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7-69:漆黒の戦狼 上

「まったく……いつも無茶するんだから。初めて会った時も……」


 自分の手を握るテレサの顔には、こちらを慈しむ様な微笑が浮かんでいる。恐らく今の言葉はグロリアのモノだろう――自分のオリジナルと初めて会った時とやらのことを思い出しているのかもしれない。


 しかし、まさか初対面でこんな風にお互いに空を飛んでいたもあるまい。そう思っているとテレサの顔からふと微笑みが消えて苦しげな表情になり、彼女は空いた手で額を拭った。


「あ、アラン、さん……私は、お義姉さまと戦うために、この腕を授かった訳ではありません……」

「あぁ、分かってる……テレサもグロリアも聞いてくれ、エルは俺がどうにかする……だから、T3と一緒にソフィアとナナコの所まで退いてくれ」

「T3……私は、あの人を……」

「許せないのは承知の上だ。だけど頼む、今だけは……自衛のためにアイツとも力を合わせて欲しい。それに、エルのこともなんというか、それっぽくするからさ」


 そう言って笑って見せると、「何がそれっぽくなのか分かりませんが……」とテレサの顔も穏やかになったが――すぐその表情に鬼気を募らせる。もちろん、原因は分かっている、自分の背後でエルが何かをするつもりなのを見たのだろう。


「ほら、俺をエルの方へ投げてくれ! テレサの腕力があれば余裕だろう!?」

「分かりました……アランさん、お義姉さまをお任せします!」


 テレサがこちらの腕を引っ張り、そのまま凄まじい勢いで一回転する。その反動で良い塩梅で勢いがつき、自分は短剣の周りに力場を発生させているエルの方へと放り出された。


 自分が放り出されるのと同時に、エルは重力波を自分の方へ向かって放出してきた。自分を放り投げてすぐに移動を始めたので、テレサは脱出できたようだ――対して自分の体は渦に呑み込まれ、重力によって圧縮される体中が悲鳴を上げだした。


 本当は重力波の中で加速などしたくないのだが――空中に居れば加速の恩恵を受けられない上、この檻の中で神経伝達を加速をすれば痛みを感じる時間は何倍にもなる。とはいえ、ADAMsを起動しておかなければ相手の速度に対応できないし、何より――。


『アイツが耐えてたんだ! 俺に無理な道理はねぇ!!』


 そう、T3はハインラインに及ばなかったかもしれないが、少なくともこの重力波の中でも戦い抜いていたのだ――やはり重力波の中では鈍い痛みがゆっくりと来て身体を蝕むが、しかしアイツが耐えていた苦痛に音をあげるわけにはいかない。


 何より、レッドタイガーのおかげでこちらの身体も頑丈になっているし、今は地面にたたきつけられているわけでないので身動きだって取れないほどじゃない――それは向こうも把握しているのだろう、トドメを刺すべく接近してくるはずだ。


 そして予想通り、渦巻く重力波を掻き分けて、接近してくる翡翠色の剣閃――その筋を読んで頭が地面側へ向くように身体を上下に一回転させる。


『お前は真面目が過ぎるんだよ……オラァ!!』


 足場が無いなら作ればいい。振り下ろされる剣の側面部分をブーツの底で蹴り、それを足場に一気に勢いをつけて跳んだことで、重力の檻から抜け出すことに成功する。刃の側面を切ったので真下には逃げられなかったが、それでも岩壁への着地をすることはでき、加速をしたまま崖を降りていくことにする。


『おいべスター、あと変身はどれくらい持つ!?』

『正確なことは分からんが、ジブリールとやらが居たの場所から抜け出してから変身しっぱなしで、そのうえバーニングブライトまで使ってしまったのだ……もう長くは持つまいな』

『はっ、そりゃいい。変身ってのは、ピンチになってからが本番だからな』

『何を呑気な……そんな余裕の通じる相手ではないぞ?』


 べスターの言葉に違わず、正面に着地してきたエルは凄まじい気迫をこちらに向け、神剣の先端をこちらへと突きつけてきた。

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