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8-72:親子の協力戦 上

 基地内のシステムがハッキングされて後、自分とアシモフでシステムの修復に努める――とはいえ、障害は山積みだった。そもそも、システムを組んだのがゲンブであり、自分は施設を動かすプログラムに自分は明るくはないし、船内からだと間接的な修復になるので対応も難しい。


 ただ、もっとも厄介なのはウィルスそのものだろう。修復したコードを条件に、またウィルスが増殖していくというような作りであり、まるでこちらの行動を先回りして読んでいるかのようで気味が悪かった。


 何度かティアに――いつの間にか船内に来ていたらしいのだが――「シモンさん」と声をかけられたような気もするが、目の前の対処に手一杯で話の内容までは記憶にない。ともかく、手を動かせば動かすほどに状況は悪化していき、どうしようもない無力感の中でひじ掛けを叩いて一旦コンソールから離れ、椅子に背を深く預けて落ち着くことにする。


 ちょうどその瞬間、背後の扉が開いた。そちらに目を向けると、あまりに意外な人物がきょろきょろと船内を見回しているのが目に入った。


「これがピークォド号か……なかなか良い船だな」

「親父!?」


 一歩室内に入ってきた白髭のドワーフは、自分の声に反応してゴーグルを外し、歳に似合わない気障な仕草を取りながら自分とアシモフとが座る座席の間に移動し、こちらにニヤけた面を向けた。


「よう、シモン。もしかしたら、ここにいるんじゃないかと思ってたぜ」

「そういうこっちは、滅茶苦茶にびっくりしたよ。まさか、第五世代型アンドロイド達の襲撃を掻い潜ってここまで……」


 いや、冷静に考えれば、親父の中にはヴァルカン神が宿っている――つまり、第五世代型の三原則が働くので、親父を攻撃できないに違いない。


「……そうか、アンタはアンドロイドに狙われないもんな。ここまで来るのも、そんなに大変じゃなかったんだろう」

「けっ、救世主が来てやったってのに、減らず口を叩きやがって……まぁいい。レア、状況は?」


 ダンはこちらからアシモフの方へと向き直る。アシモフは張り詰めた表情が柔らかくなっており、少し安心した様子で口を開いた。


「ファラで大丈夫よ、フレディ。基地内のシステムにハッキングがかけられていて、メインの電力が使えない状況。恐らく、ウリエルの仕業だと思うのだけれど……」

「あぁ、そうだろうな。もう一人だけ出来るやつをオレは知っているが、そいつだとは思いたくねぇが……」

「……可能性としては、考慮しておくべきかもしれませんね」

「ともかく、艦内から間接的に対処してたんじゃ間に合わねぇだろう。メインシステムを直接直さなきゃな……おいシモン、オレを動力室まで案内しやがれ」

「な、なんで僕が……」


 ダンは歳のわりに太い二の腕を組みながら、ぶっきらぼうにこちらへ視線を戻した。緊急事態だというのは分かっていても、親父を見るとつい反発したくなってしまう。それに、自分は機械いじりが出来るだけで、第五世代型アンドロイドがひしめく基地内を移動したくはない。

 

 いや、本当は分かっているのだ。ヴァルカン神と一緒に移動をすれば、第五世代型アンドロイドに狙われることは無いということは。きっと本音を言えば怖いのだ――故郷を捨て、継承の儀式から逃げて、ゲンブと一緒に行動していたことを責められてしまうのではないかと。


 ともかく、自分の曖昧な態度を見かねてか、ダンは大きくため息を吐き出した。


「そうは言ってもな、クラウディアのお嬢ちゃんは動力室って言ってもピンとこねぇだろうし、ファラは……見ての通り、しわしわのおばあちゃんだ。走るのには向いてねぇからな。それに、お前の言う通りここまでオレが無事に来れたんだから、道中の心配はねぇよ」

「でも、以前に砂漠の地下でアイツらに追い詰められたのがトラウマで……」

「かぁー! 男なんだ、みみっちいこと言うんじゃねぇ! 苦手と向き合わねぇと、いつまでたっても克服出来ねぇぞ!? 

 何より、猫の手でも借りてぇ所なんだ。一人でもプログラムが出来るやつが欲しい……それに家出したテメェのことを責めてるわけじゃねぇからな、安心しろ」

「くっ……馬鹿にして」

「テメェの御託に付き合ってる時間はねぇ! ほら、とっとと行くぞ!」


 ダンは怒鳴り気味の大声でそう言った後、扉の方へと振り向いた。着いて行きたくはないが、辺りを見るとアシモフとティアが神妙な表情でこちらを見ており、この場で親父に着いて行かなければいくじなしと言われてしまいそうなのが恐ろしくて――着いて行くのも恐ろしいが――半ばやけくそ気味に「あぁ、分かったよ!」と言いながら自分も立ち上がることにした。

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