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10-13:ファーストミッション 中

 映像はいったん、ひたすら移動を続けるという場面が続いた。その間に一転気になったことを、画面外のべスターに確認を取ることにする。


 その内容というのは、なぜこの極東の島国にDAPAの幹部が集まっていたのかということだ。本来、DAPAを構成する企業群の本社は海外にあったはず――それに対するべスターの回答は以下のようなものだった。


 もちろん正確に言えば、全ての幹部が極東の島国に集まっていた訳ではないことを前提として、母なる大地のモノリスが運び出されたのがこの国だったから――本国に持ち帰るには距離が遠く、国際機関の妨害を懸念したDAPAは、ここに運び込んだのだという。


 元々、極東はもちろん、世界的な国際化がさらに推し進められた結果――これもある意味では政府の力が弱まり、企業の力が強くなったせいだが――都市部にかなりの外国人が流入していたこともあり、海外企業が進出するのには都合も良かったらしい。海に囲まれているのも、世界中からの物資はもちろん、海底資源を船で運ぶのにも向いていた、と付け加えた。


 画面外のべスターの補足が終わるのに合わせて、画面内のアラン・スミスの移動も終わったようだった。今は小高い丘の上に身を潜め、眼下にあるプール付きの豪邸を見下ろしている。


「どうだアラン、第五世代はいるか?」


 仮面の視界が狭く拡大されていく――恐らく、仮面に取り付けられているズーム機能か何かを使っているらしい。アラン・スミスは窓や庭など、屋敷の所々を拡張された視界で見るが、何かしっくりこなかったのだろう、ズームを切ってから再び視線を動かすと、正門の前でカメラを止めた。


 べスターの記憶を再構築している映像のせいか、そこには何も映し出されていないし、流石に画面の中の気配まで察することはできないので、画面外の自分には何もない空間を眺めているようにしか見えないのだが――。


「正門の前に一体居るようだ。ただ、室内に何体いるかまでは分からん」

「窓から確認はできないか?」

「。流石に壁を隔てていたら、目で見えなきゃ確認できないな……とはいえ、勘で言えば、あと二体は居そうな気がするな」

「勘、勘ね……非科学的だが、お前の存在そのものがある意味では非科学的だし、何よりお前の勘は結構当たるからな。その勘が正しいと仮定すれば、敵は三対になる訳だが……どうする?」

「逆に聞くが、第五世代型は壁を透過して俺の存在を認識できるのか?」

「それは無理なはずだ。結局、第五世代の視界に入らなきゃサーモグラフィーや収音装置等のセンサーの類は意味を為さないし、同時に壁の素材次第でもあるが、遮蔽物があればレーダーの感知も難しいはず……外の一体が仲間に知らせるまでは、中の連中はお前の存在に気付かないだろう」

「それじゃあ、敵は一体だな。ターゲットを仕留めた後は、ADAMsで一気に離脱するんだから……おっと」


 別荘に向かってくる光を確認して、仮面は改めて木の裏に身を潜めた。そして僅かに身を乗り出し、門の近くに停まった車を眺めていると、助手席から男が一人、運転席から女が一人が現れた。


 男の方は初めて見るが、女の方はなんとなくだが誰だか分かる。女性としては高身長で、黒い細身のスーツをピシっと着こなしている釣り目の女性――ウルフカットとロングヘアーで髪型は違うし、はるか遠い祖先であるはずだから血縁としては大分遠いはずだが、あの出で立ちはどこかエルを彷彿させるものがある。


「アレが愛人か?」

「いいや、別人なはずだ。愛人は別荘内だろう」

「そうだろうな……全く隙が無い、ナイフみたいな女だ。愛人って感じじゃない……情報が欲しい。あの女、何者だ?」

「ちょっと待て……アレはリーゼロッテ・ハインラインだな。DAPAの持つ傭兵団の隊長だ」


 べスターが見つめるモニターの先には、女の顔写真と経歴とがびっしりと書かれた画面が映し出されている――やはりリーゼロッテだったか。今日この日に邂逅があったかまではこの先を見なければ分からないが、オリジナルが彼女を初めて認識したのが、まさか初めての任務の時であったとは初耳だった。

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