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12-98:ノーチラス号発進 下

「あんたの言う通り、バッチリ整備してきたぞ!」

「シモン、助かります! 動ける者は動けない者を抱え、ノーチラス号へ飛び乗ってください!」


 チェンは開かれた扉を指さし、すぐさま皆行動に移った。まずアガタが自分に肩を貸してくれ、結界を蹴って器用に跳び、自分たちがノーチラス号への一番乗りになった。その後はソフィアが機械の鳥を、ナナコがT3をお姫様抱っこで抱えて、ブラッドベリがイスラーフィールとジブリールを両脇に抱えて飛び乗って来て、最後にチェンが入って来て後、すぐさまノーチラス号は急発進した。


 その直後、船体が大きく揺れた。通路には窓が無く、外の状況は認識できないが、恐らくかなりの規模の噴火が起こったのだろう。あの山はこの星の有史以来の休火山であった訳だが、逆を言えばその休眠期間中にその地下ではかなりのエネルギーを蓄えていたということか。だが、ノーチラス号も相応の速度で火山の噴火を振り切ったおかげか、火山の噴火に巻き込まれることは防げたようだった。


 状況を確認するためか、チェンとレムは――彼女の宿るアンクを持っているアガタも――急ぎブリッジへと向かった。自分も移動したいのだが、いかんせんまだ身体を満足に動かせそうにない。誰か肩を貸してくれないものかと辺りを見回していると、長い金髪の少女と目が合い、彼女の方も頷いてこちらへ来て肩を貸してくれた。


「お疲れ様。えぇっと、クラウさん? ティアさん? どっちで呼べばいいのかな?」

「どっちでも大丈夫ですよ。しかしソフィアちゃんも……改めて、大きくなりましたね」

「……まだ大きくなりたいんだけど、流石にこの先もクラウさんには敵わないかな」


 そういうソフィアは、滅茶苦茶に真剣なまなざしでこちらの顔から下を見つめている。激戦の後に他人の胸を真剣に見つめるなどマイペースの極みとも思えるが、それだけ彼女にとっては重大なことなのだろう。


 自分としては、彼女の成長の方がビックリだった。最初にレヴァルで彼女を遠目に見た時には小さな女の子だったのに――確かに共に旅をしている中でも少しずつ背も伸びてきているなとは思っていたが、今では身長を完全に抜かれてしまった。まだ顔には年相応のあどけなさは残っていつつも、全体としては大人びた雰囲気を帯びており、もしかしたら自分が一緒に並んでいても他人からは同年代と見られるかもしれない。


 そんな風に彼女の成長に感じ入っていると、ちょうどブリッジに到着した。前面の巨大なモニターには、噴火の影響で発生した煙が立ち昇っているのが映し出されている。


 隣接している魔王城――かつて移民船だったアーク・レイは、恐らくあの煙の中でマグマに呑まれ、その長きに渡る役割を終えてしまったに違いない。先にブリッジに入っていたブラッドベリは、その様子をどこか哀愁を帯びた横顔で見つめていた。


 しばらくの間、皆黙して映像を見つめていた。そしてややあってから、未だに自分に肩を貸してくれているソフィアが小さく「正直ね」と声をあげる。


「私はハインラインと……エルさんと戦うことに関しては覚悟を決めてたんだ。さっきは奇襲で倒されて、クラウさんに頼りきりになっちゃったけど……ディック先生もそう。もうきっと元には戻れないだろうって。きっとアランさんなら救い出すことを諦めないって分かっていても……加減のできる相手じゃないから」

「ソフィアちゃんだって間違えてないですよ」

「うん。結局何が正解なんて分からないから、私自身も自分の今までの決断を間違えているとは思わない。でも……」

「でも?」

「もう一度、四人で……私とアランさん、クラウさんにエルさんで、一緒に肩を並べたいなって。クラウさんを見てたらそう思ったよ」

「……えぇ、必ず。私達で取り返しましょう、仲間を」


 そう、失ってしまったものも多いけれど、まだ仲間を取り戻せるチャンスはあるのだ。こちらの返答に対し、ソフィア・オーウェルは大きく頷いた。しかしその直後、ナナコに無駄に突っかかったと言われたことだけはいただけないと、可愛らしく唇を尖らせ――そういうところは全く変わっていなくて、それがなんだか嬉しくて、ついついこちらも小さく噴き出してしまったのだった。

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