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9-56:星と海の神々 下

またちょっと変えてすいません、次回投稿は10/25(水)を予定しています!

 ◆


 ルーナと第五世代型の軍隊との戦闘は熾烈を極めた。ルーナによる指揮による天使たちの連携が強力なのは勿論のこと、ルーナは第五世代型専用の補助魔法を用意しているらしく、天使たちはその速度を――さすがに伸縮できない機械の身体ゆえに、防御力や攻撃力は増していないようだが――増しているようだった。


 せっかく神聖魔法を取り戻したというのに、中々手が出せないのも歯痒い想いがする。とはいえ、ホークウィンドが言うように冷静さを欠けば、実力の足らない自分は足手まといになりかねない。目の前のことに専念しなければ。


 戦闘を開始してやや経つと、ナナコとゲンブが合流した。それで形成を逆転できるかとも思ったが、状況はそこまで好転しなかった。というのも、ゲンブは人形故に攻撃力に乏しく、またミストルテインのエネルギーは七柱を倒すのに使いたいため、ナナコの持ち前の火力も出し惜しみせざるを得ず、殲滅力が大きく向上することは無かったためだ。


 もちろん、自分たちの中では巨大剣で複数体を一気に倒せるナナコの殲滅力が最も高いことは変わりない――ゴッドイーターとやらを使えば七星結界ごとルーナを落とせるだろうが、セレナという器の身体能力もかなり高い。予備動作の大きいミストルテインでの一撃を当てるには、一度彼女の足を止める必要があるのだ。


「T3さんが居れば……!」


 ナナコが敵の飛び道具を切り払いながら呟くのが聞こえた。彼女が意味するのは殲滅力を向上させるためなのか、トリニティ・バーストを使うためなのか――多分どちらも違う。恐らく、ナナコは彼が居ると力が出る、ということなのだろう。


 T3という男の自分としての評価は、出会った当初のモノと大分異なる。最初はエルの親族の仇であるし、アランの腕を切り落とし、王都を襲撃した敵であり、合流してからも協調性が無く、攻撃的な態度を見せる彼のことを好意的には見ていなかった。


 とはいえ、今としては大切な人を奪われたという気持ちは理解できるし、T3からは節々に仲間を想う優しさが見えるのも事実――ナナコはそう言った彼のことを信頼しているということなのだろう。


 彼が居ない事実が彼女を焦らせているのか、また殲滅力があるせいで自然と足が前へ出たのか、ナナコだけが少し前へ出すぎているようだ。そして、ルーナはそれを目ざとく見つけ――銀髪の少女の方へと向けて手を振り下ろした。


「飛んで火にいる夏の虫……まずはうっとうしい過去の亡霊を落としてくれる!」


 ルーナの号令に合わせて第五世代たちがナナコの背後に整列し、同時に建物の窓から今まで潜んでいた個体たちが現れ、四方八方から銀髪の少女に向かって攻撃の狙いを定める――彼女の身体能力なら前後を囲まれるくらいなら問題ないはずだが、立体的に上からも狙われているのは厳しいはずだ。


 響き渡る轟音――しかしそれは、ただ一点から聞こえてきたものだ。その音が聞こえるのと同時に、ナナコを狙っていた第五世代型達が居た建物が光の矢に呑まれ、同時に少女の背後を囲っていた天使たちも光の一閃に焼き払われて消えていった。ルーナに向かってもしっかりと一射放たれていたが、彼女はそれに反応したらしく、七星結界でそれを防いだ。


 そして後に残るのは、未だ敵に囲まれている銀髪――ただし、それは一人にものでなく、背を預けるように二つ分になっていた。


「T3さん!?」

「惚けているなセブンス、調停者の宝珠を!」

「は、はい! T3さん、ゲンブさん、ホークウィンドさん、いきますよ! トリニティバースト……」

「……そこまで」


 天から降り注いできた声に、自分やアガタ、それにホークウィンド達も動きを止めた。聞き覚えのある声、その調子は柔らかかったが、同時にこの場を一変させる絶対的な何かが潜んでおり、皆動きを止めてしまったのだろう。ルーナも結界のために掲げていた手をゆっくりと降ろし、振り返って空中要塞の一番上を見上げた。


「ふん、やっと準備が終わったか……」


 ルーナの見つめるその先には、二人のシルエットがあった。一つは見覚えのある少年で、もう一人は見たことのない、長い黒い髪の女性だった。足を尖塔の上に乗せているのは少年だけであり――女性のほうは片手で首を締められる形で、空中に浮かんでいるようだった。

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