重していたというより、自分の行動が無茶苦茶で委ねざるを得なかった部分もあるのだろうが――ある意味ではタイガーマスクならどうにかしてくれるという信頼の裏返しでもあったのだろう。


 八機、九機と蹴ったタイミングで、言葉通りにこちらのウォーミングアップも終わった。むしろ、身体が燃える様に熱いくらいだ。そして十機目を蹴ったタイミングで目前に重巡洋艦が迫り、足を突き出しながらバックルを弾き――。


『敵艦のバリアは、対物質と対エネルギーを同時に展開できません。ですから……!』

『喰らえ、バーニングブライト!』


 自分の足が敵艦の装甲に当たる直前、相手が物理バリアを展開するのと同時に、身体に集まったエネルギーを一気に開放する。フレデリック・キーツも無敵艦隊を作った時には、まさかこんな馬鹿みたいなスピードでぶつかると同時にエネルギーを叩き込んでくる奴がいるとは想いもしなかっただろう。それを作ったのがキーツ本人というのが全くの皮肉だが。


 ともかく、自分の体の何百倍も巨大な戦艦は、放出された強大なエネルギーを防ぐことができず、直に巨大な熱量を叩き込まれ――こちらは物理バリアの斥力を利用してその場を一気に離脱して距離を離した直後、戦艦は大爆発を起こして海上に凄まじい火柱を巻き上げた。


 後方へと吹き飛ばされたその先には、丁度自分を追ってきていたノーチラス号があり、自分は改めてその屋根の上に着地した。足場にしたのは――もとい、攻撃したのは重巡洋艦含めて十一機だが、相手自身の攻撃やバーニングブライトの力の余波で、合計三十機程度の気配は消失した。


 先ほど以上この空域に敵の気配は増えていないし、戦艦内に温存していた戦闘機も既に全て出し尽くした形だろう。もちろん、こちらも変身のタイムリミットには近づいて行っている訳であり、時間稼ぎに回られれば厳しいが――ともかく一度ADAMsを切り、一息つくことにする。


『レム、さっきのアドバイスは助かったぞ』

『どういたしまして。戦略そのものにアドバイスするより、行き当たりばったりに対して突破口を作る助言の方がアナタにはあっているらしいですから。でも、私が何も言わなかったらどうしてたんですか?』

『同じように突っ込んでたかな?』

『でしょうねぇ……ともかく、向こうも既に戦闘機は全て前線へと出しており、敵機を足場に進んでいくのは厳しくなりましたね』

『しかし、相手の主力艦も残り一隻だ』

『えぇ。しかも敵旗艦も主砲を撃った直後、再装填までに時間が掛かります。今ならノーチラスで接近することもできるでしょう……仮面の用心棒も居ることですしね』


 確かに、ノーチラスが先ほどまで敵旗艦と距離を取っていたのは、複数の艦を同時に相手にするのが難しいからだ。今なら一対一であり、戦闘機の攻撃くらいならいなしながら前進できるはず。それに戦闘機の波状攻撃が厳しいというのなら、自分が露払いをすればいいだけだ。


 恐らく状況をレムがイスラーフィールに伝えたのだろう、ノーチラスは確かにキーツの戦艦を目掛けて前進を始めた。それに合わせ、脳裏にレムでなくイスラーフィールの声が聞こえてくる。

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