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9-32:決戦への準備 上

 作戦の決行日までは各々の時間を過ごしていたようだ。とはいえ作戦決行までの残り時間は短く、できることはそう多くはない――そんな中で頭脳組はヘイムダル攻略の作戦を練り、ティアはホークウィンドから師事を受け、アガタはレムとの交信に努め、ナナコは艦内における軽作業を――意外と家庭的なT3のフォローが入っているので何とかなっているようだ――担当しているようだった。


 自分はと言えば、相変わらずピークォド号から離れて各地を襲撃する第五世代型との戦闘を繰り広げていた。先日T3に殴られ、ティアと話したことで少しは落ち着いたが――かといって艦内に居たところで何かが改善されるわけでもないし、自分が役に立つこともない。そうなれば、一人でも多く犠牲者が出ないように戦う方が有意義だとも思ったし、同時にこの方が無駄に頭を使わずに済む。


 戦闘を通じて何度かべスターとも会話をできたが、やはり瞬間的な音速戦闘ではそこまで多く言葉を交わせたわけではない。しかし、旧世界においても、DAPAはこのように各地において第五世代型を活用したテロ活動を起こしており、原初の虎は要人暗殺をする傍らでそれらの鎮圧活動も行っていたことは聞かされた。


 その上で、旧世界で自分が活用していた武器についても情報を得ることができた。第五世代型を相手にする際はADAMsを利用した速度と高周波ブレードを活用していたということであり、今とそんなに変わりはないが――やはり敵の数が多ければ、近接戦闘だけでは手数に限界もある。


 そんな中で、ゲンブには自分が旧世界で使っていた投擲武器の制作を依頼していた。パワードスーツT2で戦っていたべスターも同じ物を利用していたので、ゲンブとしても知識はあり、再現は不可能ではないということだった。


 そして作戦決行当日の朝、艦内に戻ったタイミングですぐにゲンブより声が掛かり、自分はすぐにブリッジへと向かった。


「おはようございます、アラン・スミス……こちらが、ご依頼いただいていたEMPナイフです」


 人形は念動力でブリッジの一角に置いてあった巨大な箱を自身の前に取り寄せ、そのまま超能力で蓋を開いて見せると、中には三十本ほどの短剣が収められていた。そのうちの一本を取り出して眺めてみる。見た目は普通の短剣ではあるが、普段使っているものと重さはそう変わらず、先端は鋭利で刃は特殊な合金でできているようであり、これなら第五世代型の装甲にも突き刺せる硬度はありそうだった。


「電子パルスを発生する特殊なナイフ……第五世代のメインコンピューター、つまり頭部に突き刺すことができれば管理システムからの指令を妨害できるのはもちろん、第五世代が搭載している電脳にも作用し、生物でいうところの気絶状態にすることが可能です。

 第五世代をそのまま破壊するほどの威力はありませんが、同時に一時的に通信不能のスタン状態にするだけに留まるので、潜入工作向けではありますね……今回のアナタの役割にはピッタリですよ。

 それにどの道、この世界の稚拙な冶金術やきんじゅつで作られたナイフよりは、威力も期待できるでしょう」

「そう言うなよ。これはこれで気に入ってたんだからな」

 

 ベルトやコートに仕込んでいた店売りの短剣を取り出し、代わりにゲンブ特製のEMPナイフを仕込んでいく。旧世界の技術と比較したら稚拙であっても、この世界の住民が持てる技術の粋で作ったものであり――何よりエルが自分のために選んでくれた武器でもある。


 もちろん、投擲用のナイフは消耗品であり、最初から使っていた物を今でも所持していた訳でもないのだが。それでもなんとなく、この世界の無骨な短剣に愛着があったのは間違いない。


 しかし、こだわりだけで戦える状況などとうに過ぎている。そうなればより実践的で、戦う相手の規格に合わせた武器が必要になるのも必然だった。高威力な武装ではないが、それは超音速からの接近戦とバーニングブライトがあれば事足りる――必要なのは間接武装の強化であり、当たれば相手を無力化できるのならば、不要な消耗を避けることもできるだろう。


「……俺の役割にぴったりと言ったな? 作戦は?」


 ナイフの入れ替えが済んでからそう質問すると、ゲンブは「直に全員集まりますので、それからお伝えしますよ」と言いながら扉の方を見た。そのタイミングに合わせて扉が開くと、まずファラ・アシモフとアズラエルがブリッジに入ってきた。それを皮切りに艦内のメンバーが集結していき――全員が集まるのを見計らって、中央に鎮座する人形が辺りを見回しながら口を開いた。

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