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13-41:最下層への強襲 下

「ふぅ……助かりましたアガタさん!」


 相手が動かなくなったのを確認してから改めてアガタの方へと振り返り、彼女の方へと移動する。彼女が何をしたのかと言えば、それは毒の浄化だ。神聖魔法には解毒の法があるので、アガタはそれで空気を清浄化してみせたのだ。


 とはいっても、実はそれは一般的な方法でも無かった。普通、解毒の魔法は人体に対してかけるものであり、空気に対して掛けるというのは全体未聞だろう。また、解毒の魔法は対応する毒に対して適切な魔法をかけなければならない。旧人類の扱う謎の毒ともなれば自分は知識がないので、浄化するにはあてずっぽうで色々試さなければならなかったし、下手すれば自分が該当する毒の知識を持っていなかった可能性すらある。


 そのため、ここに関してはアガタとレムのコンビだからこそ上手く浄化できたといっても良いだろう。人格部分しかないとは言えども、それでもレムは自分たちより豊富な知識を持っており、今回散布されていた毒の種類を理解したうえでアガタにそれを伝え、即席で空気を浄化して見せた――以上が事の顛末だ。


「こちらこそ、助かりましたわクラウディア。とはいえ、この辺りの区画を一時だけ浄化したにすぎませんから……またすぐに毒ガスを撒かれててしまうでしょう。レム、目的のエレベーターは近いんですか?」

「えぇ。ルシフェルもそれを警戒してこの辺りに配備されていたのでしょうから……しかし、何とか最下層まで辿り着ければ毒ガスの脅威は無くなると思います。彼の主人たる七柱達が肉の器にあるので、彼らが戻るかもしれない最下層にまで毒ガスは散布できないはずですから」

「それなら、エレベーターまで一気に駆け抜けるしかなさそうですね。クラウディア、踏ん張りどころですわよ!」


 その後、レムから散布されている毒の成分を確認した後――自分側でも解毒できるようにするためだ――アガタが壁の端末に何かを打ち込むと、近くに降りていた隔壁が上がっていく。その先にはいつの間にか集結していたらしい第五世代型が立ち並んでおり、猛烈な弾丸の雨あられで自分たちを出迎えてくれたのだった。


 ともかく、話している暇もノンビリしている暇もない。毒を防ぐための結界のおかげでついでに銃弾を防ぐことはできるが、展開し続けているだけでそれだけ精神力も消耗していく。アガタと共に第五世代型をなぎ倒しながら、レムが指さす突き当りの壁まで通路を一気に駆け抜ける。


 その壁は一見すると変哲もない白い壁のようだが、レムがアガタに指示を出し――壁に隠されていた秘密の端末か何か操作をしているようだが、その間は自分がアガタに攻撃が当たらないように防御に徹する――壁が動いた通路の先に扉が現れた。


 先ほど打ち合わせしたように、どうせエレベーター自体は操作はできないのだ。アガタは無言のまま、しかし気迫のこもった顔面で棍棒を振り上げ、主の部屋へと直通するエレベーターの扉をぶち壊した。


 その先はワイヤーだけが見える空洞となっており――自分もアガタも躊躇せず、その空洞の中へと飛び込んだ。


「最下層まで残り二百メートル、飛び降りたら落下までにかかる時間は約六秒です」


 レムのなんだか能天気な声を聞きながら真っ暗闇の中の自由落下が始まり、絶妙な浮遊感の中で五まで数え――ついでに、自分たち以外にも上から何か重いものが落下してきている気配を感じる――六に合わせて足元にも結界を展開し、落下の衝撃を吸収する。


 直後、アガタが鉄の棒を振り上げる気配を感じる中、自分は両腕を上に掲げて結界を展開し――。


「どっ……」

「せぇええい!」


 二人の気合の入った掛け声が響くとともに、自分の上部からかなりの重みが加わった。同時に目の前の壁が吹き飛んでいき、その先から白い灯りが差し込んでくる。自上から落下してきたエレベーターの籠を自分が受け止め、アガタがエレベーターの扉を破壊した、というのが落下からおよそ十秒程度の時間で起ったことだっ。


「くっ……アガタさん、私はここまでです……ここは私に任せて、アナタは先に……」

「何馬鹿なことを言ってるんですか。さっさと籠を押し戻してこちらへ来てください」


 先に最下層の中へと入ったアガタは、振り返りもしないで呆れた声で答えた。せっかくそれっぽいシチュエーションだったのでボケたのに、まったくつれないお友達だが――ともかく腕に力を込めて言われた通りに籠を上へと押し戻し、そのまま自分も中へとひょいと飛び出した。直後、再び自由落下に任せて落ちてきた籠が地面へと衝突し、そのおかげで背後から異様なほどの煙が舞い上がったのだった。


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