75.明らかになる真実(5)
ーーーバンッ!!!
再び、乱暴に扉が開いた。
慌てる騎士達、侵入者ともいえる人物を止められないのには理由があった。
「ーーー本当に我が娘がッ、マヤとワシの娘がここに居るのか!?」
「間違いありません……!」
とてつもない勢いで男が入ってきたことに、周囲は呆然としていた。
そこには燦々と輝く太陽のような朱色の髪を持ち、ギラギラと輝く金色のアクセサリーを身につけた派手な格好をした男が現れた。
その後ろにはユリシーズとジゼルと買い物をした際に、ペンダントを見せて欲しいと言った高級ドレスショップの男性店員が居た。
目が合うと嬉しそうに会釈をする。
(あの時の……!)
驚いていると、派手な格好をしている男性と目が合った。
すると、突然ピタリと動きを止めた。
そして瞳を輝かせながら、突進してくるではないか。
「おぉ……!間違いないッその髪、その瞳、その美貌!!」
大粒の涙と鼻水を流しながら此方に突っこんでくる男性に、逃げる間もなく抱きしめられて、突然の出来事に動けずに居た。
泣き叫ぶ男性に力一杯抱きしめられて、背中を叩きながら解放を訴える。
ガバッと顔を上げた男の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「ああ、こんな……まさかっ!!マヤにそっくりではないか!!」
男性の手が離れた際に、胸元のペンダントがカチャリと揺れた。
「……ッ!!マヤのペンダント!?っ、マヤにプレゼントしたこのペンダントが何よりの証……!!」
「え……?」
男性がペンダントに手を翳すと宝石から光が溢れて、幸せそうに笑う二人の男女と、抱き抱えられた赤ん坊の姿が映し出される。
(……これって、アマリリス?)
「マヤァァァッ!!アマリリスゥウゥ!!」
「!?」
「間違いないッ、我が娘アマリリス……南風の導きに深く感謝を!!」
目の前で大号泣する男性に反射的にハンカチを渡す。
男性は御礼をいいながら、鼻水と涙だらけの顔を拭いていた。
「素晴らしい刺繍だな……さすがマヤとワシの娘だ」
と、嬉しそうに頷きながら思いきり鼻をかむ。
この男性は、アマリリスを"我が娘"と呼んだ。
ということは、この人は……。
(アマリリスの本当の父親…!?)
恐らく"マヤ"が母親なのだろう。
そんな時、思いきり顔を歪めた女王が問いかける。
「こんなところで何をしている……ミッドデー国王」
「ミッドナイト女王……?なんだ、幻か…?何故お前がここに居る!?ここはバルドル王国の筈だろう?」
「わたしは息子に会いに来っ……」
「お主の事情など、どうでもいいッ!!ワシは娘がバルドル王国にいると聞いて、居ても立っても居られずに押しかけた次第だ!謝罪は後程、全力で行おうッ!バルドル国王よ、すまない!!」
「「「「「……」」」」」
堂々と自分の行いを反省しているミッドデー国王は、豪快且つ、大胆である事が見て取れる。
ユリシーズと目を合わせた。
そしてこの男性がミッドデー国王だとしたのなら、アマリリスはミッドデー王国の王女ということになる。
(アマリリス……貴女、王女だったの!?)
「まさかマヤと共に行方不明になった王女が、バルドル王国にいるなんてワシは思わなかった……!」
「わたしも同じだ……何者かに攫われてしまった王太子がバルドル王国にいるなど思わなかった」
「「は……?」」
つまりはユリシーズが何者かに拐かされたミッドナイト王国の王太子であり、アマリリスは母親と共に行方不明になったミッドデー王国の王女ということだ。
瞬く間にアマリリスとユリシーズの身元が、バルドル王国に広がることとなった。
(……こんな偶然って、あるの?)