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12-60:古の集落の探索 上

 ヘリは直ちにチェン・ジュンダーのアジトへは向かわず、ある場所へ寄り道をすることになった。それは、レムがジャンヌから聞いた情報の真偽を確かめるため――狂気山脈で発見した地下都市の確認をするためだった。


「その都市がこの星の先住民のモノであるとするなら……もしかすると、ノーチラス号の動力に使える部品があるかもしれないですね」


 レムによれば、この星には元々、七柱の創造神たちが住んでいた旧世界と同等か、それ以上の科学技術を持った知的生命体がいた。もし先住民族の都市が地下に残っていたと仮定するのなら、それはかなり進んだ科学技術で作られた都市である可能性が高く、何か使える物があったとしてもおかしくはないとのことらしい。


「……しかし、それが先住民族の遺跡とは限りませんし、仮にそうだったとしても彼らは何億年も前にこの星を発っているのですよね? それなら、機械類なんか壊れてて使い物にならないのでは……」

「いいや! きっと何かあるはずさ!」


 アガタの言葉を興奮気味に遮ったのは操縦席にいるシモンだった。彼はノーチラス号の完成にこだわりがあるだけでなく、旧世界の人類すら上回る可能性のある先住民族の技術に興味があるようだ。正確に言えば、全ての先住民族が一斉に星を去ったという宇宙関係の技術に関心があるようではあったが。


 さて、一抹の望みを託して自分とジャンヌが発見した遺跡に向かったのは、僅かに二名と一羽と一柱だった。というのも、計器類の狂い乱気流で荒れている狂気山脈にヘリコプターでは向かえないので、ソフィアとグロリアの飛翔能力を使って移動し、自分が道案内に彼女に抱えてもらっている形だ。ついでに、自分たちには機械の専門知識は無いので、アガタからアンクを貸してもらってレムに同行してもらっている。


「あ! あそこの岩、見覚えがある! ソフィア、あそこに降りて!」

「よく肉眼でその距離が観察できるね……というかそもそも、陸路で来たのを上から見て場所を言い当てるのも凄いと思うけれど……」


 ソフィアには呆れられているが、方向感覚と空間把握には結構自信がある。それ故に、巨大な迷宮と化していた極地基地も独りで出歩けたわけだし――ともかく指さした場所は記憶通りに遺跡の入り口であり、以前に数日かけて踏破した場所までは、狂気山脈のふもとからたったの一時間ほどで到着したのだった。


 以前は下に降りては戻ることが出来ないという判断から引き返したが、今回はソフィアが居るので降りても容易に戻ることができる。通路を進んで大空洞へと出ると、自分は再び浮遊しているソフィアに抱えられて下へと降り始めた。


「確かに、これを天然物というのは無理があるでしょうね」


 アガタから借りたアンクからレムが飛び出てきて自分の肩に乗り、周囲を見回しながらそう呟いた。都市がその役割を果たしていた時には道路であったらしい場所へと降り立つと、ソフィアも淡く輝く古代都市を見渡しながら口を開いた。


「なぜこんな場所が残っているのでしょうか?」

「結論から言えば、たまたま浸食を免れていたということなのでしょうが……狂気山脈は、暗黒大陸とレムリア大陸が地殻移動によって衝突し、隆起してできた山脈です。もしかすると元々あった地下都市が雨風に晒されずに大陸移動に併せて保存されていたのかもしれません。

 もちろん、エントロピー増大や地層の影響によって崩落しているところもありますが……ともかく、我々の調査を逃れて、かつこれほどの保存状態で古代都市が存在していたのは驚くべきことです」


 レムが何を言っているのか自分にはよく分からないが、ソフィアやグロリアはなるほど、と納得しているようだった。ただ、なんとなくこの場が残っていることの凄さと、周囲の建物らしき場所の壁が剥がれ、そこら中に瓦礫が散らばっていることの理由を説明してくれているのだろうとは察せる。


 自分が周囲にそびえ立つものを建物らしき場所と形容したのは、自分の知る建物とは構造そのものが違うことに起因する。道路の脇にあるとなれば普通はお店や事務所、もしくは人の住む住宅というのが自分たちの世界の常識には当てはまるのだが、周囲の建造物らしきものには窓や扉などが見受けられず、どちらかと言えば壁という方が正確だ。


 崩落した壁の向こうに何某かの空間がある様子を見れば屋内という印象もあるし、しかしその中の様子も自分の知る屋内という様相でないので、アレを建物と言って良いのかは不明だが――レムとソフィアの会話を聞くに、この惑星の原生生物は自分たちと違った進化を遂げていたのだろうし、それ故にこの都市を自分たちの社会にあてはめて考えるのは難しのだそうだ。


 古代人は第六世代型のようにIDのようなものが割り振られており、一見壁にしか見えない建物もID識別で開くのではないかとか、もしくはこの辺りの建物らしきものは人が内部に入ることを想定されていないのであるとか――極論を言えば自分たちからは都市のように見えるこの場所が居住地ではなかったとか、様々な憶測が目の前で飛び回っている。

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