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9-43:JaUNT vs ADAMs 上

 他の者たちが表で戦っている横を静かにすり抜け、自分は役目を果たすためにヘイムダルの奥へと進み始めていた。日の射す列柱の回廊を抜け、空中要塞の最深部を目指す――ヘイムダルは外側は魔法都市とでもいう雰囲気で、一見すると石造りの厳かな雰囲気ではあるが、内部に入ればやはり未来的で無機質な構造になっていた。


 最初の内こそは第五世代型アンドロイドと遭遇しないように慎重に移動を進めていたのだが、今は気配を潜めず堂々と歩みを早めている。というのも――。


『……敵は襲ってこないな』

『あぁ……しかし、ずっと見られている気配はする……』


 監視されている気配のおかげで自分の緊張状態が続いており、べスターとの会話を出来る訳だが――自分が気配を消さずに移動を始めた理由はこれだった。自分の移動経路に第五世代型の配置が見られないのだ。


『べスター、どうして敵は襲ってこないんだと思う?』

『お前に今さら第五世代型をぶつけたところで無意味だと判断されているか……』

『だが、消耗させるくらいは出来るだろう?』

『分かって聞いているんだろう、アラン』


 そう、右京は自分を招いている、そんな風に感じられる。べスターの言うように無駄な消費を抑えているのか、それとも油断させておいて何かしら罠でも用意しているのか。まさか、何か自分と話したい事でもあるのか――合理的に考えれば最後の可能性が一番ないと思うのだが、何となくだがこれが正解なようにも思う。


 一応、エレベーターを使うのは避けながら――流石に罠があった時に逃げ場がないのはまずいからだ――下へ下へと移動をしていく。


 吹き抜けで下層に飛び移るなど、本来なら隠密機動としてはあり得ない動きだが、内部に敵の気配はないのだから早く目的地に移動できるに越したことは無い――時おり内部にすら届く振動から察するに、外では大規模な戦闘が行われているようだ。早めにケリをつけるべきだろう。


『今更にはなるが……シンイチには右京の面影があったな』


 吹き抜けを降りきり、最深部へと続く通路を歩いている時に、ふと脳内にべスターの声が響いた。


『面影があったってことは……似ていたのか?』

『立ち居振る舞いに関しては、成程、昔お前と話している時に近いようではあった……ただ、一応外見は別人だったから、すぐには気付けなかった』

『でも、面影があったんだろう?』


 自分の疑問に対し、べスターはすぐには返事をしなかった。コイツは重要なことをもったいぶる癖があるとも思うが、恐らく慎重に言葉を選んでいるのだろう、少ししてから『確か……』と切り出してきた。


『人格の転写とやらは、基本的には自身の遺伝子情報を持つものの方が馴染むらしいな』

『要するに、シンイチは右京の息子か何かだったってことか?』

『その可能性はあると思う。とはいえ、それだと少し違和感もある』

『煮え切らないな、どういうことだ?』

『もしシンイチが右京の息子であるとするのなら、他の七柱……アシモフやキーツはすぐに正体に気付いたんじゃないかと思うんだ。アシモフの口ぶりでは、彼女はレムに事態を共有されるまで、そのことに気付いていなかったのだろう?』

『隠し子か何かで、他の七柱にはシンイチの存在は共有されていなかった可能性は?』

『もちろん、その可能性が高いんじゃないかと思うな。とはいえ、隠す理由も分からないし……何より子供が出来たとするなら、恐らくその息子は旧世界においてか、この星にたどり着くまでにできた子供だろう。それがなんで一万年の間保存されていたのかも気になるし……』


 べスターが言い淀んだ後の言葉は恐らくこうだ。もし生まれた子に人格を転写していたというのなら、右京は息子の人格を塗りつぶしていることになる――目的のために手段を選んでいないと言えばそれまでなのだが、そこまでのことをする男でもないようには思うのだ。


 そもそも、べスターの言うように、生まれた息子を一万年に渡り保存――あまり良い表現ではないが――していたという理由も分からない。その上、勇者として戦ったシンイチは埋葬されているのだから、今右京が宿っているのはさらにそのクローンと言うことになる――などと自分が考えを巡らせていると、『一方で』とべスターの言葉が続いた。

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