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10-11:サイボーグとしての生活について 下

「暗殺者アラン・スミスに与えられた主な武装は二つだ。その前提として、サイボーグとして生身では出せない力を出せるということは付け加えておく……握力は最大一トン、膂力は三トンまで対応し、走った時の最大時速は加速装置なしでも百二十キロを超える」

「腕の力に対しては、走る速度は大したことないな?」

「その辺りは、元から人間の足はそこそこ早いというのがあげられるな……時速百キロで走れる生物は他に居ないし、それ以上の速度を出すなら二足歩行ではなく車輪にする方が合理的だ。

 さて、武装に関して。一つは、先ほどのコンペでも活用していた二対の高周波セラミックブレード……切れ味としては第五世代型の装甲に対しても十分な威力を発揮し、最後の時までアラン・スミスのメイン武装だった。

 もう一つは、小規模な電磁パルスを発生させるEMPナイフ……第五世代の電脳に干渉することでスタン状態にすることが可能であり、メイン回路に命中させればそのまま相手を動作不能にすることも出来る逸品だ」

「先日のロボット相手の時は普通のナイフだったよな?」


 ちょうど仮面が投擲用の短剣を取り、的に向けて投げている所が画面に映っている――その狙いはやや荒く、的の中央からやや外れたところに命中していた。


「正確には、アレも投擲用のセラミックブレードではあったのだが……ロボットとの戦闘を見て、細工は必要と思ってな。先日言った通り、居場所がバレる恐れがある火器や光学兵器の搭載は最初は認めていなかったんだ」

「最初はってことは、次第に武装は増えていったのか?」

「いいや、段々とADAMsを併用した音速戦闘に切り替えていったからな……空気との摩擦

で熱を持てば精密な機械は故障の危険性があったし、何より下手な実弾よりも素早く動けるんだ、最後まで銃器の活用はしなかった。

 代わりに、投擲ナイフより威力のあるEMPトマホークをミッションの度に一本携行させていた。高周波ブレードに変わる第三の近接武器にも活用できるしな。ちなみに、オリジナルは最後までパイルバンカーにこだわっていた……まさか、この星で勝手に作っているとはな。鬼の居ぬ間に洗濯とはこのことだろう」


 呆れた様子でこちらを見てくるべスターに対し、なんとか上手い言い訳は無いかと思考を巡らす――クラウに武器製造を依頼した時には、なんとなく必要という直感はあったのだ。


 直感と言うと、件の上位存在が自分に作用していて作らせたとも考えられるが――それよりはもう少し根源的というか、本能的なものな気がする。要するに、打ち杭をオリジナルが必要と思っていたのを、自分が継承したという方が正しいように思う。


「まぁ良いだろう? アレが無きゃ、ブラッドベリに対抗もできなかったわけだし……それに恐らく、オリジナルはADAMsを起動していない時の近接火力を補おうとしてたんだと思う」

「あぁ、だろうな。パイルバンカーは音がデカいし足を止めなきゃいけないが、逆を言えば近接戦闘での火力としては確かに高い。最初の内こそ暗殺者として隠密行動がメインだったが、オリジナルが活躍していた後期は行動が様々に及んでいたから、加速装置なしでの火力の補強を考えていたんだろう……それはオレも認識していたところだ」

「そうだろうそうだろう、だからいい加減に依頼してたわけじゃ……」

「とはいえ、炸薬式でなく電動式にする方が合理的だと言っても渋られたからな。結局こだわりの方が強かったんじゃないか?」


 再び呆れるような様子のべスターに対し、今度こそ上手い言い訳を出せなくなってしまった。杭を打ち込むのと同時に煙が出るから格好良いという思考からは、自分は脱却できなかったからだ。


「ともかく、武装については以上だ。むしろオレは間接攻撃の補強を考えていたんだが、オリジナルはナイフの方が正確に狙えるから良いと言っていたな」

「ふぅん……しかし、このころはまだそこまで正確じゃなかったみたいだ」


 ブラウン管に視線を戻すと、いつの間にか映像はオリジナルの訓練風景に切り替わっていた。とはいえ、やはり狙いはまだまだ甘いように見える――概ね訓練用の的の中心近くに当てられてはいるのだが、やはりその精度は甘い。


 クローンである自分としては、激しく動き回っている時では全てを正確無比に投げるのは難しくはあるものの、画面の中にいる仮面よりは正確に狙うことが出来る。そうなると、べスターの「正確に狙えるから良い」というオリジナルの言葉には矛盾があるように感じられた。恐らく、この後に更なる修練をして投擲の腕を磨いたのだろうが――。


「それに関してはな……今に理由もわかる」


 べスターがそう言った瞬間、再びブラウン管の画面が切り替わり――夜の漆黒に身を潜め、車道の脇を進むオリジナルのアイカメラからの映像を見つめる場面へと切り替わった。

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