03.キスの数だけ
ドアが閉まったことを確認した後、アマリリスの涙を拭い、キスをするタイミングを窺っていた。
剣ばかり振っており色恋には疎い為、キスのタイミング一つ取るのにも苦労している。
こんな時に頭に浮かぶのは「隊長って、もしも婚約者が出来たら、意外と奥手で手が出せなくて不安にさせそうですよね~」というオマリの過去の言葉である。
今になってその言葉を実感する日が来ようとは。
「ア、アマリリス」
「……?」
「キス、してもいいか……?」
照れながらも小さな声で問いかける。
結局、自分に出来るのは真っ直ぐ向き合うことだけだ。
アマリリスはポカンと口を開けている。
(間違えたのかもしれない……)
後悔に苛まれていると、アマリリスはそっと瞳を伏せてから此方を見上げている。
人差し指はゆっくりと唇へ。
「……して下さいませ」
ーープチンッ
何かが切れる音が聞こえた。
アマリリスの予想外の返事に、理性と後悔はどこかへ吹き飛んでいく。
やり方や雰囲気や手順も全てどうでも良くなってしまった。
「ん……っ」
何度もアマリリスを求めるようにキスを繰り返す。
「ぷは……ユリシーズ様、もう、ッン!?」
「………アマリリス」
「ンンッーーー!!?」
アマリリスの体から力が抜けてフニャフニャになるまで猛攻を続けていた。
*
(つい……やりすぎてしまった)
アマリリスはぐったりとしながら顔を真っ赤にしている。
胸を弱々しく叩きながらも、安心したのか猫のように擦り寄っている。
嬉しそうに笑みを浮かべているのを見ていると此方も嬉しくなる。
そして先程の状態になってしまった理由が気になり問いかける。
アマリリスがあんなに不安定になるのを初めて見た為、不思議に思っていた。
そしてララカの必死の伝言の理由も……。
すると、アマリリスは悲しそうに顔を伏せた。
「話したくないなら無理に話さなくていい」
そう言うとアマリリスは小さく首を振る。
「下らないって、笑いませんか……?」
「あぁ」
アマリリスの頬に指を滑らせた。
「……最近、ユリシーズ様に会えなくて不安だったのもありますが」
「すまない…」
「お父様がっ、お父様がいつも言っていることがありまして……」
その名を聞いて頭に浮かぶのはガハハと楽しそうに笑っているミッドデー国王の顔。
『愛の数だけ人はキスをしたくなるものさ!ワシはアマリリスを最高に愛しているッ!!ハッハッハッー!』
そう言いながら朝から晩までアマリリスの頬や額にキスやハグをしまくるミッドデー国王を見て、ユリシーズがあまりキスやハグをしてくれない事を不安に思ったようだ。
それに多忙と遠慮、悶々とするうちに言い出せなくなり、溜まりに溜まった不満と不安が大爆発したそうだ。
(つまり、スキンシップ不足……)
ポツリポツリと申し訳なさそうに話すアマリリスに愛おしさが込み上げてくる。
「キスがしたいのなら、これから沢山しよう……」
そう言うと、先程の濃厚なやり取りを思い出したアマリリスは両手で顔を覆いながらブンブンと首を振る。
「っ、やっぱり恥ずかしいので……偶にでいいです」
「慣れるまで鍛えればいい」
「剣の鍛錬ではないのですよ!?わたくしには耐えられそうにありません……!」
「俺とのキスは嫌か?」
「そ、そんな事は絶対になくてですね……そのっ」
「俺はアマリリスにもっと触れていたいと思う」
「……っ!」
「もっとドロドロに甘やかして俺しか見えないように……」
「今すぐ口を閉じてくださいッ!!」
「もう一度、キスしてもいいか……?」
アマリリスの指をゆっくりと絡め取っていく。
照れているのか顔が赤いままだ。
「っ、先程のは、刺激が強すぎなので………もう少しお手柔らかにお願い致します」
「ははっ」
「……もう、笑い事ではありませんわ!」
それから再び、容赦なく責め立てたのは言うまでもない。
end
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました!
番外編、これにて完結となります♪




