82.明るい未来へ(2)
ミッドデー国王が滞在している間、少しだけ魔法の使い方を習った。
そしてアマリリスの母親であるマヤの話も沢山聞いた。
ペンダントの中、幸せそうにミッドデー国王に寄り添いながらアマリリスを抱きしめているマヤが、どんな気持ちでアマリリスを手放したのか、ミッドデー国王を裏切ったのかは誰にも分からない。
この写真を残していったのはアマリリスを見つけ易くする為だろうか。
それとも………。
そしてミッドデー国王を呼び出した高級ドレスショップの店員の男は、母親がミッドデー王国から連れ去られており、言う事を聞かなければ命はないと脅されてやったのだと涙ながらに話した。
彼はミッドデー国王を、バルドル王国に呼びに行く役目を任されていたらしい。
そしてミッドナイト女王も、気になる事があると話した。
シャロンと共にバルドル王国の騎士が護衛として共に居たそうだが、バルドル王国に着いた途端に"先に城に戻り、知らせて参ります"と言った後から姿を見ていないそうだ。
しかしバルドル王国の騎士の中には、そんな騎士は所属していない事が分かった。
その人物がシャロンをミッドナイト王国へと導き、口封じの為に殺害したのではないかとの結論に至った。
そしてマヤが本当にティムリムの工作員だったのか。
シャロンと共にミッドナイト王国へと赴き、バルドル王国の騎士に扮した男は何処へ消えたのか……。
姿を消した後では証拠もなく、調べる事も難しくなってしまった。
しかし、三国で話し合いを行うことで無益な争いを生む事なく、ティムリムの思惑を阻止する事が出来たのは大きいといえるだろう。
今後、三国はティムリムに対しての警戒と厳しい対処を求められる事となった。
そしてミッドナイト女王とミッドデー国王は一度、国に帰る事になった。
ミッドデー国王は「アマリリスと片時も離れたくない」と駄々を捏ねていたが、ミッドナイト女王に「一国の王が見苦しいぞ」と、引き摺られるようにして去って行った。
ユリシーズと共に、気持ちを整理出来る様にと時間を貰った。
ジゼルやエルマーやスペンサー、オマリやララカ、フランやヒートを交えて、マクロネ公爵家で今まで通り穏やかな時を過ごしていた。
ある日の夜、寄り添いながら月を眺めていた。
「……ユリシーズ様」
「アマリリス」
互いの手を握ったまま、二人は視線を合わせた。
「まさか、こんな事になるなんてな」
「……はい」
ユリシーズの瞳が月の光に反射してキラキラと光っていた。
綺麗な藍色の髪が、魔法のように金色に染まるのかと思うと不思議な気分だ。
ユリシーズも首元のペンダントを見ていた。
太陽石を通じて魔法を使うことが出来ることが、まだ信じられないのだろう。
あの日から、ずっとユリシーズの不安や悩みを感じ取っていた。
最近、明らかに元気がないユリシーズを心配していた。
そして、意を決して口を開いた。
今日は自分の考えを話せたらと思っていたからだ。
「わたくしは、ユリシーズ様と共に過ごせたら幸せだと思っています」
「!!」
「こんなに愛おしいと思ったのは、初めてですから…」
自分達が利用されていたとしても、裏切られて悲しいことが沢山あったとしても、今こうしてユリシーズと出会えた事は心から良かったと思う。
「………ありがとう」
「今は苦しくても、いつかきっと報われると思います。だから、ユリシーズ様の進みたい道へと進んでください」
「アマリリス…」
ユリシーズの頬に手のひらを添えた。
その手に擦り寄るように頬を寄せた。
目の下には隈が深く刻まれている。




