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12-72:魔王城再び 下

「それでは、封印を解きますよ……準備はよろしいですか?」

「えぇ、お願いします、レム」


 チェンが頷き返すと、レムは機材の前にいるイスラーフィールの方へと移動し、彼女に向かってパスコードを伝えた。水色髪の熾天使がレムの言う通りにコードを打つと、石像の表面が崩れ去っていき――中から筋骨隆々の巨大な男性が姿を表した。


 封印から解かれて間もないせいで身体のバランスを崩したのか、ブラッドベリはすぐさま膝を突き、その側にチェンが近づいていく。


「ここは……」

「お目覚めですか、魔王様」

「……その声、ゲンブか」

「はい。しかし、細かいことは後です。今は早急に、生体チップの摘出を……」

「……その必要はない」


 その静かな返答とは裏腹に、肌のひりつくような殺気が巨漢から一機に放出された。自然と皆、ブラッドベリから距離を離す動きを取った。一番近くにいたチェンは結界を張りながら背後へと跳び、そのおかげでブラッドベリが払った手から放たれた黒い衝撃波に呑み込まれずに済んだようだった。


 ブラッドベリはゆっくりと立ち上がり、真っ赤な双眸でこちらを睨んできている――あからさまに何者かに操られているといった雰囲気であり、正気を失ってしまっているようだった。


「ブラッドベリさん、落ち着いてください! 私たちは仲間です!」

「悠長なことを言っている場合ではないぞ!」


 自分が説得のため声を掛けようとすると、身体を誰かに掴まれた。T3が自分を抱えて跳んだのだろう、気が付くと視界が一転しており――自分が先ほどいた場所を漆黒の渦が通過していた。


「はっはっはぁ! まんまと引っ掛かりおったな!」


 どこからともなく挑発的な声が聞こえてくると、ブラッドベリの背後の火口部分の空間が割れ、そこから三人分のシルエットが――白い髪の少女を護るように、ピンク髪の少女、それに長身痩躯の男性とが降りてきた。


「ルーナにジブリール……」

「それに、ルシフェル!? 倒したはずじゃ……」


 現れた三人に対してすぐさま反応したのは、イスラーフィールとソフィアだった。僚機に名を呼ばれたジブリールの方は、全く反応がない――以前見た時は好戦的で情緒が豊かだったのに、今は本当に無感情な人形と言うのがしっくりくるほどであり、なんどかその様子は痛ましいほどだ。


 対する男性の方が、ソフィアの報告にあったルシフェルらしい。しかし、自分も既にルシフェルは撃破したと聞かされていた――ソフィアはこういったことで嘘を言うタイプでないので、恐らく何か理由があるのだろう。その証拠に、男の方は前髪をかき上げて、ソフィアの方へと挑発的な笑みを返した。


「確かに私は倒されましたよ。まさか、第六世代にやられるなどというのは一生の不覚ですが……しかし、一機しかいないとも言っていなかったつもりですが?」

「まさか、量産されているというのですか? しかし、口ぶり的には……成程、記憶が並立化されているということですね」

「ふっ……その通り。ですから、貴女の戦い方も既に学習済みです。次は遅れを取りません」

「ふん、あの程度で私達の全てを学習した何て思わないで欲しいわね」


 ソフィアの肩でグロリアが挑発的な言葉を返すが、ルシフェルは変わらず涼し気に笑うだけだ。ソフィアに勝てるだけの確実な策があると言わんばかりだが――今のソフィアとグロリアのコンビは、自分たちの中でも突出した戦力なはず。グロリアが居れば超音速にも対応できるようであり、それならばそう簡単に遅れを取るとも考えにくいのだが――ソフィアも同じように思っているのか、相手の方を警戒しながら杖を構えている。


 復活したブラッドベリも、ゆっくりと後ろへと下がり、ルーナを護るようにその正面へと立つ。どうやら第五世代型と同じように、今の彼はルーナの意のままに操られてしまっていると言うことか。


 こちらも各々武器を構え、相手の出方をうかがっている。一触即発の雰囲気の中、チェン・ジュンダーのみが背中で手を組み、溜息を吐きながら一歩前へと進み出た。


「ふぅ……裏目に出てしまいましたか。ですが……こうなってしまったものは仕方がありませんね」


 それだけ言って、男は背後で組んでいた手を離し、大きく息を吸い込んで気を練り、前へと拳を伸ばして構えを取る。その一挙一動にはには一切の隙はない――ソフィアに棒術を叩き込んだというのも事実なのだろう、彼は間違いなく拳法の達人なのだ。


「DAPA幹部ローザ・オールディス……散っていった仲間たちの無念を晴らすため……我が盟友、エディ・べスターとウィリアム・J・ウェルズの雪辱を果たすため、今日この場で貴方達を討ちます」


 声色は淡々としたものだったが、背中から発せられる気は冷たく、鋭いものだ――チェン・ジュンダーは確かにこの場で、ルーナを倒そうという決意を固めているに違いなかった。

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