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12-62:古代人のモノリス 上

「本来なら貴重な遺産ですから、傷を着けたくはありませんが……ぶち破るしかありませんね。ソフィア、お願いします」


 穏かな淑女と言う様相なのに、ぶち破るとか意外とレムも口が悪い。ある意味ではアランと兄妹というのも頷ける共通点なのかもしれないが――ともかくレムの意見に同意だったのか、ソフィアは頷き魔術杖を操作し、壁の一部分に氷柱を打ち込む。もしかしたら魔術が通用しないほど固い可能性もあるかもしれないと思ったのだが、意外と簡単に壁に穴を開けることには成功した。古代人もまさか遠い未来でこの星を訪れた来訪者が、力技で壁をぶち破ることなど考えていなかったに違いない。


 建造物の中は意外とシンプルな構造であり、外周の通路から中心に向かう回廊がある。何かあるとするなら真ん中だろうということで、光の筋の走る細く長い通路を突き進んでいくと、徐々に道行く先が明るくなっていき、最終的にはこれまたドーム状の広間へと辿り着いた。


 そしてその中心には祭壇のような場所があり――階段ではなくスロープで上がる形になっているのが特徴的だ――その上には不思議な黒い板が鎮座していた。


「アレは……モノリス?」


 黒い板が視界に入ってくるのと同時に、グロリアがそう声を上げた。以前にピークォド号で見た黒い板に雰囲気が近いように見える。ともかくその物体が何かを近くで確認するためにスロープを登っていき、黒い板の目の前にソフィアと共に並び立った。


 改めて注視してみると、黒い物体は高さ一メートル弱、幅はその半分以下で、厚みは十センチメートルほどの大きさだった。祭壇から床に走る光の筋が走っているのを見るに、確かにこれを中心に施設内へエネルギーが供給されているようだった。


「……うぅん、何となくですが、これはモノリスとは違うものなような気がしますね」


 黒い板という共通点はあるものの、これは別物のような気がする――以前に見たモノリスはもっと神秘的な様相であり、確かに人ならざる者が作ったというのに相応しい雰囲気を纏っていたように思う。それに対してこちらはどこか人工物という印象を受ける。


 そう思っていると自分の肩に止まっていたレムが浮遊していき、黒い板の周りを飛び回りながら注意深くそれを観察し始めた。


「ナナコの言う通り、これはレプリカなのかもしれません。モノリスは完全に光を吸収してしまうので何かが映るということはありませんが、この板には非情にうっすらとではありますが、辺りの様子が反射しています。

 それに、モノリスは寸分の狂いもなく一対四対九のサイズになっていますが、これにはピコレベルの誤差があるようですから……恐らく人工物というのが正確な所でしょう」

「えぇっと……それじゃあ、これは使えないんでしょうか?」

「いいえ、そんなことはありません。億年経っても稼働し続けるだけのエネルギーを有していますし……何より、我々七柱ですら、これだけ精巧なレプリカを製造することはできません。

 そういう意味では、この遺跡を作った古代人たちは、私達よりも優れた技術を持っていたのでしょうし……もしかすると彼らなりに神に近づこうとチャレンジして、これを作ったのかもしれませんね」


 感心するようにレプリカを観察し続けるレムに向けて、ソフィアの肩に止まるグロリアが「それじゃあ」と嘴を動かす。


「そんな重大なものを古代人は置いていったってこと?」

「これは単純な予想ですが、このレプリカは彼らが宇宙に飛び立つときには最新のモデルでなくなっていたのかもしれませんね。もっと高性能なレプリカがあるのなら、わざわざこれを持っていく必要もありませんから」

「確かにね……それで? 持っていくの?」

「出来れば持っていきたいけれど、持ち出そうとしたらドカンもあり得ますから……あまり時間も掛けられないけれど。ソフィア、グロリア、調査を手伝ってくれる?」


 ソフィアとグロリアは頷き、レムを含め三名で黒い板を取り囲んで調査を始めた。こういう時の自分は全くの無力であり、ただ三人が頑張っている様子を眺めていることしかできない。


 しかし、アレを運ぶことに関しては自分の出番がある。幸いにして推定レプリカの大きさはそこまででないので、自分の身長でも横にして運ぶことはできるだろう。しかし、重さはどんなものだろうか? 見たところ、ミストルテインと同じくらいか、それより重いくらいだろうか。


 そんな風に思いながら作業をしばらく眺めていると、近くの操作盤らしき物を嘴でつついていたグロリアが首を横に振った。

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