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8-60:眠り姫の防衛線戦 中

「ゲンブ、この部屋に入ってくるルートはこの扉以外には無いか!?」

「そこ以外にはルートはありません。後は運搬用のエレベーターに乗ってくる……この場合、二体以上は一気に降りてこれないでしょう。もしくは、壁を破ってくるかです」

「了解だ、この扉は開けっ放しにしておいてくれ!」


 運搬用エレベーターから来るのが一、二体程度なら、ADAMsを使えばすぐに戻ってくることは出来る。それに、ソフィアたちが来るまでに少しでも敵を殲滅しておいた方が合流もしやすいだろう。


 とはいえ、ADAMsを変身せずに使えば消耗が激しいのも確かだ。そのため、こちらから接近はせずに向かってくる敵を迎撃する形が良いだろう。遠距離武装を積んでいる敵に対して待ちの姿勢で臨むのは危険かもしれないが、向こうもエルを回収するために前進せざるを得ないはず――予想通り、二体の透明な敵はブラスターの引き金を引きながら、徐々にこちらへと向かってきている。


「カモン、カモン……うん?」


 一見すると透明な空間から放たれる光線を避けながら待っていると、天上や壁から音が聞こえ始め――そこから巨大な銃口が現れたと思うと、第五世代型アンドロイド達に向かって実弾の弾幕が張られる。


 天上や壁から薬莢が飛び、廊下に落ちて乾いた音を響かせ――大口径の実弾の掃射に逃げ場のなかった二体のアンドロイドはその身を徐々に弾丸に抉られ、次第に迷彩を維持することもできなくなり、最終的には動かぬ鉄塊と化した。


「ブラスターを撃たれれば、敵の位置は把握できますからね。施設内の迎撃装置でも、標準的な第五世代型アンドロイドならば十分に太刀打ちできますよ」

「それなら、俺が居なくてもなんとなかったかもしれないな」

「いいえ、第五世代型アンドロイドはセンサーにもカメラにも反応しませんから、アナタが囮になったおかげで位置を把握できたのです。とはいえ、こんなものもありますが……」


 敵の増援が来るのに合わせ、天上のスプリンクラーからシャワーが噴き出し始める。進軍してくる第五世代型アンドロイドの姿は水の中では見えない――雨程度は想定しているのだろう、水滴によってはほとんど視認性は変わらないが、その代わりに足元に溜まった水たまりが多少跳ね返るので位置は把握できる。そこを目掛けて再び弾薬が飛び始め、水と薬莢の雨が通路を覆った。


「……音も光も反射せずとも、迎撃できる立ち位置ならこのように見分ける手段はいくらか存在します」

「なるほど……それが、この大がかりな基地を作った理由か」

「とはいえ、弾薬の消費も多少は抑えたほうが良いでしょうから……二体程度ならアナタにお任せしても?」

「あぁ、問題ない」


 ゲンブ製のガトリングガンで鉄屑になった六体の第五世代型を眺めながら、誰にともなく頷いた。


 その後は自分一人で時間差で一体ずつ来た計三体の第五世代をADAMsを使わずに撃破すると、状況が少し落ち着いた。いや、変わらず通路上に敵が居る感じはするのだが――。


『……攻撃が止んだな』


 そう、べスターの言う通り、結局数体がこちらへ来ただけで敵の攻撃は止まったのだ。


『安心は出来ないな……あの突き当りを曲がった先に集結している感じがする』

『成程、少人数で来ても各個撃破されるのを学習したのかもしれないな。しかしそれならどうする? 打って出るか?』

『いや、既に十体は集まっている……ADAMsを使わなきゃ切り抜けられないだろう』

『珍しく出し惜しみしているな。まぁ、それ自体は悪いことではないが……それなら、チェンに曲がり角の向こうのスプリンクラーを作動させるように言っておけ』


 一瞬、べスターの狙いが分からなかったものの、すぐに言わんとすることを理解し、チェンにその通りの指示を出した。通路の奥で水が跳ねる音がし――少しして、巨大な氷柱が一気に突き当りを駆け抜けて壁に衝突するのが見えた。丁度通路の大きさ分の面積を占有する攻撃だったのだ、第五世代型達も逃げ場なく――氷柱が霧散する時には、L字の交差する場所に圧殺された鉄屑が積みあがっていた。

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