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8-8:ソフィア・オーウェルの思考と記憶について 下

「もう無理な思考分割をしなくても大丈夫よ。アナタの思考を覗き見れるレムは味方だし、危険思想を持ったとしてもアラートは私にしか感知出来ないようになっている……それに、アナタの記憶を改竄することも私にしか出来ないように変更したわ」

「ありがとうございます……と言いたいところなんですけど、七柱の創造神達の影響から完全に脱却することは出来ませんか?」

「それをするなら、脳内にある生体チップを取り除かなければならない。でも、生体チップは脳の奥深くに埋まっているから、取り除く手術自体が難しいわ。私が権利を放棄することもできるけれど、そうすると他の管理者がアナタの精神に干渉してくる危険性があるから……」

「そういうことでしたら、レア様が管理されるのが一番安全そうですね……ありがとうございます。ともかく、ティアさんやジャンヌさんという前例があるなら、自分も本心を隠したまま行動することも出来るはずだ、と思って行動していた訳です」

「それをしようと思ったきっかけは?」

「ジャンヌさんが解脱症に罹った時です。いえ、正確にはサンシラウの村でジャンヌさんを見てから……彼女が引き起こしたレヴァル襲撃は許されることではありませんが、それでも……人としての尊厳が破壊されることが正しいとも思えませんでした。

 何よりも……私はあの感じ、知っていたんです。自分の記憶が、どこかで誰かに改竄されて……そして、同じように自我が崩壊しかけた時があると」


 ソフィアが言葉を切ったタイミングで、壁際のティアが口元に手を当てながら口を開く。


「そう言えば、レヴァルでアラン君が解脱症について質問してきたことがあったね。その時、ソフィアちゃんが似た症状を引き起こしていた、と彼は言っていたけれど……」

「うん……おぼろげながら覚えてるよ。あの時、アランさんが声をかけてくれて、それで私は戻ってこれたけど……ジャンヌさんは戻ってこれなかった。そしてジャンヌさんを見て、自分の記憶を改竄してしまう可能性のある神に対して恐れを抱くと同時に、許せないとも思った……」


 いついかなる時も監視され、神々に不都合なことを思考したりすれば記憶を改竄され、この世界の構造に対して危険な思想を持てば人格を崩壊させられる――実際、それは先日、クラウの件で目の当たりにしたことだ。そしてそれは、何と禍々しく、恐ろしいことであると思ったか――その当事者たるティアもクラウのことを思い出しているのだろう、悔し気に視線を落としている。


 同時に、ソフィアが以前、クラウやエルには神々を疑うようなことを言ったりしてはいけないと言っていたことの真意も理解できた。ソフィアは誰に教えてもらうわけでもなく、一定までの真理に到達しており、下手なことを言うのが仲間たちに対してリスクになることを分かっていたから、こちらに対しても注意してくれていたのだろう。


 そしてソフィアは一呼吸を入れて、彼女らを想像した一柱を静かに見据えた。


「話を戻します。レア様、私は今の所、アナタと事を構えるつもりはありません」

「あら、今のところは、なのね……一応、私はアナタの精神に干渉する権利を持っているのだけれど?」

「そこに関しては、まだ情報が足らないのが事実……また、真実を知って、アランさんがどう判断するかも分かりませんから。仮にアナタが私の精神に干渉してくる可能性があるとしても、敵対する可能性がゼロでない以上は確約は出来ません。

 でも……アランさんもアナタやレム、ヴァルカン神と戦う意志を持たないと思います。ゲンブさん達も、恐らく同様です。つまるところ、私はアナタ達と手を組んで、ルーナ神を筆頭とした、私たちのことを道具扱いする神々と戦う、というのが結論になると思います。

 そのうえで……きっと、アナタは私の記憶を覗き見て、私の記憶を一度改竄したのが何者なのか知ったのですよね? それが何者なのかを教えて欲しいです」

「えぇ……いいわ。回りくどい様で申し訳なかったけれど、最終的にはそこに帰結させるつもりだったもの。今のアナタなら、記憶や人格を改竄されることもなく、真実を知ることができるから……」


 アシモフはそこで一呼吸を置いて、瞳を閉じながらゆっくりと続ける。


「アナタの記憶を改竄したのは、第九代勇者のシンイチ・コマツです」

「……シンイチさんが? でも、あの人は……」

「……正確には、シンイチ・コマツの肉体に人格を投射させていた一柱……アルファルドよ」


 アシモフが話を終えた瞬間、ソフィアは一瞬驚いた様に目を見開いたが――すぐに得心したように頷き、顎に手を当てていつものように何か考え事を始めたようだった。

次回投稿は5/3(水)を予定しています!

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