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6-24:火口に住まう不死鳥 下


 ◆


 崖の上では激しい戦闘音が続いている。自分も早く少女たちに合流しなければ――そう思いながら降りてきたときに使っていたロープを握って断崖を歩くように上に昇っていく。


 しかし、ある時から音が鳴りやんだ。もしかすると、少女たちがもう不死鳥とやらを倒してしまったのかもしれない。しかし、依然として巨大な獣の気配は消え失せていない。同時に、少女たちの気配もまだ健在だから、やられたというわけではなさそうだが。


 そう思った次の瞬間、再び崖上から轟音がし始め、同時にロープが激しく揺れ始めた。巨大な物体が崖上を抉り、火口に落ちて来ようとしている――というか、このままロープにしがみついているのも危険だ。そのため、一旦近くの岩にしがみつくことにする。


 直後、火口を照らしていた太陽が消え、辺りに大きな影を落とす。何か落下してきているのか、上を見てみると巨大な氷の塊が上から落下してきているところだった。


「……おぉおおおおおおおお!?」


 上から落下してきた巨大な氷の柱に巻き込まれぬよう、崖から突き出ている岩にしがみつく。なんとか振り落とされずに安堵するのも束の間、今度は上から氷塊が抉った石などの落下物が雨のように振り始めた。


「ちっ……!!」


 このまま崖にしがみついていては落下物で頭を打つ危険がある。一旦昇るのは諦め、岩から手を離し、一度火口の方へと降りることにする。着地してすぐに身をかがめ、落下物に当たらないように転がりまわり――瓦礫の雨が落ち着いた後に辺りを見ると、氷の塊が溶岩の方へと転がり落ちているのが見えた。


「……アランさん!!」


 崖の上から自分の名前を呼ばれて見上げると、ブロンドの髪とスカートを棚引かせて、ソフィア・オーウェルが自分を目掛けて落下してきていた。


「うぉおおおおおおおお!?」


 慌てて両腕を差し出し、落下してきた少女の体を受け止める。すぐに膝を曲げて衝撃を吸収し、お姫様抱っこの形でソフィアを抱えながらその場に膝まづくことになった。


 そしてソフィアはキッ、と、その美しい瞳ですぐに火口の方を見つめ、自分の腕の中でそのまま魔術杖を操作し始めた。


「第七魔術弾装填……フェニックス、アナタの不死なる炎と私の魔術、どちらが上か……勝負!!」


 炎を纏った細長い鳥の頭がマグマから徐々に伸び始め、一気に羽を広げる。こちらまで炎の羽が舞い、自分はソフィアを庇うように少女の体に覆いかぶさるが――碧の瞳は揺るぐことなく、ただ現れた怪鳥をその視線先に見据えていた。


「汝、その魂すら凍て尽かせ、ただ塵へと還るがいい! シルヴァリオン・ゼロ!!」


 少女が魔法陣を杖で押し出すように突くと、光の筋が溶岩の中空に佇んでいた陣へと走る。光線は乱反射しながら、今まさに飛び立とうとしていた不死鳥へと降り注いだ。


 溶岩の温度は千度程度のはずだが、果たして冷気で勝てるものなのか――しかし、自分のそんな心配は杞憂だった。ソフィアの魔術は溶岩の熱など物ともせず、不死鳥の体はマグマごと一瞬にして氷の彫刻と化した。


 そして我らが准将殿は自分の腕から降りてそっと立ち上がり、杖のレバーを引いた。


「……この勝負、私の勝ちですね」


 その言葉と同時に、氷は上部から塵へと還っていき、下部は下に残っているであろうマグマに呑まれて消えていった。そして少し待っても、もう火口から何ものかが現れることはなかった。


「……実はここに来る前、氷って高熱には相性が悪そうと思ってたんだが」

「それは、扱う魔術次第だね! 氷をぶつけるような魔術は熱に弱いけど、それでも水は比熱が高いから簡単には溶けないよ。それに、シルヴァリオン・ゼロは超低温でエネルギーを停止させる魔術だから、むしろ熱とは相性が良いんだ!」


 先ほどまでの鬼気は一切なくなり、ソフィアは朗らかな笑顔で振り返り、自分の疑問について答えてくれた。ソフィアが言っていることの内容は難しくて全然わからなかったのだが、ひとまず危機は去ったということで良しとすることにした。

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