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04.夜の華



そんな凛々が最後まで金を返さずに行方を眩ますなんて考えられなかった。


しかし、アパートの大家に聞いても凛々の行き先は知らなかった。

誰にも行き先を伝えずにアルバイトも全て辞めたらしい。


部下達を使って凛々を探させた。

しかし、何の手がかりもないまま凛々の捜索は難航した。




そして、凛々が居なくなってから二ヶ月が経とうとした。




ヤスが慌てた様子で部屋に飛び込んできた。






「ーーリュウの兄貴ッ!たっ、たいへ」


「うるっせぇな!!なんだヤス!」


「……凛々ちゃんがッ、凛々ちゃんが見つかったって連絡がぁ!」


「………!!?」


「すぐに…「ヤス!!今すぐ車出せッ」


「はい……っ」



車に乗り込むとヤスが状況を説明する。


凛々は逃げたのではなく、住み込みのアルバイトをする為に引っ越したのだと言うこと。

そして二ヶ月間、毎日休まずに働いているらしい。



「体調、崩してなきゃいいんですけど……凛々ちゃん、すぐ無茶するし、優しいしお人好しだし、僕心配に…っ」


「テメェ、ヤスコラァ!!不吉なこと言うんじゃねぇ!!」


「兄貴ッ!危なっ…落ち着いてくださいッ」



パーキングに車を駐車してから、ヤスに連れられて煌びやかなネオンが光る繁華街を進んでいく。



「…………ここは」



大きな看板とスーツの男。

まさかと思い、ヤスと顔を見合わせた。



「ーーいらっしゃいませ、二名様ですか?」


「……」


「どうぞお入りください!」


「キャバ、クラ……?」



黒服に案内されるまま席に着く。



「可愛い子が沢山いますよ?写真を見て気になる子が居たら是非…!お客様は初回ですから……」



薄暗い店内、響く笑い声。

渡された冊子をヤスに預けて男に食ってかかる。



「んなのは、どうでもいいんだよッ!ここに凛々っていう女はいねぇか!?」


「リリ……?あぁ!」


「ッ、知ってんのか!?」


「勿論です!噂で聞いたのですか?」


「噂……?」


「彗星の如く現れたウチのナンバーワンキャストですよ!!」


「は………!?」



黒服は嬉しそうに笑顔を浮かべている。



「ーーリリスちゃん、ご指名入りましたぁ!!」


「おい、ちょっ……!」



別人だと言って止めようとした時だった。

コツコツと鳴るヒールの音。

出てきた女性に目を見開いたまま動けずにいた。



「はじめまして、リリスです」


「……!!?」


「ああ……!"田中さん"と"ヤスさん"」


「やっぱりリリスちゃんのお客様か!頼むよ、リリスちゃん」


「ふふ、はぁい……お隣失礼致します」



ヤスは空いた口が塞がらないのか、隣で間抜けな顔をしている。

リリスはヤスとの間にゆっくりと腰掛けてからハンカチを膝に置く。


マゼンタ色と黒のレースのミニドレス。

大胆に露出された肌と夜に映える濃い化粧。

ブランド物のバッグを持ち、ギラギラと輝く真っ赤な宝石が嵌め込まれたアクセサリーを着けた別人のような凛々の姿があった。



「おま゛っ……!おまッ!?」


「お話する前に乾杯しませんか?わたし、喉乾いちゃって……」



妖艶に笑いながらドリンクを強請る凛々の姿に震えが止まらなかった。



「リリス……シュワっとしたものが飲みたいな。田中さんも好きでしょう?」


「……っ」


「り、凛々ちゃん……?」


「再会を祝って……ね?ダメですか」


「べ、べっ、別に…」


「兄貴ッ!?」


「ありがとうございます、田中さん!」



凛々が手を握りながら嬉しそうな笑顔を見せる。

そして手を伸ばすと少し掠れた声で黒服を呼ぶ。



「ベルピンク、持ってきてくださぁい」


「かしこまりました!!ベルエポック、ロゼ入りましたあぁ」


「「「「ありがとうございます!」」」」


「「……」」



流れるように開けられたシャンパン。

凛々はニコニコと笑みを浮かべながら、店員からシャンパンを受け取る。

そして乾杯すると、慣れた様子でグラスを傾けて綺麗に流し込んでいる。



「……こんなところで、何してんだ」


「何って……稼いでいるのよ?自由になる為に」


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