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12-73:我が名の誇りに賭けて 上

「調子に乗るなよ、チェン・ジュンダー! しぶとい貴様を今日こそ仕留め、その贓物を引きちぎり、一万年に及ぶ因縁に決着をつけてくれる……妾が直々にな!」


 ルーナの怒声で場の空気が弾け、こちらの面々は敵を迎撃するために散開した。自分はグロリアの力を借りてすぐさま飛翔する。誰も追ってこないのなら上から一方的に攻撃できるし、ルシフェルが追ってくるのなら強敵一体を自分一人で受け持てる――こちらの意図を察したのか、すぐさまルシフェルが自分を追撃してきた。


 ルシフェルの攻撃を迎撃しながら――高速戦闘の処理については、大部分グロリアに任せている形になるが――地上での様子を覗き見る。ルーナ側もある程度こちらに対して誰をぶつけるか決めていたのか、それとも自然とそのような形に集約されたのか、次のように戦力が分かれていた。


 ブラッドベリに対してはナナコとT3、ジブリールに対してはイスラーフィール、ルーナに対してはティアとアガタが事にあたり、チェン・ジュンダーが状況に応じて指示を出しつつ補助魔法での援護、並びに押されている局面への介入を行っている。


 しかし、どの局面も戦果は芳しくない。不死身のブラッドベリに対してはエルブンボウや神殺しを起動できないミストルテインでは決定力を欠くし、同様に七星結界を使えるルーナに対してもティアやアガタの攻撃は届かない。イスラーフィールは防御寄りのアンドロイドであり、ジブリールに対して決定打を取られないように動けてはいるものの、逆に倒せるだけの火力もない。


 逆に敵側から見ても、こちら側の防御力の高さに攻めあぐねているようだ。要するに、どこの局面も状況は似たり寄ったりと言える。互いに決定打が無いため、戦況は一進一退、つまるところ――。


『現状を打破するには、私達がさっさとアイツを倒して増援に向かうべきってことね!』


 グロリアの言う通り、自分さえどこかに合流できれば戦況を一変させることはできるだろう。それはある意味では逆も言える――自分がやられてさえしまえばルシフェルが自由になり、地上での均衡も一気に破られるということになる。


「よそ見とは随分余裕ですね……一度破った相手だから片手間で捻れると?」


 ルシフェルの声に合わせて身体が勝手に反応して――正確にはグロリアが反応してくれた――七星結界で相手のレーザーを防ぐ。視界が激しく明滅して晴れた直後、こちらも魔術を練って追尾性の熱線を相手に放ちつつ、状況の違和感について思考を巡らせる。


『……やっぱりひとつ、気になることがあるね』

『それは?』

『敵はこちらの戦力を把握していたはず……相手方も今の戦力でことにあたるのであれば、この均衡は予想できてもおかしくない。アルジャーノンはあの偏屈だから、もうこの場に出る気もなかっただけかもしれないけれど……』

『成程、思わぬ伏兵が……それこそ、狼がどこかに隠れているかもしれないのね』

『それ以外にも、私たちが知らない新たな第五世代型が生成されていてもおかしくはない。いずれにしても今視界には居ないけど、敵側にJaUNTがあればどこからともなく現れる可能性は捨てきれない……警戒は常にしておくべきだね。ただ……』

「ルシフェルを倒して、早く状況を打破すべきって意見には賛成だよ!」


 戦況の整理も終わったので、グロリアに任せていた迎撃に自分も集中することにする。電磁パルスを警戒してか、ルシフェルの動きは高機動よりも防御に寄せているようであり、こちらの遠距離攻撃を躱すというよりバリアで防ぐ戦法に切り替えているようだった。


「勇んで来た割りには、あんまり芸がないんじゃないの?」

「そんなことはありませんよ……小夜啼鳥にいとも簡単に破られて、それは三日三晩思い悩んだほどです。次に戦う時には、どうすれば良いかとね」


 グロリアの挑発に対し、ルシフェルは飄々とした態度と遠距離からの光線で応えてくる。レーザーは速度は確かだが直進するものであり、弾道を予測していれば躱すことは可能だ――空中をジグザグに進む機動で攻撃を躱しながら相手の方へと詰めていく。


 空中戦をしている自分たちも防御に寄せた行動は可能だが、そうなるとここでも膠着状態になってしまう――自分は相手のバリアの上からでも熾天使の装甲を打ち抜けるだけの自信はある。それに、ルシフェルは自分を打ち倒そうというよりも、何やら時間稼ぎをしているようにも見える。それなら出し惜しみなどせず、一気にケリをつけるべきだろう。

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