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8-67:創造された魂たちの激闘 上

 イスラーフィールが展開する反物質バリアの力を利用して後方へと下がり、着地して剣を構えなおす。ちょうどそのタイミングで、ファイアブランドの折れた切っ先が雪上に刺さり――同時に剣から感じていた熱い炎も感じられなくなってしまった。


「ごめんなさい、ファイアブランド……!」


 アナタは私に力を貸してくれたのに、その想いを叶えることが出来なかった――自分の力量が足らなかったせいだ。そう思いながら折れた切っ先を見つめていると、正面から「理解できません」という声が聞こえた。


「ファイアブランドにはインテリジェントデバイスは搭載されていません。仮に搭載されていたとしても、道具に謝るだなんてナンセンスなのでは?」

「私は、頭が良くないから、難しいことは分かりません。でも、何にだって魂は宿る……この子は間違いなく、私に力を貸してくれていたんです。だから、申し訳なくて……」

「理解不能です……いえ、これが不愉快と言う感情ですか。道具に魂が宿るなどと言うのは、未発達な文明レベルにおけるある種の誇大妄想に他ならない……そんな幼稚で筋の立たない理屈を、私の前で言わないでください」


 イスラーフィールの声は機械的ではあるものの、確かにどこか怒気をはらんでいるようにも聞こえる。彼女はエルとクラウをひどい目にあわせた張本人だし、悠長に会話をしているのも違うのかもしれないが――しかし、彼女の怒りの裏には、同時に何か羨望のようなものが感じ取れるのは気のせいだろうか?


 しかし、変に刺激してしまったせいで、相手の殺意はより強固なものになってしまった。防御特化の機体であるが故に積極的に攻めては来ていなかったが、こちらの武器が破損した今なら攻め勝てると判断したのか、イスラーフィールは袖から複数のチャクラムを取り出した。


 万全の状態でない今、彼女の攻撃を受け止められるだろうか。ファイアブランドはまだ死んでない、しかしもう炎を出す力は残っていないだろう――ともかく柄を強く握って、イスラーフィールが攻めてくるのに対して迎撃の姿勢を取る。


 互いに武器を握って動かず、しばし無言の時間が流れる――その沈黙を破ったのは自分でもイスラーフィールでもなかった。水色の髪のはるか後方から、雪煙を上げて接近してきている何かが発するエンジン音が突如として聞こえ始めたのだ。


 第五世代型アンドロイドならば視認できないはずなので、アレは別の何かのはず。目を凝らしてみると、誰かが雪上バイクに乗ってこちらへ向かってきているようだが――。


「……ダンさん!?」


 近づいてくる者を目を凝らしてみて視認できた瞬間、思わず声が漏れてしまった。ガングヘイムで別れたはずのダンが、厚めの上着を纏って、雪上バイクに乗り――それもサイドカー付きで、何か荷物を乗せている――こちらへ向かってきているのだ。


「フレデリック・キーツ……!?」


 イスラーフィールが振り向いて後方を確認しようとした瞬間、彼女の方へ無数の弾丸が飛び交った。イスラーフィールは鎌をもっていた左手をかざして銃弾から身を護っている――見れば、ゲンブの機械布袋戯がこちらへ戻って、イスラーフィールへ攻撃してくれているようだった。


「セブンス、イスラーフィールの相手は私がします……アナタはヴァルカンの元へ!」

「ばる……?」


 聞き覚えのない名前「ダン・ヒュペリオンのことです」と補足が入ってようやく理解した。要するに、ゲンブがイスラーフィールの足止めをするから、自分にダンの元へ行けということか。事態を察して人形に「はい」と返事を返し、ゲンブの攻撃で釘付けになっているイスラーフィールの横をすり抜けて、自分はこちらへ向かってきているドワーフの方へと走り始めた。

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