表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
754/992

12-84:神話を終わらせる剣 中


 ◆


 三体のルシフェルは互いに連携を取り、こちらに接近を許さない波状攻撃を仕掛けてきていた。奴らは時間を稼いでいる。自分たちが地上に向かえば趨勢は一気に変わる。それ故に地上でかたが着くまで、自分とグロリアをこうやって空中に縛り付けているのだろう。


 地上の様子を眺め見ると、あまり状況は芳しくない。チェンがジブリールに足止めされている間に、クラウ達がルーナによって窮地に立たされており、ナナコは魔剣ミストルテインを失ってしまった。


 なればこそ、自分が早く地上に向かわなければ――そう焦るほどルシフェルの術中にはまってしまっているような印象を受ける。


 だが、そんな状況がある事態により一変した。地上から立ち上る光を警戒したのか、三体のルシフェルの内の一体が、そちらへと向かって行ったのだ。その先にはナナコがいる――しかし無防備な仲間への敵の接近をマズいと思ったのは一瞬であり、むしろ自分もあの場で何が起こっているのか目が離せなくなってしまう。


 ナナコの持つグロテスクな剣には、何やら神々しい光が集まっており、それが一気に巨大な柱と化した。あの色は、あの黄金色は、魂の光――光の巨人が放つものと同質のものだ。


 ナナコは一度剣を振り下ろし、そして凄まじい勢いで振り上げると、魂の刃が空間を、空を割いた。その一撃は、かつて聖剣レヴァンテインが放ったマルドゥークゲイザーや魔剣ミストルテインのゴッドイーターをも遥かに凌ぐ――ルシフェルが放った巨大なレーザーなど激流に向かって放たれた水鉄砲と言わんばかりに霧散し、ついでの如く一体の天使長が少女の放った一撃に消し炭にされた。


 少女が振り上げた一撃は強大であり、当たりの空気を一気に振動させるほどだ。しかし、マルドゥークゲイザーのようにある種の指向性を持っているのか、無差別に破壊をもたらすのではなく、彼女が斬ると誓ったものだけを引き裂いているように見える。


 そして、剣の勇者はそのまま空を覆っていた暗雲を真っ二つに引き裂き――その力の余波で人口の月でコントロールしていたはずの気象すら変動させ、世界を覆っていた雲も一筋の切れ間を作って見せた。


『あの一撃は……ソフィア、何だと思う?』

『エネルギー源が何だって話だよね? 恐らく、トリニティ・バーストと原理は近いと思う。あの剣が感応デバイスの役割を果たして人々の意志の力を集め、それをエネルギーに置換して撃ちだしたんだ』

『はぁ、非科学的って言いたいところだけれど……実際に調停者の宝珠がある訳だし、その考察自体には異論は無いわ。でも……』

『何故、あの剣がそれを果たしたのか。そして、何故ナナコがそれを可能にしたかに関しては、これも推測の域を出ないけれど……レヴァンテインは宇宙空間からのエネルギーを傍受する力があり、ミストルテインにはモノリスからのエネルギーを蓄える力があった。

 そして、ナナコはこの一年間でレムリア大陸を旅してまわって、色々な人たちを救ってきた。この星に残る人々の祈りを受けて来たんだ。あの子に向かった人々の祈りが剣に集積され、全てを断つエネルギーとなった……そんなところじゃないかな』


 今の推論がある程度は正しかったとしても、説明しきれないことはたくさんある。だが、ナナコならば――人々の平穏を祈って戦い続けた剣の勇者、夢野七瀬の魂の継承者であるのならば、何故だか不思議とそんなことも出来る――そんな気がする。


『しかし……アナタ、あの子に喧嘩を吹っ掛けたの?』

『一番最初にこっちに攻撃してきたのはあの子だよ。でも、確かに凄いね……』


 あまりの凄さに、グロリアに対する語彙も思わず消失してしまった。だが、それ以外に感想が出てこなかったのだから仕方ない。彼女が扱った不思議な力に関してももちろんなのだが――ナナコが切り拓いた雲の向こうから立ち上る一年ぶりの朝日があまりにも神々しく、まるで暗黒時代の終わりを告げるように世界を明るく、赤く染めている様子が素晴らしかったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ