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9-39:大いなる前哨戦 下

「ホークウィンド!」

「来たか……セブンスとゲンブの準備が出来るまでは、時間を稼ぐぞ」

「あぁ、了解だ……うん?」


 自分たちを取り囲んでいた第五世代たちが一斉に姿を現し、正面の建物の前で整列を始める。こちらへの攻撃が止んでいるせいか、またその様子がある種異様なせいか――自分たちも一度攻撃の手を止めてしまった。


 そして天使たちが建物の前で一列十三体ほど、さらに複数の列で密集したタイミングで、背後の建物の丸い屋根の上に、一人の少女の姿をした悪魔が現れた。


わらわは大変にむしゃくしゃしておる。こんな埃っぽい所に連れて来られた挙句、下郎共の相手をしなくてはならないなどと……この大罪、貴様らの命で償ってもらうぞ!」

「ルーナぁああああ!!」


 クラウが苦しんだのはアイツが全ての元凶だ。忌々し気に、それも本当に塵でも見るかのような表情でこちらを見下ろしているアイツの顔を見ると、思わず頭に血が上ってしまう。


 結界を踏み、正面から敵陣を瓦解しようと怒りに身を任せて突撃して、最前列にいる第五世代を目掛けて拳を振り抜く――しかし、トンファーから出る光刃は、左右から交差するように振り下ろされた、これまた光の刃にぴたり、と止められてしまった。


「何!?」

「ふん……そやつらを先ほどまでの木偶の坊と思うな。妾が直接そやつらの電脳に干渉し、限界までその性能を引き出し、一糸乱れぬ鋼の軍隊として統率されておるのだからな……それに!」


 ルーナが掌を正面へと突き出すと、その手前で何個かの火花が散った。背後からホークウィンドがクナイとやらを数発撃ちだしたのだろうが、それを結界で弾いたのだろう。


「妾自身も精神力、肉体共に最高クラスの素体を用意しておるのじゃ! 貴様らのような雑魚など、赤子の手をひねるより容易よ!

 さぁ、往くがよい天使ども! 我らに歯向かう愚かな者どもを、征服し、蹂躙し、塵芥としてくれようぞ……突撃体制!!」


 ルーナの号令にアンドロイドたちは一斉に反応し、自分の正面にいる一体が飛び道具の口をこちらへ向けてくる。腕を引き、すぐに足元に出した結界で背後へと飛び――空中で翻ると、眼下では最前列にいる天使たちの一斉掃射が始まっていた。


 そして、後列の天使たちがこちらへ向けて銃口を向けてくる――だが、退路はある。以前、龍と戦った時にエルとアランがやった、空中に無理やり足場を作る戦法だ――ホークウィンドが自分のために空中に撃ち出してくれた苦無、アレを利用する。


 宙を舞う刃に向けて結界を作動させ、自分は空中をジグザグに移動し、そのまま屋根の上でふんぞり返っているルーナの方へと跳んでいく。


「ルーナ、覚悟!!」

「第六世代の小娘が……神の御前だぞ、身の程をわきまえよ!」


 落下に合わせて呼吸を大きく吸い、渾身の力を込めて拳を振り下ろす。対するルーナは端正な顔に怒りを顕わにさせ、掌をこちらへ突き出して七枚の結界を繰り出した。


 冷静になれば、彼女は神聖魔法を統べる者なのだ、七星結界を出すことは想像できたはずだ。とはいえ、逆上した自分は、ともかく相手を倒すことに意識がいって、その事実が抜け落ちていた――当然、強力な斥力に押し出され、自分の体は無防備な状態で空中に戻されてしまう。


 今度こそは退路はない。もう空中で軌道を変えることは出来ないのだから――下から向けられた銃口に対し、せめて二枚の結界で抗おうと腕を動かした瞬間、黒い豪風が自分の体をすくい上げた。


「ホークウィンド、すまない……!」

「ティア、心を惑わされるな……呼吸を整えよ。怒りに感情を塗りつぶされて明鏡止水の境地を失えば、直ちに敵の気配を感ずることが出来なくなるぞ」

「しかし!」

「ルーナを見よ。どんな者を相手にしたとて、慢心せぬが一流の戦士……どんなに優れた器に宿ろうとも、敵を侮るような輩など恐れることは無い。戦い続ければ必ずぼろが出る」


 ホークウィンドは敵に射線を合わされないように辺りの屋根や壁を蹴りながら立体的に移動をし、最終的にアガタの近くに着地をした。もちろん、着地の瞬間を銃撃されるが、それはアガタの第六天結界が阻んでくれた。


「それに、ナナコさんが合流すれば、七星結界を打ち破る一撃が放てますから……合流するまでは無理はせずに、チャンスを待ちましょう」

「……あぁ、分かった」


 アガタの意見に頷き返し、三人で背中を守り合うように密集し――そして整然と襲い掛かってくる天使たちに対し、各々武器を構えて迎撃を始めるのだった。

二転三転してしまいすいません、やはり火土投稿にしようと思います。

そのため、次回投稿は10/7(土)を予定しています!

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