最終話
「俺もアマリリスの意見に賛同する。その案ならばアマリリスと共に両国を守っていける」
「……ユリシーズ様」
「胸がスッとしたような気がする。いつも俺を驚かせてくれるな」
「やはり、欲張りでしょうか……?」
「アマリリスは、もう少し欲張りでもいいんじゃないか?もっと色々と言ってもいいと前々から…」
「ユリシーズ様は最近、わたくしを甘やかし過ぎです……!」
「好きだから甘やかしたいんだ」
「な、なら…わたくしもユリシーズ様を甘やかしてみせますわ!!」
「ふぅん?」
「ま、またそんなカッコいい顔ばかりしないで下さい!!心臓が持ちませんわ!」
「それはいいな、覚えておく」
「……っ!!もう……ッユリシーズ様の為に作った新作の刺繍、見せてあげませんからね!」
「すまない…アマリリスが可愛すぎて歯止めが利かなかった」
「そうやって嬉しい事ばかり!今日中には仕上げますから……」
「そうか、楽しみだな」
難しい顔をしていたミッドデー国王とミッドナイト女王は、チラリと目を合わせた。
目の前で純粋な愛を育むユリシーズとアマリリスを見ていると、啀みあっている自分達が馬鹿馬鹿しくなってくる。
「わたくしの方が、ユリシーズ様の事が大好きですからッ!」
「いや、俺だな」
「わたくしですわ!」
「俺の方がアマリリスを愛してる」
「愛っ……ッずるいです!!」
そんな二人の様子を見ていたミッドナイト女王とミッドデー国王は小さな溜息をついてから握手を交わした。
「……前向きに検討しないか?」
「ああ……それがいい」
アマリリスとユリシーズは互いに王国に帰り、消えた王女、王太子として歓迎を受けた。
そして二十歳の誕生日を迎えた夜に、ミッドナイト女王の言う通り、藍色の髪は綺麗な金色に染まった。
ますます輝きが増して美しさに拍車がかかるユリシーズに焦りを感じていた。
その様子を見たユリシーズが髪をバッサリと切ろうとするのをミッドナイト女王とアマリリスは必死で止めたのであった。
そんな中、エルマーとミッチェルはミッチェルの体調が回復した為、結婚式を挙げることとなった。
出席するべきか迷ったが、ユリシーズと共に参列した。
シルベルタ公爵は少し離れたところで静かに涙を流しながらアマリリスに頭を下げた。
ミッチェルは念願の結婚式に終始ずっと泣いていた。
エルマーと結婚する事をずっと夢見ていたのだろう。
「アマリリス様のお陰で、心から愛する人とこうして結婚する事が出来ました…この恩は一生忘れません」と涙ながらに言われて涙腺はついに崩壊した。
それからジゼルとミッチェルとアマリリスは定期的に集まり、お茶をする仲となった。
エルマーとミッチェルに続くように、スペンサーとジゼルも結婚式を挙げた。
幸せそうに寄り添う二人を見て、アマリリスとマクロネ公爵は大号泣していた。
ジゼルはアマリリスを抱きしめて嬉しそうに涙を流した。
そんな二人を見たスペンサーは「まるで本当の姉妹みたいだね」と微笑んだ。
二人は立派にバルバド王国を支えている。
和平協定についての調整は何度も何度も行われた。
互いの国を往復しながら、長年の重苦しい関係に終止符を打つために必死に動いていた。
ハーベイはアマリリスに正式に謝罪を行った後、スペンサーやジゼルと共に、アマリリスとユリシーズの為に積極的に動いてくれた。
ミッド王国として統合している混乱を狙ってティムリムが動けないように、オマリやエルマー、マクロネ公爵が力を貸してくれた。
ララカはずっと側で支えてくれた。
フランとヒートは美味しいご飯を作ってくれた。
沢山の人達に支えられ、助けられながら明るい未来の為に様々な困難を乗り越えていった。
ーーー数年後
再び、ミッドデー王国とミッドナイト王国が一つに戻ることを記念して国中は喜びに包まれていた。
そしてユリシーズとアマリリスの結婚を機に長年の因縁に終止符を打ち、国は一つになった。
こうして、かつて悪女と呼ばれたアマリリスは牢の中から王妃として返り咲いた。
ユリシーズは騎士から国王となった。
二人はいつまでも仲睦まじく、幸せに暮らしたのだそうだ。
ミッド王国の旗には、勇ましく睨み合う竜と虎、月と太陽が描かれていたそうだ。
国王は王妃を生涯愛し抜き、王妃もまた国王を愛し続けた。
国王は王妃の刺繍が入ったものをいつも身につけて、持ち歩いていたそうだ。
そして、ミッド王国で和柄刺繍が流行ったのは言うまでもない。
Happy end
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全85話、完結致しました
今まで物語を読んで下さった皆様に感謝を申し上げます!!
明日から番外編となりますので、宜しくお願い致します♪