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7-25:レムと古神の会合 上

 ピークォド号に帰還して後、気絶したままのテレジア・エンデ・レムリアをホークウィンドが医務室に運んでいった。起きた時に再び暴走するとも限らないので、その監視役として彼はそのまま医務室に残っている――ついでに、頭が取れたままのアズラエルも一緒に医務室で監視されている形だ。


 そのため、艦首部分に移動してきたのは自分とレア、それにアガタ・ペトラルカの三人だ。ブリッジの扉を開けた瞬間、中空に浮かぶ人形がゆっくりとこちらへと振り返った。


「ようこそ、ファラ・アシモフ……いいえ、その姿ではレアと呼んだ方が適切でしょうか? ともかく、お久しぶりですね」

「えぇ、チェン・ジュンダー……実に一万年ぶりだわ。まさか、こうしてアナタの船に招かれることになるとは思ってもみなかったけれど」

「それで……単刀直入に言えば、またどういった了見で我々に与しようとお考えになったのですか?」

「それは、むしろ私が聞きたいわ……もちろん、ここに来たからには覚悟も決めて来たけれど、今回の発案は……」


 そう言いながら、レアは振り返って後ろに立つアガタ・ペトラルカの方を見た。アガタは頷きながら前へと歩み出て、首の後ろに腕を回しながらネックレスを外した。


「詳しい話はレム本人から……えぇと、私は機械には強くないのですが、こちらのネックレスを使えばレム本人と通信できるとか?」

「……なるほど、確かにある種のトークンのようですね、これは」


 ゲンブは十字架のネックレスをじっと見つめて後、やおら指を上げた。すると、少女の手元からネックレスがゆっくりと浮き上がって、そのままそれがブリッジの中央へと運ばれて、機材の中に収まっていく。


 そして、夜空を写していたブリッジの窓がそのままモニターとなり、中央に黒髪の女性が現れる――自分も見るのは初めてだが、その容姿は伝承の通り、彼女が女神レムに違いなかった。


「……我々を招き入れてくれて感謝しますよ、可愛らしいお人形さん」

「ははは、止めてください。この姿はセブンスの趣味です……そう言うアナタは一万年前と同じ姿を取っているのですね、レム」

「えぇ……とは言っても、海底に沈んでいる本体は、既に人の形をとっていませんがね」

「さて、アナタにはたくさん聞きたいことがあります……しかしやはり真っ先に確認しなければならないのは、この会話が実は傍受されているという可能性についてです……実際に、アルファルドに傍受されているのでは? アナタは惑星レムの超高性能電子演算器であり、その権利者が居るはず……それがアルファルドだと想定していたのですが」

「アナタのおっしゃる通り、彼が私の……AIであるレムの権利者です。ですが、傍受はされていません。ピークォド号の中ではDAPA側の電波は妨害していますし、アガタのトークンにより、この通信は高度に暗号化されています。何より……彼は今、人の話を聞ける状態にありませんから」

「よろしい、その辺りはおいおい聞くとしましょう。そして次に聞きたいことですが……なぜアナタが唐突に私たちに協力する気になったのか、ということです。アルファルドの妻であるアナタが、容易に七柱を裏切るとは考えにくいのですが」

「あら、アナタほどの御仁が、男女の愛は永遠と思い込むだなんて、少々ロマンチックが過ぎるんじゃないですか?」

「ははは、これは手厳しい……ですが、答えになっていませんよ?」

「こちらこそごめんなさい……ですが、半分は関連があるのです。私がDAPAに所属したのも、この星まで来たのも……そして、我々の目的に疑問を抱いたのも、同時に原初の虎を復活させたのも、全てアルファルドが関係しているのですから」


 レムはそこで一度言葉を切って、モニター越しにレアの方を見た。


「……今から話すことは、レア……いいえ、アシモフ。アナタも知らなかった事実が多分に含まれていると思います。今こそ、原初の虎を蘇らせた真の理由をここに打ち明けましょう」


 そこからレムは淡々と話しだした――何故こちらと手を組もうと判断したのか、その理由を。そもそも旧世界で何があったのか、また惑星レムに渡ってくるまでに何があり、この星の三千年間で何があったのか――そしてなにゆえに原初の虎を蘇らせたのか。


 語り終わるのには数時間を要した。一万年を圧縮したのだから短いとも言えるのかもしれないが、それでも情報量が多く、全てを覚えておくには難しいほどだった。


 ともかく、説明を終えた頃には、概ねレムの行動原理は理解できるようにはなった――彼女は半ば騙されるような形でDAPAに所属し、そもそもは自分たちと近い立ち位置にいた、ということらしい。


 もちろん、彼女の言っていることが全て事実だとは限らない。そもそも、自分は旧世界の事情に詳しくはない――彼女の言うことが信頼に足るかは、我らが軍師の方が正確な判断を下せるだろう。そう思っていると、レムが話し終わるのと同時に人形が小さく頷いた。

本日の投稿より、1日6,000字を超える程度の文量の話は上中下に区切って3回の投稿にしようと思います。

今日はこのあと2回の投稿がありますので、引き続きよろしくお願いいたします!

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