表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
333/992

7-78:激戦の決着 中

「アンドロイドの三原則は、とある動機付けで突破することは可能……私はチェン・ジュンダーに洗脳されたアナタを安全な場所へと連れ返すべく、戦闘行動に入ります」

「馬鹿な、その動機づけが不可能でないとしても……仮に事故で私が死んでしまった場合、アナタは自分の行動に自己矛盾を起こして崩壊を……」

「いいえ、アズラエルの最優先要綱がアナタの防衛であるのと同時に、私の最優先はルーナ様の守護です。

 もちろん、本当にアナタがチェン・ジュンダーに洗脳されているなどとは判断していませんが……可能性としては払しょくしきれません。そうなれば、私の優先順位は第一はルーナ様の敵対者を倒すこと、第二がアナタの身柄を確保すること……第一優先がある限り、ルーナ様と敵対しうる者を排除したということで、私は私の守るべき制約とアイデンティティを守ることが出来るのです。」


 つまり、先ほどレアがルーナを討つと宣誓してしてしまったことで、イスラーフィールの優先順位が書き変わったのだ。逆に、先ほどまでイスラーフィールが攻めあぐねていたのは、レアを巻き込むことが三原則上不可能だったから――要するに、レアの不用意な一言でイスラーフィールは戦闘態勢に入ってしまったということになる。


 唯一の疑問としては、ジブリールの最初の一撃はレアも問答無用で巻き込むモノだったが――それも恐らくある種の動機付けて突破したのだろう。ジブリールに対しては、この場にレアがいることを敢えて通達しなければ、こちらを攻撃することは可能――そのような形で突破したに違いない。


 ともかく、ファラ・アシモフの一言で状況が悪化したのは間違いない。こういったことに関しては、彼女が専門だったはずだが――。


「……アンドロイド心理学者のアナタが、へまを踏みましたね」

「えぇ、そうですね……」

「まぁ、そう申し訳なさそうな顔をしないでください。どの道……!」


 人形の人差し指と中指を上げ、周囲の瓦礫を一気に押し上げ、それらをイスラーフィールに目掛けて射出する。三百六十度全方位、これなら防ぎきれまい――などというのは、甘い算段だったらしい。イスラーフィールの居た場所は瓦礫に埋まったが、一瞬でそれらは全て吹き飛ばされ、後には全方位に膜を張って涼し気にしている少女が立っている――やはり最高傑作の熾天使に対する攻撃としては甘かったか。


「どこかで彼女たちを倒さなければならない、と言って慰めようと思ったのですが……これだと格好がつきませんねぇ」

「チェン・ジュンダー、油断のならない男……しかし、それもここまで。排除を開始する」


 イスラーフィールの投げてきたチャクラムに対し、こちら側も結界を貼って応戦する。本来なら飛翔してやり過ごしたいところだが、七星結界を出す以外に戦闘能力のないファラ・アシモフを放っておくわけにはいかない――彼女は精霊魔法の使い手と言えども、戦闘向きの素体に宿っているわけではない。老いた体では熾天使の高速戦闘についてくることは出来ないだろう。


 イスラーフィールの投擲に対しては、こちらとしては防戦一方になる。どれ程の数を仕込んでいるのか、袖から無限に出てくる円月輪に対し、可能な限りはこちらもサイコキネシスで対応はするが、全てを迎撃は仕切らない。その度に結界札を一枚、また一枚と消費していく中で、イスラーフィールは無表情のまま無慈悲に攻撃を続けてくる。


「……ガングヘイムの戦闘データを見る限り、アナタの結界もそろそろ限界のはず」

「ふふ、どうでしょう……これを見越して、もっと数を用意してきているかもしれませんよ?」


 まったくもってハッタリなのだが、素直に「そろそろ危険です」と言ってやる義理もない――しかし、イスラーフィールの言う通り、これ以上の長期戦になればこちらが不利になる。この場を切り抜けるには、何かチャンスが必要――そう思っていると、遠方で飛び交っていた六枚のリフレクターが一か所に集まって飛んでいくのが見えた。


「……猪口才なゴミ虫どもめ!!」


 ジブリールは叫ぶと、六枚の翼を自分の元へと戻し、一気に上空へと登っていった。そしてそのまま、月明かりを一身に受けて、背中の羽を輝かせ始める。

 

「月の光よ!」

「それを待っていた……!」


 赫焉かくえんの熾天使は上を取れば安心だと判断したのだろうが――ひとたび見た技に対応するのはアンドロイドだけの特権ではない。むしろ、原初の虎やホークウィンドのように、優れた戦士ならば当たり前のように備わっている本能――ホークウィンドは待っていたのだ。ジブリールが上空で慢心し、攻撃の手を休めるのを。


 装束の上からでも分かるほど、ホークウィンドは肩の筋肉を隆起させ、巨大手裏剣を上空に向かって投げつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ