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11-87:小夜啼鳥の歌 上

 極地基地の激戦の後、自分はゲンブによって救われて生き延びていた。親父が身を挺して守ってくれ、第五世代型達が部屋に押し入ったあの時、床の仕掛けが作動して、自分は安全な場所へと移されていたのだ。


 生き残ったのは自分だけではなかった。彼女たちを救ったのもゲンブ、もとい糸目の男、チェン・ジュンダーであった。彼の本体は極地基地の更に地下に安置されており、襲撃に合わせて起動して、人形を遠隔操作しながらも秘密の地下通路に少女たちを降ろして生き延びていたのだ。


 自分たちが潜伏していた理由は二つある。一つは単純に、重症の少女たちが意識を取り戻すまで待たなければならなかったということ――怪我はチェンの魔法により治っていたが、意識を取り戻すには数日を要したし、戦線に復帰するとなれば更なる時間が必要になる。もう一つの理由は、アラン・スミス達が敗北した際に、二の矢としての戦力を温存することが目的だった。


 とは言っても、十人を超えていた大所帯が随分と寂しくなってしまったものだ。空中要塞ヘイムダルの奪取は失敗に終わったというのは聞かされているが――そのうち何名が生き残ったかは不透明であり、最悪の場合は全滅してしまった可能性すらあり得る。


 そもそも、主力を当てて勝てなかった相手に対して、現状の戦力で抵抗をしたところで勝ち目はほとんどゼロに近い。それでも、自分としては最後まで抵抗を諦めるつもりはなかった。最初こそ父から逃げるようにして参加した戦いだったが、今は我が父ダン・ヒュペリオンの弔いのために抗戦を続ける意思はある。本体であるフレデリック・キーツがまだ存命であるのも理解しているが――それならなおのこと、キーツを利用している右京を倒す必要がある。


 とはいえ、ヘイムダル襲撃で多くの仲間を失ったのは事実であり、体制を立て直すのも策を練るのも必要だ。その他にも戦力の増強は必要不可欠――理屈の上でそれは理解している。


 しかし、チェン・ジュンダーがそのために取った行動は、果たして正解であったのだろうか? 時おり、この人のことが分からなくなる。冷酷非道なようで情に厚い一面を見せることもあるが、やはり勝つために手段は選ばないという節はある。


 もちろん、そうすること自体は彼女達が望んだことでもあるらしいのだが――そのうちの片方とはコミュニケーションを取れる機会は少ないし、もう片方は意識を取り戻してからというもの、目に見えて意気消沈してほとんど会話も出来ていない状態だ。


 現在は極地基地を完全に破棄し、隠していた潜水艇で黄金色に染まった海中を――とは言っても深海では色も見えないのだが――進んでいるところであり、狭い船内に自分を含めて四人が集まっている中で、自分はくだんの少女を覗き見た。少女は右手で包帯の巻かれた右腕をさすりながら、どこか虚ろな目でスクリーンを眺めている。


 スクリーンに映し出されているのは、この星に降臨した光の巨人と同様の存在だった。むしろ、あちらの方が巨大であるようにすら見える――チェン曰く、この星の人口と旧世界の人口は比べ物にならないこと、そして旧世界では多すぎるが故にコントロールできなかった反省を活かしたのが、この管理社会だったのだろうと推察していた。


 また、旧世界においてDAPAが高次元存在の降臨に失敗したのは、母なる大地のモノリスを欠いて無理に計画を実行したことだろうと付け加えた。右京らが計画を実行する直前に、ホークウィンドと共にチェンは母なる大地のモノリスの奪取に成功したらしいのだが――。

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