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10-26:鳥かごへの潜入 上

 アシモフ・ロボテクスカンパニーへの潜入は、まずは外壁を上るところから始められた。いかに優秀なハッカーが居るとしても、正面から全てのシステムを掌握するのは難しいし、そもそも出来たとしても有人の警備員も存在している以上、大規模な防衛プログラムの改竄をしたとしてもバレてしまう。そのため、ハッカーによる援助は最小限に、ある程度は虎自身の独力で頂上まで辿り着かなければならない。


 狭い範囲に高層ビルが密集しているのを利用し――当時の首都は高層ビルが文字通りに密集しており、その隙間を環状線が走る立体的な構造になっていた――まずは近くの建物の屋上からの移動が試みられた。オリジナルの腕に取り付けられたガジェットからワイヤーが発射され、それを伝って摩天楼の中層まで一気に移動をする。もちろん監視カメラは仕掛けられているはずだが、それは凄腕のハッカーの腕の見せ所だ。


 ハッカーが監視カメラに擬似映像を流してカモフラージュしてくれている甲斐あり、虎はアシモフ・ロボテクスカンパニーの外壁に着地することができた。そこからしばらくは、光学迷彩を使って窓の死角になる部分から壁をつたって昇っていき、最終的には地上から三分の二ほどの高さの部分で――とはいえ、まだ更に上に何十階もあるはずだ――メンテナンス用の出入り口から侵入することに成功した。


 扉付近の監視カメラは、これもハッカーの対応により事なきを得た。しかし、第五世代型が有人の見回りが居ないとも限らない。仮面は屋内に入ってすぐに身を潜め、物陰へ移動し、辺りに何者もいないことを確認してから「こちらタイガーマスク」と――先日リーゼロッテに呼ばれたのが気に入ったのか、ミッション中はタイガーマスクと自称するようになったらしい――通信を始めた。


「予定通り潜入することに成功した……オーバー」

「あぁ、こちらからも映像は見えている。引き続き慎重に行動し、最上階を目指してくれ。なお、戦闘は……」

「分かってる。破壊しちまえば侵入がバレるからな。上手く身を潜めながら進むよ……凄腕さんに協力してもらいながらな」


 オリジナルの言葉に対しては、誰も返答をしなかった。本来なら、凄腕と呼ばれた者が返事をすべきところだと思うが――沈黙が気まずかったのか、オリジナルは「おい、何とか言ったらどうなんだ?」と声を掛けるが、やはり無言が続くだけだった。


「ヴィクター、ハッカーにも声は聞こえてるはずだよな?」

「あぁ……こちらに返答が来ている。協力は惜しまないが、一度に干渉できる第五世代型は二体まで。正確には十体までいけるが、怪しまれないようにするにはそこが限度……らしいぞ」

「あのなぁ、俺は凄腕さんの声が聞きたいって言ってるんだぜ」

「人見知りだから勘弁してくれとさ」

「はぁ……人見知りの癖に大胆なんだな」


 人見知りの癖にトップシークレットにアクセスしようとしてくるというのは大胆だと言いたいのだろうが――自分としてはまた別のことが気になっていた。星右京はなぜ、ACOのデータベースにハッキングを仕掛けてきたのだろうか?


 ハッカーとしての腕を試したかった、または本当に虎のファンでその秘密を知りたかったなど色々考えられるが――そのどちらも違うように思われた。ふと、以前にべスターが右京が二重スパイと言っていたことを思い出し、画面外にいる方に質問を投げかけてみる。


『右京は二重スパイだった言っていたか?』

『その質問に対する回答はイエスだ。アイツがACOのデータベースにアクセスしてきた理由は自分の存在をアピールし、入り込むためだろう。単純にスパイ活動をするんだったら、ハッキングしていることが露見するのは避けるべきだし……そもそも、アイツの腕があれば、情報を抜き出すだけならAOCに入り込む必要もなかったんだ』

『つまり、アイツの目的は情報ではなく、AOC、ないし二課に入り込むことだったと?』

『あぁ、恐らくな……とはいえ、いつ、どのタイミングから二重スパイをしていたのかは不明だ。最終的にはDAPA側に寝返った訳だが、実際に右京と組んで重要な人物の暗殺にも成功しているから、最初からDAPA側だった訳でもないと思う。

 どちらにしても、星右京の心は、ACOにもDAPAにも所属していなかったように思うがな』


 その辺りはオレの記憶を見て確認してみてくれ、ベスターはそう言いながら煙を吐き出し、視線をブラウン管に戻した。

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