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番外編(2) 01.波乱の予感



「ねぇ……スペンサー」


「なんだい、ジゼル」


「もうすぐユリとアマリリスの結婚式……そして、やっとミッドナイト王国とミッドデー王国が一つになるのね」


「あぁ、そうだね」



スペンサーは椅子に座るジゼルを背後から抱き締めた。



「だけど君は身重だから、あまり馬車での長旅は……」


「分かってるわ……けれどお医者様も今は体調も安定しているから、ミッド王国までなら大丈夫だって言っていたじゃない」


「……」


「わたくしは絶対行くわ……二人に会いたいもの。それにお兄様やミッチェル様も参列するのに、わたくしだけ行けないなんて一生後悔するわ」


「はぁ……分かったよ。無理をせずに行こう」


「ありがとう、スペンサー……大好きよ」


「君には敵わないな……お腹の子と君は絶対に何があっても守るからね」


「頼りにしているわ!それにしてもアマリリスとユリは仲良くしているかしら?」


「あの二人はお互いの事を大切に思ってるから大丈夫、と言いたいところだけど、どうだろうね……」


「ちょっと、どういう事!?」


「僕の予想ではそろそろ一波乱あるんじゃないかと思ってね……」


「あの二人に限ってそんな事……」


「冗談だよ……さぁ、ジゼル。ゆっくり眠ろう」


「心配で眠れないじゃない!!」


「あはは」



ジゼルはスペンサーの胸をポカポカと叩いていた。


(アマリリスとユリなら絶対に大丈夫……そうよね?)











「ーーーわたくしのことは、もう放っておいて下さいッ!!」


「アマリリス!話を……っ」


「嫌ですッ!離してください」


「何をそんなに怒っているんだ」


「怒ってませんッ!」


「理由を説明してくれないと何も分からない」


「いいんですっ!何も気にしないでください!!わたくしは部屋に戻りますからッ」


「このまま帰せるわけないだろう…!」



アマリリスは掴まれていない方の手でボカボカと胸を殴り、瞳に涙を浮かべながら暴れている。

それには困惑していた。

こんな時、どうすればいいか分からない。


(どうしてこんな事に……)





ミッドナイト王国とミッドデー王国が、消えた王太子と王女が戻った事で再び一つに統合される。


意外にもすんなりと受け入れたミッドナイト女王とミッドデー国王に驚いていた。

アマリリスはとても嬉しそうにしていたが、茨の道だという事は分かっていた。


そして想像以上の苦難が二人を襲う。


ミッド王国になる事に賛同する者もいれば、反対する者もいる。

すんなりと受け入れる国民も居れば、受け入れ難いと言う者もいる。


ミッドデー王国を訪れた時に感じたのは国王同様、国民も陽気で楽天的。

一方でミッドナイト王国は固い印象は否めなかった。

真面目で物静かな人達が多い。


ミッドデー王国は「月と太陽、イェーイ」というようなノリだったのに対して、ミッドナイト王国は「月と太陽はそれぞれ…」というような考え方の違いも大きいだろう。


太陽と月を信仰している両国の擦り合わせは本当に苦労の連続だった。

昼間は互いの国を行き来して、和解の為に全力を尽くす。

夜はマナーや歴史、特産物や産業、社交界のルールを学び、時間がどれだけあっても足りない程の知識を頭に叩き込む。


だが、問題を一つ一つ慎重に解決していったお陰で、アマリリスとの結婚まで漕ぎ着けた。


二人共、疲労が積み重なりクタクタではあったが、アマリリスの笑顔を見ると疲れも吹き飛んだ。

アマリリスは自分も大変な状況下にいるにも関わらずに、必死に支えてくれていた。

そんな健気で優しい姿に、さらに惚れ込んでいく。

アマリリスを愛するまでは、こんなにも人を愛せるようになるとは思っていなかった。


真っ直ぐで素直で度胸があって…けれど、どこか抜けていて。

そんなアマリリスを心の底から愛おしいと思っていた。


強いていうのなら限界まで我慢してしまい、甘え下手なアマリリスを心配していた。


しかし、その心配は現実となる。


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