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8-104:無限絶色の魔術 下

 ◆


 空飛ぶ鉄の船が急激なスピードで飛び去って行くのに合わせ、魔術神は極地の丘に立ち――ここまでは、勇者シンイチに瓜二つな少年が瞬間移動で運んでくれた――アルジャーノンは魔術杖のレバーに手をかけた。


「さて、これで仕上げだ。これを使うのは実に三千年ぶりだよ、アレイスター君。君は唯一これを見て……同時に、唯一生き残れる個体となる。

 第八階層魔術弾に代わり、第一から第七までの全ての強化弾を装填、発火……構成、炎、光、大地、風、冷気、闇、収束、そしてそれらを全て強化……基礎演算完了、残りを最後のモノリスへ譲渡」


 話しながらもアルジャーノンはシフトレバーを高速で動かし続け、同時に魔術弾を燃焼させて排莢していく――後は、耳で聞き取れないほどの高速な詠唱が元々自分の物だった口から紡ぎ出されると、雪の上に一つ、また一つと陣が生成され始めた。


 その魔術陣が異様なのは、一つ一つが超巨大という点だった。扱う魔術によってその大きさが異なるのは不思議なことでないのだが、半径一メートルほどに収まるのが一般的だ。それに対し、魔術神が紡いでいる陣はその何倍もあり、目視で見ると一つ辺りの半径は百メートルに及ぶように見える。


 詠唱が完了するには、実に数分の時間を要した。あの飛行物体の速度を考えれば、すでに魔術の有効射程から外れていてもおかしくはないはずだ。しかし魔術神は口元を吊り上げ、周囲に浮かんだ魔法陣を見つめた。


「我開く、七つの門、七つの力……そして我はその全ての本質を知る者! 千紫万紅たる創世の絶光、三千世界の彼方より出で、全てを破壊する理となりて、森羅万象に降り注げ!」


 男が魔術杖を天に掲げると、雪の上に浮かんでいた陣が一つを除いて宙へと浮かび、それぞれ回転して収束し始める――そして最終的には空一面を覆うほどの強大な魔法陣となり、禍々しくも七色に輝きだした。


「目的を果たせずにむしゃくしゃしているんだ……それに、王都での借りもある。今度は君の番だぞ、チェン・ジュンダー!!

 往け、無限絶色の破壊光線【ジェネシス・レインボウ】!!」


 男が最後に残った足元の白い陣を杖の底で突くと、そこから一気に無数の白雷が立ち昇り――空に浮かぶ魔法陣にそれらが到達した瞬間、世界が文字通りに一変した。


 青く澄んでいたはずの空は、陣から吹き出る何千、何万――いや何百万もの色彩を持つ光線が吹き出し――不可視の光彩まで含めれば、それこそ無限の色相を持っていると言えそうだ――それらの複雑な色に影響を受け、言葉では言い表せない色に染め上げられている。


 辺りの雪もそれらの光線を乱反射し――それも束の間、魔術神の魔術の反動か、辺りの雪も一瞬で吹き飛ばされてしまった。大気が大きく揺れ、同時に大地すらも揺れ始める。


 これはまさしく天災だった。惑星レムと、そこに生きとし生ける者を創り上げた神が編み上げた、破壊と創世の光。これほどの力が働けば、星の至る所で天変地異が起こっていてもおかしくはない――それほど壊滅的なエネルギーが、空を駆けて行った鉄の船を目掛けて照射されたのだった。

今回も元々1日での投稿を予定していた分を長くて分割したので、次回投稿は明日8/20(日)を予定しています!

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