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11-19:戦艦島での激闘 中

 ともかく、銃口がオリジナルの方へと向けられ、再び激しい銃声がスピーカーから聞こえだした。オリジナルはADAMsを解禁しているので簡単に銃撃を浴びるようなことはしないが、上からスポットライトで虎の位置を確認しているキーツからすれば居場所は割れてしまっている。そのため、ロボットは足を動かしながら、虎を捉えようと右往左往している。


 すると、「キーツ、あまり動かすな……」という声がロボットの方から聞こえた。かなりしんどそうな声色から想定するに、中にいるアンダーソンはその乗り心地の悪さに振り回されて、三半規管に異常をきたしているに違いなかった。


「お、おぅ……すまねぇ……おい、タイガーマスク! 正々堂々と戦いやがれ!」


 フレデリック・キーツの挑発にわざわざ乗ったのか、アラン・スミスはあろうことかロボットの正面で――といってもチェーンガンが空転しているのを見て、ひとまず安全と判断したのだろうが――止まった。


「ターゲットがあの中にいるのは確からしいな……それなら一発、オッサンの言うように力比べしてみるか!?」

「おい馬鹿アラン、や……」


 べスターが「止めろ」と言い切った瞬間には、ロボットの顔面がモニター全体に映し出されていた。蹴りだした右足は巨人の瞳を守っている強化ガラスを的確に打ち抜き――わずかにヒビが入り、入れ替えて左足でガラスを蹴って翻り、虎はそのまま巨人の足元へと落下した。上からガラスが割れる音はするが、巨大ロボットはびくともしていないことか、今の一撃が全くの徒労であったことを証明していた。


「ちっ……!?」

「はは、超音速と言えども、巨大ロボの重量を脅かせるほどの衝撃は出せないようだな!」


 足元に居る虎を踏みつぶそうとしたのだろう、巨大ロボットはその場で地団駄を踏み出した。それに合わせて再び映像が急転し――どうやら一度呼吸を入れるためか、虎はキーツの視界に入らない物陰へと身を潜めたようだった。


「ちょっぴりダメージを当てることは出来なくもないが、それよりもこっちの脚がもたないだろうな」

「当たり前だろう……巨大ロボットに蹴りをかます馬鹿があるか?」

「やって無駄だということが分かっただけでも前進だろ? しかし、あのデカブツを倒すには搦手が必要になるだろうな。ケイス、あのロボットのコントロールをそっちで奪うことは出来ないか?」


 虎の質問が聞こえると、べスターも後ろを振り返り、真剣な表情で作業をしている右京の横顔を見た。


「残念ながら、アレは現在ネットを切って、フレデリック・キーツの持つ端末でコントロールをしているらしいね。外からコントロールを奪うことは不可能だ」

「なるほど、ハッキング対策をしているってわけだな。それなら、オッサンの端末を奪えばなんとかなるか?」

「いいや、恐らくは厳しいだろうね。そうしたら、コックピットのコントロールを完全に入れ替えるだけだろう……アンダーソンはパイロットじゃないから動作は鈍くなるだろうが、それでも完全無欠の鉄の箱に守られているという事実は変わらない。時間を稼がれている間に応援も駆けつけてくるだろう」

「それじゃあ、なんとかコックピットを破壊するのが手っ取り早そうだな……コックピットの位置は分かるか!?」

「そういうの解析は、ヴィクターさんの方が得意だろう。二足歩行のロボットなら、設計思想にサイボーグと近しい所があるだろうからね」


 右京が顔を上げて視線が合うと、べスターは頷き返し、作業のために再び自分の端末の方へと戻った。その後ろで、右京が「それより」と虎との会話を続ける。


「先輩はTF19を倒せる武器を調達するのが良いだろう。幸い、そこはDAPAの兵器工場だ。市場には出回っていないような強力な兵器が保存されているはずだからね」

「そりゃいいな、どこへ向かえばいい?」

「最初に来た桟橋の方に、保管用の倉庫がある……対戦車ミサイルレベルの破壊力があれば、あの装甲を破ることもできるだろう」

「了解だ!」


 ロボットの解析を別のモニターで解析する傍ら、べスターは虎のアイカメラの様子も確認を続ける。潜入が察知されたことから、すでに身を隠す必要性もあまりないのかもしれないが、それでも虎はわざわざ迎撃体制を取る第五世代達を破壊しながら大通りを進んでいるようだった。


「アラン、なぜわざわざ敵に位置を知らせるようなことをしているんだ?」

「わざとだよ……良いから見てろって!」


 自分としては、オリジナルの考えていることは分かる――恐らく、フレデリック・キーツに自分の行く先を敢えて教えているのだ。虎が武器保管庫に到着すると、その推測は確信に変わった。あのロボットの装甲を打ち抜けるような武器は基本的にサイズが大きく、持ち運びする手間を省いたのだろう。


 保管されている武器の多くはアンドロイド用であった。それはつまり、メリットもデメリットもある――メリットとしては人の手で持てる規格であること。デメリットは武器の起動にアンドロイドのシリアルナンバーが必要なため、光学兵器など高等な武器は扱えないことだ。


 武器に関してはネットに繋がっていないため、星右京をもってしても遠隔から扱えるようにすることは不可能だ。そうなれば、実弾兵器などの比較的旧型の武装を選択する必要がある。オリジナルはその中でも二つほどチョイスして運び、武器庫の窓の方へと移動し――地響きにより振動している窓ガラスをナイフの柄で破り、オリジナルは運んできたうちの一つを構えた。

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