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8-74:親子の協力戦 下

「凄いな。こっち方面にも明るかったとは」

「けっ、何を言ってやがる……まぁ、電脳戦はオレより優秀な奴は居るが、ウリエルに出来る範囲のことは分かっているからな。それで対処もできるって形だ」

「成程ね……その優秀な奴って言うのは、アルファルドのことかい?」

「あぁ、その通りだ。アイツが仕掛けてきてるなら、オレの力じゃ及ばねぇ……アイツが敢えて手抜きをしているなら別だがな。

 そのほかにも、チェンとファラも外からシステム修復に周ってくれてるおかげだ。ウリエルが正確無比なプログラミングが出来ると言っても、四対一なんだから勝たなきゃなるめぇ」


 成程、それは確かに。プログラムは組み立てるよりも壊す方が簡単なはずだが、それでもウィルスの癖が分かっており、同時に四人で対策をしているのだから負けるわけにはいかないのも道理だ。そう思いながら作業に集中していると――。


「……アイツは、オレの夢を応援してくれたんだ。宇宙開発を進めるって夢をな」

「えっ?」


 作業に集中している折に突然に声を掛けられて、思わず間の抜けた返事を返してしまう。ダンを見ると、しっしと手をおり――話はするが、作業は続けろということか。


「オレがDAPAに所属する前の一世紀前は、ロケット開発が盛んだった」


 父は喋りながらも作業を止めていない――そのため、こちらも作業は続けつつ、父の話に耳を傾けることにする。


「とはいえ、それは人々が宇宙に進出したいからという純粋な思いからじゃない。相手の国にミサイルを叩き込める技術力を誇示するため……つまり、戦争の一部として人は初めて宇宙に出たんだ。

 戦争は手を変え品を変え続いたが、大国同士の戦争はしばらく起きなくなり、今度は経済戦争が起きるようになると、エコだなんだと言って互いの発展を足止めし合う世の中になったんだ。

 ともかく、人類が宇宙に進出するという夢は長らく停滞した……旧世界では百年もあれば、技術はビックリするくらい進んでたのに、宇宙に関しては無人の探査機を飛ばす程度。 もちろん、宇宙技術自体は発達してはいた。通信技術の発達に合わせ、人工衛星を打ち上げることは不可欠で、数多く宇宙に飛ばされたが……未踏の地へ足を運ぼうという方向性では中々発展しなかった。初めて人が宇宙に出た時には、百年後にはもっと遠くまで行っていることが予想されてたってのにだ」


 ダンは思いのほか饒舌だ。今までこんなに話してくれたことがあっただろうか――とはいえ、システムの復旧はペースを落とすことなく進んでいるし、何より過去の話が気になったのは自分だ。それならばと、こちらも作業を進めながら話を聞き続けることにする。


「そして……宇宙技術は再び戦争の道具として活用されるようになった。旧世界においてある一国が宇宙からミサイルを飛ばせるように核弾頭付きの衛星を打ち上げると、抑止力のために各国もこぞって打ち上げ始めたんだ。

 それで、一国が打てば、あとは連鎖的に……地上での爆発は無かったものの、代わりに連鎖的な高高度爆発が起こり、母なる大地は無数の宇宙塵に包まれることになった……」


 宇宙塵、スペースデブリ――親父の書籍で見たことがあった。文字通りに宇宙の塵とも言えるそれらは、人工衛星や宇宙船などの破片から構成される。それらは凄まじい速度で惑星の軌道上を漂っており、宇宙開発をするのに大きな障害になると――こんな所だったか。


 ダンの言葉が止まったため、何をしているのかと気になり顔をあげると、老ドワーフは作業を進めながらも、どこか遠い目でキーボードを叩き続けていた。


「オレは、小さいころから宇宙に憧れてた……もっと遠い宇宙の果てに行ってみてぇと思ってた。だが、オレが成人する前にスペースデブリが蔓延していて、宇宙技術に関しては地上からロケットを宇宙へ飛ばす様な宇宙船を作るより、失った通信インフラの再建をすることが優先されていた。

 そんな世情だったから、ひとまず自分が宇宙に出ることは諦めても……ひとまず宇宙に関わる仕事をしようと思ってな。猛勉強したつもりだが……中々興味のないことは覚えられなかった」

「はは、それじゃあ思ったような職にはつけなかったってことかい?」

「あぁ……だが幸か不幸か、就職先が世界最新鋭の大手企業……の子会社で働くことになったんだ。ま、端的に言えばオレは技術屋で、お偉いさんの指示書通りに物を作る仕事だ。

 そんなある日、DAPAは宇宙船の開発と惑星間航行を出来る人材を募集した。なんでそんなことをしたかって、DAPAが出資していた月の監査プログラムで、モノリスを発見したからなんだが……要は国際機関よりも先に、月に埋まってる未知の物体を掘り当てようとしたわけだな。

 人材募集にはもちろん応募しようと思ったが、オレなんぞ子会社の技術屋だ……応募権が無かったんだ。そこで、親会社のおえらさんに直談判しようと思ってよ。そこで出会ったのがDAPAが一角、アシモフ・ロボテクスカンパニーの副社長だったファラ・アシモフだ」


 そこで一度だけ、モニターから視線を外して――父の方も今度は手を止め、過去のことを思い出すためにか、どこかぼぅっとした目で暗い部屋の奥を見つめていた。

次回投稿は7/18(火)を予定しています!

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