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11-28:Weak-End Channel 上

 ブラウン管の画面が急転し、視点は運転席へと切り替わった。いつものトラックではなく軍用の車両なのだろう、車内には計器や機材がゴチャゴチャと取り付けられており、運転席は左側にある。


 そしていつものようにコンテナが取り付けられているわけでなく、視線をルームミラーに移すと、車の後部でアタッシュケースから武器を取り出している虎の姿があった。


「改めて、今回の作戦目標は、ジム・リーの暗殺だ。今回は最初からADAMsの利用は解禁する……潜入ミッションではないからな。

 代わりに、今回はターゲットの位置が分からん。足を使って確実にリーを見つけるんだ」

「あぁ、了解だ……しかし、ジムは今日、街に現れるのか?」

「それに関しては間違いない。配信の予告がされているからな」


 べスターはハンドルを左手で握りながら――DAPAと各国軍部は懇意でないせいか、はたまた互いに信用をしていないせいか、未だに軍用車は手動がメインらしい――右手で車内中央に取り付けられているモニターを覗き見た。確かに、そこにはストリーム準備中の文字が記載されている。


「ちっ……ふざけやがって。だが、ライブ中継をするなら、配信開始をしてから周りの景色を見れば確実に見つけられそうだが……可能なら事前にある程度のアタリをつけておきたいな」

「あぁ。だが、それをするならアイツの力が必要だな……おい、起きてるか?」


 男がモニターしたのボタンを操作すると、配信の待機画面から切り替わり、右京の顔が映し出された。向こう側は夜なのだろう、少年の背後にある窓の外は暗い――そして先ほどまで寝ていたのか、右京はあくびをする口を手で抑えていた。


「すまないね、普段なら一番覚醒している時間なんだけど、最近は人間らしい生活をしていたからさ」

「妹とよろしくやってるらしいな?」


 虎の一声に眠気が吹き飛んだのか、少年の肩に力が入ったようだ。車の後部にもモニターがあるのだろう、オリジナルはアタッシュケースから視線を離して話を続ける。


「そんな構えるなよ。どっちかって言えば感謝してるんだ……お前のおかげで、妹も前向きになってきているようだからな」

「……マチルダから聞いたのかな?」

「あぁ。まぁ、細かいことは帰ったらゆっくり聞かせてもらう。それより、ジム・リーの位置は分かりそうか?」

「先輩のご機嫌取りをしなきゃ、後で首を絞められそうだ……ちょっと待ってくれ、大体あたりはつけてるんだ」


 ルームミラーから再びモニターに視線が移されると、画面がデジタルの地図へと切り替わり、その上に何個かピンが刺されていた。リーの潜伏場所の予測値点なのだろうが、そのどれもが路上や公園などではなく、建物の真ん中に建てられていた。


「今はステルスで隠れているからカメラには映ってないが、恐らく点をつけたどこかに潜伏しているはずだよ」

「どうしてわかるんだ?」

「リーの動画を何個か見て予習したのさ。ドローンを飛ばすにしても、手に持ったカメラで中継するにしても、見晴らしの良い所を確保したほうが良いからね。案の定、都市部では比較的見晴らしのいい高所にポジショニングしていることが多かったよ」


 考えてみれば当たり前だけれどね、少年はそう付け足した。確かに、少し考えれば予測すること自体は簡単であっても、それを対策するのは旧政府連合としても難しかったのだろう。


 ジム・リーの動画は長時間の配信がされるわけではないし、各所の監視カメラは防犯のためという建前上、軍部や警察にも共有こそされるものの、その映像を提供しているのはDAPAだ。そうなれば、DAPA側として見られたくない映像は改竄されて提供されるので、事実上監視カメラなど役には立たない。


 あとは、右京が割り出したような地点に常時人員を張り付かせるという手段も考えられなくもないが、定期的でなく散発的に行われるテロ活動はいつ実行されるかの予測は立てにくく、そこに常時人材を割くのはあまりに思考がマッチョと言わざるを得ないだろう。


 そんなこんなで、ステルス状態から敵を探せる虎に白羽の矢が立ったのだろうが――今回の件においては星右京の方が適任だったのかもしれない。再び少年の姿が画面に映ると、何やら不敵に笑った。


「今、各所のカメラを見て回ってみたみたんだが……やった価値はあったよ。そしてそのおかげで、十個あるピンの中から一か所に限定することもできる」

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