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7-23:第五世代型の騎士 上

 自分がレアを抱え、ホークウィンドがテレジアとアガタの身体を抱えて、精霊弓が収められていた世界樹最上部の祭壇へとたどり着く。


 ゲンブ曰く、一旦彼女らの要求を飲んでみようということになった。七柱全員を敵に回すより、内部分裂があるのならそれは利用すべきであると――旧世界の弔い合戦という意味合いもあるものの、ゲンブとホークウィンドの一番の目的は上位存在の降霊を阻止することであるので、それを目論む急進派以外とは手を組むのはやぶさかではないということだった。


『納得いきませんか?』

『罠の可能性を考慮するべきだ』


 ゲンブの質問に対し、なるべく感情を抑えた返答をする。納得いかないのは全くその通りであり、自分にとっては七柱の抹殺こそが全ての目的であって、そこに手段などはあり得ない。もちろん、合理的な判断をするのなら、七柱を同時に相手にすべきではないということも理解できなくはない――そんな葛藤の中で自分が出来る最大限に譲歩が「罠の可能性を考えるべき」と一応の反論をすることだった。


『その辺りは、虎穴に入らずんばなんとやら、です。実際、アルジャーノンが落ち、ハインラインが眠っている今、レムとレアと手を組めれば残りは三柱。一気に形成を逆転できますし……ひとまず、レア自身とアガタ・ペトラルカを招き入れたとて、二人の戦闘力ならば我々で十二分に対処できます』

『そんなことは、向こうも承知の上だろう。何かがあるのなら、その裏を想定せねばならん』

『そこに関してはアナタの言う通り……しかし繰り返しにはなりますが、危険を承知で話を聞いてみる価値はあると思っていますよ』

『ふぅ……分かっている』

 

 本当に七柱の中に内部分裂があるとするのなら、それを活用しない手が無いのも確かだ。仮に最終的に全ての七柱を滅ぼすとしても――奴らはそれだけのことをしてきたのだし、穏健派も日和見で急進派を止めることが出来なかったのだから同罪だが――先に厄介な連中から倒せるに越したことはない。


 ともなれば、リスクを承知で彼女らの話を聞いてみようというゲンブの判断も理解できる。こちらとしては、セブンスとミストルテインがあってもなお、七柱に勝つには厳しいという試算をしていたのだ。それらが欠けた今ではもう少し戦力が欲しいのも確かなことだ。


『……それに、レムとアガタ・ペトラルカか本当にこちらに与するのなら、アラン・スミスやヴァルカンとも手を組めるかもしれません。そうなれば、自然とセブンスとミストルテインの回収もできます』

『だから、私は奴と手を組むつもりは無いぞ』

『ははは、まぁそこは保留にしておきましょう……さぁ、そろそろピークォド号が到着しますよ』


 ともかく、ゲンブと別れてニか月ほど、ようやっと真っ当な場所で休むことが出来る――セブンスもゲンブの想定通りこちらへ向かってきているようなので、アラン・スミス達がこちらに到着するまでは少しゆっくりできそうだ。


「……待て!」


 声のしたほうに振り返ると、そこにはある種の異様な光景があった。ラバースーツに身を包んだ男の姿があるのだが、その者は首から上がなく、代わりに頭部を右腕で抱えており――首から分離した頭部の口から声が発せられているのだ。


「……アズラエル」

「レア様! 何をなさっているのです! そいつらは我々の敵です! こちらへ戻ってきてください!」


 手に持つ頭から発せられる言葉は、全くの正論だ。今になって落ち着いて見れば、機械人間のくせに垂れ目で神経質そうな優男という雰囲気だが――いや、機械人間は自分もそう変わらないか。生まれながらにして機械であるか、後天的に機械に身をやつすか、その違いなだけだ。


「……T3? 何を笑っていますの?」

「いや……気にするな」


 こちらを見上げるアガタ・ペトラルカから眼を放し、改めてこちらを追ってきたアズラエルの方へと向き直り、外套の中に仕込んでいるヒートホークの柄を掴む。


「レアには我々と一緒に来てもらう……邪魔をするというのなら、今度こそ機能停止になるまで破壊しつくしてやるだけだ」

「くっ……レア様……」


 一対一ですらこちらを止められなかったのだから、ホークウィンドも居る今では力では勝てないと判断したのだろう、アズラエルは懇願するような雰囲気でレアの方を見る――せめて主人に自分の意志で戻るように言ってほしかったのかもしれない。


 しかし、対するレアは小さくかぶりをふった。


「アズラエル……アナタが今まで、私に良く尽くしてくれたのは十二分に承知です。そのうえで、こんな身勝手を許して、と言うのもおこがましいのも承知です……しかし、私は彼らと行くと決めたのです」

「そ、そんな……」

「チェン・ジュンダーの元に行くのは、この星の未来を思うからこそです。きっと、アナタ達天使にも安らぎの時が来るように……」

「私の安らぎは、アナタの安らぎですレア様」

「ならば、今は私を見送ってください」


 主君の説得が無理と悟ったのか、アズラエルはレアの方でなく、自分の方へと向き直った。

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