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11-18:戦艦島での激闘 上

「タイガーマスク! ハインラインの予想通り、アンダーソンを狙ってきやがったんだな!?」

「くっ……潜入がバレていたというのか!?」

「あぁ! 見回りのアンドロイドたちの信号を目視で確認してたんだよ!」


 オリジナルのあげた驚愕の声に対し、フレデリック・キーツは得意げに自分の胸を叩きながら応えた。目視で確認とはマッチョな方法だが、ある意味ではデジタルの持つ弱みを克服しているとも言えるだろう。


 恐らく監視は交代制だろうと思いたいが――まさかじっとキーツ自身がアンドロイドの信号を確認していた訳でもないのだろうが、あの男ならそれくらいはやりそうだ。それは別に、彼が非効率であるということを意味するのではなく、機械と人の持つそれぞれの強みを理解しており、双方のメリットを最大限に引き出せる男という意味である。


 虎がスポットライトの強烈な灯りを見上げる中、船上のべスターがマイクを握った。


「バレてしまっては仕方が無いな。ADAMsを解禁し、早急にアンダーソンを仕留めて脱出するんだ」

「あぁ、了解……」


 そう言いながらスポットライトに背を向けると、ブラウン管のスピーカーから「甘いぜタイガーマスク!」というキーツの怒声が響く。


「アンダーソンはその建物の中にはいないぜ……この島の中でもっとも安全な場所にいるんだからな!」

「……なんだと? それはどこだ!?」

「はは、本来なら聞かれて答えるバカはいねぇが……良いだろう、教えてやる!!」


 虎が再度振り返ると、キーツはMFウォッチの操作をし始め――独自の改造をしているのだろう、時計から何やらアンテナのようなものが飛びだした。


「出でよ、堅牢たる鉄の守護者……TF19!!」


 熱い叫び声と共に、カメラの映像が振動しはじめた。何かが地下から上がってきているのだろう、広間の中央に真っすぐな線が入ったかと思うと、それを起点に左右に開け放たれ――そこから巨大な顔が浮上してきたかと思うと、すぐにその目線の高さに同じく巨大な銃口が現れた。


「チェーンガンをくらいな!」


 そんな露骨に攻撃を宣言されて、むざむざ当たりに行く原初の虎ではないはず――予想通りの轟音とカメラの乱れが生じ、次に映像が映った時には、地中から現れた機影の背後からの視点になっていた。


 オリジナルの動きに合わせて、ちょうど下からせりあがって来たモノの姿も見えてくる。それは人のシルエットを持つ巨人であり、全長は十メートルほどにも達していた。その者の規格に合わせているのだろう、銃から落ちていく薬莢のスケールも通常の五倍ほどの大きさであり、それらがコンクリートに叩きつけられる乾いた音がけたたましく鳴り響いた。


 薬莢の雨が降りしきると同時に、機械の巨人はゆっくりと虎の方へと振り返ってくる――強烈なスポットライトの元、青を基調にした装甲に、頭に通信を受けるためなのか一本の鋭い角をつけた、二足歩行用のロボットが姿を現した。


「巨大ロボットだと!?」

「アラン、あんなデカブツの相手をする必要はない。アンダーソンの暗殺を優先……」

「……なかなか格好いいじゃねぇか!」

「……はぁ?」


 オリジナルの感想に対し――自分としても、まさか巨大ロボットを見れるとは思っていなかったし、流石フレデリック・キーツと言わんばかりのデザインで、素直に格好いいと思う――画面内のべスターは何かスイッチが入ったのか、マイクを握りなおして前のめりになった。


「いいかアラン。無重力空間ならまだしも、大気中で二足歩行をする戦術的優位性なんぞまったくないんだ。要するに、アレはただの浪漫で作られた、全く非合理的な……」

「おぅ、タイガーマスク! コイツの良さが分かるとはなかなかに見どころがあるな!」


 早口でまくしたてるべスターの通信を、キーツの大声が遮った。パイルバンカーを却下したり、べスターは設計に関して合理的で無駄を省いていくタイプなのだろう。逆にキーツの趣味は、惑星レムで見た通り、なかなか男心というか、浪漫を分かっているタイプの設計をする――もちろんあの男は単純に浪漫だけで運用はしないタイプであることも間違いなかった。


「だが、ここがお前の墓標になるんだ……冥途の土産に教えてやる! アンダーソンはTF19の中だぜ!」

「なんだと!?」

「いくつかの作戦行動で、テメェに高火力の武装が無いのは織り込み済みだ! 特殊合金製のボディはテメェの攻撃に対して無敵……絶対に破れない、完全無欠の要塞ってわけだ!

 さらに、TF19は対高山ゲリラ用の制圧兵器だ! コストの問題で量産こそされていないが、その戦闘能力は折り紙つき! アンダーソンを守りながらテメェを屠る、一石二鳥の策ってわけよ!」


 なるほど、戦車の行き来の難しい山岳地帯を制圧するために作られた兵器なのか。そうなればキャタピラーではなく二足歩行である理由も頷けるし――同時にリーゼロッテの話では山岳地帯で抵抗を続けるゲリラの制圧は難しいらしい。そういう流れで作られた兵器なのだろう。

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