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11-29:Weak-End Channel 下

 ブラウン管の画面が切り替わると、べスターは車の運転は止めていた。どこかしらで黒煙が上がるほどの爆発があったはずだが、外の様子は静かだ――ここが現場から距離があるというのもそうだろうが、人々が頻繁に起こるテロ活動に関して慣れてきているのかもしれない。


 ともかく、男が見つめる先には配信準備中の文字が映し出されており――そしてすぐにフードを被った瘦せこけた頬の男がモニター一杯に映し出された。


「衰退する世界の終末【ウィークエンド】チャンネルへようこそ。ウィークエンドと言いながら、今は平日の真昼間……しかし、暴力は時と場所を選ばない。こちら、ジム・リーだ」


 そう言いながら、ジム・リーは自撮り用のカメラを少しずらして背後に立ち昇る煙を映し出した。


「今回は路面店店でガス爆発が起こり、それに巻き込まれたタンクローリーが誘爆を起こしたらしい……と、一見するとそれらしい事故だが、今回のこれも世界の暗部のよる周到な計画の一部に過ぎないんだ」


 煙の横に男のニヤけっ面が並ぶ。画面横では、様々な言語でのコメントが矢継ぎ早に流れている――読めるものを抜粋するだけでも、その内容は様々だった。男の配信を楽しみにする言葉や活動を応援する言葉、世界の未来を憂える声、ジム・リーがテロの首謀者なのだろうという推測や、その他多くの罵詈雑言――ファンもアンチも野次馬も、その多くが一緒くたに存在する混沌がそこにはある。


 しかし同時に、視聴者の意見や立場はそれぞれ違っても、一つの共通点はあった。それは、この動画を見て、参加しているということ――同時視聴数は数百万を突破しており、後にアーカイブが残ることを鑑みれば、もっと多くの人々がテロの有様を見つめている。ウィークエンドというふざけたいうチャンネル名ではあるが、間違いなくそれだけ多くの人たちが、確かに近づきつつある世界の終末を見つめていることを意味しているのだ。


「今回は、確かな情報筋からすげぇ情報を掴んだんだ。見てろ、今にあそこにでかい花火が……」

「いいや、その花火はあそこでは上がらない」

「……あっ?」


 男の間の抜けた声が聞こえるのと同時に、モニターの映像が乱れてストリーミングが中断された。べスターはすぐさま視線を別のモニターに移すと、そこには先ほどの実況の続きが映っている――ジムは手に持っていたカメラを投擲ナイフで吹き飛ばされており、更には置いてあった配信機材も虎のEMPナイフで使い物にならなくされているようだった。


「爆弾はあっちだ……解除方法が分からなかったから、力技での解決になったがな」


 虎が指さした方向には海があり――そう言った直後、海面に巨大な水柱が立ち上がった。要するに、時限爆弾を無理やりADAMsで運び、人的被害を抑えられる場所で爆発させたということなのだろう。


「くそ、なんでこの場所がバレたんだ!?」

「偽装されている監視カメラの映像の中に爆弾が設置されているのが視えた……それで、爆発が良く見えるこの場所にお前が陣取ってるだろうと予測がついたわけだな」

「くっ……!」

「無駄だ!」


 パーカーの男の周りに光の粒子のようなものが立ち上る。ステルスを起動して逃げるつもりなのだろうが、ジム・リーの姿が見えなくなるのと同時に、虎の投擲が屋上の床に突き刺さり――それに足を取られたのか、男はコケて建物の床を転がった。


「なんだお前……まさかDAPA要人を殺しまわっているっていう……どうしてお前がここに居る!?」

「おいたが過ぎるストリーマーを懲らしめるため、海を渡ってはるばる来たんだよ」


 驚愕する男の方へ向かって、虎はナイフを抜き出しながら一歩前へと進んだ。


「一つ聞きたい。どうしてお前はこんなことをしていたんだ?」

「へっ……答えれば見逃してくれるのかよ?」

「いいや、ターゲットは逃さない。おかしな真似をするなよ、変な動きをしたらすぐに首を落とす」


 オリジナルは珍しく、人に向けて高周波ブレードを握っている。自分も何となくそうだから分かるのだが、オリジナルはターゲットを仕留める時に、可能な限り投擲を使う癖がある。人の身を裂く感覚が苦手なのだろうが――それも恐らく、ローレンス・アシモフを仕留めた時のトラウマから避けているものと思われる。


 逆に、手に持った武器を振る時は次の場合である。投擲では威力が足らないと判断した時か、確実に仕留めると腹を決めている時だ。他のDAPA幹部と違い、この男がやっていることは許せないという思いがオリジナルの中にあるのだろう。


 対するジムの方も覚悟を決めたのか――いや、アレは恐らく演技だろう、なんだか神妙な様子で口を開いた。

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