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12-42:悲しき再会 上

 高速艇から飛び降りたその先は、復旧された大聖堂の真正面だった。そこは新型の第五世代と交戦するイスラーフィールがいる場所であり、周囲に士気を取りながら引き金を引いているアシモフがいる場所でもあった。


「レム、戻ったのですね!」

「えぇ、チェンと手を組むことには成功したわ。ともかく、貴女は自分の身を護ることに専念して、アシモフ」

「そうですね、右京の狙いは私でしょうから……イスラーフィールは、兵士たちの援護を頼みます」


 そう言いながらアシモフは最前線から一歩引き、建物を背に指揮を取り始めた。命を狙われているというのに撤退しないのは精霊魔法の援護ができることの他に、兵士たちの士気を高める意味合いもあるのだろう――敵の狙いを考えれば安全な所に退くべきとも思うが、実際は一人でも多くの戦力が居なければこの場を切り抜けるのも難しいし、何より彼女が勇敢にことにあたってくれることは有難い。


 自分も第五世代型と戦うためにトンファーを引き抜き、あわや戦闘に入ろうとしたその時、大聖堂の屋根でルーナが地団駄を踏み出した。


「ぐぬぬ……貴様らいつもいつも、右京、右京と! 妾のことを脅威と思っておらぬのか!?」


 一瞬、ルーナが何を言っているのか分からなかったのだ。多分、先ほどアシモフが「右京の狙いは」と言ったことが原因だろう。要するに、目の前にいるのに自身が軽んじられているというのが許せなかったのかもしれない。


 そんなんだからそんななのだとも思うのだが、律儀にレムは姿勢を正し、自らを称える教会の上で地団駄を踏んでいるルーナの方へと向き直った。


「いいえ、脅威に思っていますよ……だからこそ、全力で行かせてもらいます。ナナコ!」

「はい、お任せを! ティアさん、アガタさん、テレサさん! 行きますよ……トリニティ・バースト!」


 ナナコが掲げた宝石に向けて、精神を集中させる――アガタとテレサとはどうやって精神を同調させるかなどは事前に取り決めもしていなかったのだが、示し合わせなくても自分たちの意志は一つの方向性へと向かうだろう。


 光の巨人が現れてからというもの、精力的にレムリアの民をいたぶっている偽りの女神に対する敵意――ルーナを打倒しようという三つの覚悟が一つに合わさると、調停者の宝珠が煌めき、自分たちの身体を黄金色の光が包み込んだ。


 これは確かに、以前にアランたちがブラッドベリと戦った時に引き出した力。これがあればアイツを倒せるかもしれない。


「ルーナ、今日という今日こそ決着をつけてやる!」


 仇敵目掛けて指を差すと、相手はこちらの啖呵を鼻で笑っていなした。


「はっ! わざわざ貴様ら下郎の相手など、妾がするまでもない! おい右京! 例の奴を寄越せ!」


 ルーナが指を鳴らすと、空中に亀裂が走り――その光景は何度か見たことがあるはずなのだが、今回の亀裂はいつものものと比較にならないほど巨大だ。そして宙から落下してきたそれは、中央広場の石畳をその重量で粉砕し、辺りに砂埃を巻き上げ――視界が拓けると、そこには一つ目の鉄の巨人が鎮座していた。重厚感があるというよりは細いシルエットであり、どことなく洗練された印象も受けるが、ルーナが自信満々で寄越したのだからかなりの戦闘力を持っていると思った方が良いだろう。


「なっ……巨大ロボット!?」

「いいえナナコ。厳密な定義では、ロボットとは何者かによって操縦されることを前提とする機械です。アレは任務を忠実に再現するために、自己で判断を下し、自立した機構を備えている……つまり規格こそ段違いですが、あれも第五世代型アンドロイドというべきでしょう」


 巨人を見て驚くナナコに対し、レムが呑気に補足をした。アレが第五世代型だというのなら、他のアンドロイド達と同じような機構を備えていると言いたかったのかもしれない。


「ふはは! そのユミルはただのデカい木偶の坊ではないぞ! 迷彩機能をオミットした代わりに、強力な磁場バリアを搭載した超馬力の改良型じゃ! それに、こ奴には貴様らの最高傑作の学習AIのコピー積まれておる……懐かしの再会を喜ぶがいいぞ!」


 ルーナが高笑いを浮かべると同時に巨人は周囲に向けて攻撃を始めた。相手の武装は、主に両肩や左手に持つ盾に搭載されている機銃のようだ。もちろん、右手が空いていることを見れば、他に何か強力な武装もあるのだろうが、恐らくはレムリアの民を威嚇するのがアレのメインの役割であり、あまりに威力のありすぎる武器の使用は抑えているということなのだろう。


 しかし、それはあくまでも奴らの技術力を持ってすれば抑え気味というだけで、あの規格で撃ちだされる銃弾は通常の第五世代型が打ち込んでくるものよりも遥かに威力があり――実際に辺りの建物の壁をチーズかの如く穴を開けていっている――普通の兵士には十分な脅威となる。


 自分は弾丸の軌道を読み、当たりそうな弾丸を適宜撃ち落とすこともできるが、如何に勇敢な兵士と言えどもあの銃弾を浴びればひとたまりもない。後方ではイスラーフィールがバリアを展開し、大路にいる味方に銃弾が当たらないように壁を作ってくれているようではあるものの、やはり兵士の士気は落ちているようだ。


 その攻撃の激しさゆえに、イスラーフィールはレムリアの民を護るのに回らざるを得ない。手薄になってしまったアシモフを防衛するため、自分とナナコは一度エルフの老婆の元へと駆け寄り、近づいて来ていた等身大の陸戦型を撃退してアシモフの前に並んだ。

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