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8-44:白昼夢に関する考察 上

 ソフィアは一瞬険しい表情を見せたものの、すぐに再び笑顔に戻り――とはいえ、どことなくプレッシャーを感じる笑みだが――こちらへと小走りに近づいてきた。


「アランさん! お疲れ様!」

「あぁ、ソフィアもな……そっちはまた作戦会議に参加してたのか?」

「うん! それでアランさん……スザクさんと何を話していたのかな?」


 真正面までソフィアが寄ってきて、こちらを見上げるように質問をしてくる。先ほどの――とくにシンイチの話題を――掘り返すとマズそうと思い、どう返答しようかと考えているうちに、すぐ隣にいるスザクがくつくつと笑った。


「何って、楽しいことよ」

「むっ……スザクさんには聞いてません!」

「あらあら、むくれちゃって……子供なんだから」


 テレサの背はそこそこ高いので、スザクはソフィアを見下ろす形で口元に笑みを浮かべており、対するソフィアはムッとした表情でスザクの方を見上げている。


 この二人は顔を合わせればこんな感じだ。今はスザクの方には余裕があると言えども、会話の流れ次第では立場が逆転してしまう時がある。ソフィアがリボンの話をしている時や、自分が描いた彼女の肖像の話をしている時など、かなりカリカリしていたように思う。


 ソフィアもソフィアで、話し方や言葉そのものが暴力的なわけではないが、スザクを前にするとなんだか妙なプレッシャーを発し始める。ナナコの時の警戒か、ある意味それ以上のものを感じるが――しかし、元々は温厚な子だと思っていたし、テレサとの関係は悪くなかったはずなので、どうやらグロリアとの折り合いが恐ろしく悪いらしい。


 ともかく、二人を放っておくと互いに威圧し続けて、間に挟まれている自分の身がもたなそうだ――そう思い、代わりに自分が話の流れを変えることにする。


「えぇっと……王都で別れてからのことを話してて、今からは旧世界でのことを聞こうと思ってたところだ」

「……それ、私もすごく興味あるな!」


 こちらの言葉に、ただでさえ近かったソフィアの距離がさらに縮まった。背伸びしているのだろう、先ほどよりも少女の碧の瞳がこちらに近づいてくる。自分としてはこの話題は興味もあるし問題ないのだが、スザク側はどうだろうか――と、自分が確認を取るよりも早く、ソフィアが「スザクさん、私も聞いても良いですよね?」と笑顔で確認を取っていた。


 対するスザクは、眉間に指をあてて大きめなため息を吐いた。


「いいえ、込み入る話も色々とあるから、アランと二人で……まぁ、いいじゃないですか、減るものでもないですし……まぁ、それもそうだけど……ソフィアさんを仲間外れにしたら可哀そうですよ」


 テレサ・グロリア会談が目の前で行われ、スザクは再度大きめのため息を吐き、最終的にスザクは「まぁいいでしょう」とソフィアに対して頷いた。


「ただ、少し腰を落ち着けたいわね」

「そうですね、それじゃあ私の部屋に行きましょうか。今はナナコも出てると思いますし……なんなら、スザクさんの部屋でもいいかもしれないですね」


 ちなみに、ソフィアはナナコと同室で、スザクは一人部屋になっている。情緒の不安定を鑑みるに、スザクは誰かと同室の方がいいのではという意見もあったのだが、スザク自身が一人で問題ないと言った結果の一人部屋なのだが――ファラ・アシモフとは一時休戦の意志を見せてくれているので、本人がそう言うのならということで一人部屋があてがわれた形だ。


「別に、私はどっちでもいいけれど……でもそうね、中間を取ってアランの部屋でも良いんじゃない?」

「なるほど、良いですね! そうしましょうか!」


 スザクは悪戯気に笑って、ソフィアも珍しくスザクの前で笑顔になって手を叩いた。自分の預かり知らないところで勝手に話が進んでいるのもアレだが、まぁ二人が満足するならそれでもいいかと思い――部屋の中に見られて困る物もないしな――二人を部屋に通すことにした。

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