表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
744/992

12-74:我が名の誇りに賭けて 中

『グロリア、パターンIで行く!』

『了解!』


 攻撃しながら下がる相手に対して空中機動の制御を杖と合体したグロリアに任せ、自分は第七階層魔術を編むのに集中する。こちらも結界を展開しながら身体の持つギリギリの速度まで加速し、相手の攻撃が途切れたタイミングで機動を相手の方へと向けて一気に直進を始める。


 グロリアが熱線による攻撃を仕掛けて相手の足を止め、すれ違いざまに魔術を発動し、絶対零度を相手に叩きつけ――以前と同様に相手の身体を一気に氷の檻に閉じ込めることに成功した。


 そのまま空中で百八十度旋回し、今度は猛る炎を杖に纏い、空中に浮かぶ氷山を超音速のまま両断する。緩やかにスピードを落として廃莢するとともに背後で大爆発が起こり、振り返り見ると、やはり依然と同様に跡形もなく熾天使の姿は消え去っていた。


「……奥の手がある風だったから、もしかしたらレクイエムを防げるだけの防御策を用意してきたんじゃないかと思ってたけど……杞憂だったのかな?」

「だから、そのダサい名前は……!?」


 いつものお小言を言い切る前に、グロリアは会話を音声から脳内へと切り替えた。


『七時の方角から急接近する機影がある!』

『数は!?』

『数は三……同一の機体みたいだけれど、まさか!?』


 先ほどの不敵な雰囲気から鑑みるに、恐らくグロリアの推測は正解だろう。すぐに杖を一回まわして第五階層魔術弾を装填し、こちらへ発射された無数の追撃ミサイルを熱線で迎撃する。


 打ち抜かれたミサイル群が空中で誘爆し、中空に巨大な花火が上がる。そしてその煙を引き裂くように、接近して来ていた三体が姿を表す――三人の男性型アンドロイドは、全く同じ外見で、全く同じように前髪をかき上げて笑った。


「……別に私が一体しかいないとは一言も言っていませんでしたよね?」

「とはいえ、切り札をこんなに早く切らされるとは思っていませんでした……」

「私を本気にさせたことを後悔しながら死んでいくが良いですよ!」


 三人のルシフェルは律儀に左から順にまくしたて、そしてこちらへ向けて攻撃を開始してきた。こちらは正面に向けて七星結界を張りながら後ろへと下がり――グロリアの飛翔能力で制御をしているため、自分が見えていない方向へも自在に飛ぶことも可能だ――ひとまず状況を整理するために相手と距離を取ることにする。


 以前倒したはずのルシフェルが、そのままの形でもう一体出て来た時点で、この状況は想定しておくべきだった。ルシフェルとは個別機体の名前でなく、恐らく強力な機体群の制御AIの名前だったのだ。それ故に一体倒したところで、後からこのように何体も沸いて出てくるわけだ。先ほど倒した一体が時間稼ぎのような動きを取っていたのは、増援が来るまでの時間稼ぎだったのだろう。


『ソフィア、アイツらあと何体居ると思う!?』

『性能的に何百も量産されているとは思いたくないけれど……恐らく、同時に投入できる数は三体が限界なんだよ』

『ホントに!?』

『本気で私達を倒すのなら、投入できるだけすれば良いだけだもの。その心は、私たちの見た五体で残り全部なのか、一度に制御できる数に限界があるからなのか……自己保身に余念のないルーナの懐刀なのだから、一気に全部放出することはない。そうなれば、恐らく後者なんだと思う。いずれにしても、あの三体をどうにかするのは私達の役目だね』


 先ほど想定したように、一体でも地上に行かれてしまっては敵に状況を打破されてしまう。それは避けなければならない。超高性能AIであるルシフェルも三体のスペックを同時に限界まで引き出すのは厳しいのか、一体一体の動きはやや鈍くなっているようではあるが、それでも波状攻撃や時間差攻撃をもらうのは厳しい。ドッグファイトにおいて一体多数と言うのはこちらの機動も制限されるほかリソース管理も難しくなるため、かなり厳しい状況にはなる。


『泣き言言ってる場合じゃないわね。それに、今の私達なら余裕でしょ、ソフィア!』

『うん!』


 グロリアがいれば恐れることは無い。負けることだってない――確かに先日はアルジャーノン相手に遅れを取ったが、文字通りに一心同体で修練を積んだ彼女が居れば、どんな困難だって絶対に切り抜けられる。


 何より、この一戦を乗り越えて、必ず海と月の塔を制圧する。あの人が帰ってくるのなら――自分は、私達は、誰よりも早くあの人を迎えなければならないのだから。


 そして塔を攻略するためには、寡兵たる我々は、誰一人として失ってはならない。ともなれば、三体のルシフェルのうち一体でも相手に地上へ行ける隙を与えてはならない。幸いにも、相手も自分たちに対しては脅威度を高く設定してくれている様で、まだ一体も地上の方へと向かう気配はなく、引き付けることには成功している。


 ともかく、空中機動で追われている状態は好ましくない――こちらを追いかけてきている三体に対し、一気に上昇して空中でひるがえって位置を入れ替え、同時に三体の背後を取ることに成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ