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67.嵐の前の静けさ(4)



「やだ、もう!ウフフ……二人とも初々しくて素敵よ」


「「……」」


「此方まで顔が赤くなるわ!ね、お兄様」


「ああ、とてもお似合いだ」



そんなエルマーの言葉に更に互いを意識してしまう。

牢で出会った頃には、こんな関係になるとは夢にも思わなかった。


四人は馬車に乗り込んで、会場へと向かった。


馬車が会場に着くと、ジゼルはスペンサーにエスコートされて、エルマーはミッチェルを迎えに行った。


スーハースーハーと深呼吸していると、ユリシーズが優しく手を取ってくれた。


最初はあんなに殺伐としていたユリシーズは、今では甘い表情を見せてくれるようになった。

それがまた特別感があり、嬉しいのと同時に恥ずかしくもある。



「アマリリス、行こう」


「はい」


「大丈夫だ……何があっても俺が守ってみせる」


「!!」



ユリシーズは、かけがえのない存在になっていた。


その一言で、心がとても強くなれたような気がした。

二人で階段を上がっていった。


すれ違う人々は二人の姿を見て、足を止めた。


微笑み合いながら互いを気遣う姿は周囲の視線を引きつけていた。


ユリシーズは元々女性に対しても対応は淡々としており冷たい印象があった。

しかし、今はどうだろうか。

此方に微笑みを向けながら手を取る姿は愛情に溢れているように見えた。


そしてユリシーズの隣で照れ笑いをするアマリリスに以前の面影は無い。

社交界で圧倒的存在感を見せていたアマリリスに華やかさや妖艶さはないものの、思わず目を惹く可憐さがあった。

ドレスの色にも化粧にも邪魔されることもなく、美貌は最大限に生かされていた。



「ユリシーズ様……緊張するので出来る限り側にいて下さいね」


「……あぁ、この間のようなことは絶対にないようにする」


「ありがとうございます」



顔が赤くなるのを必死で抑えていた。


騎士服に見慣れているせいか、前髪を上げていつもと違い煌びやかな格好をしているユリシーズを意識し続けて、色んな意味で心臓が飛び出そうである。


緊張をほぐすようにユリシーズは優しく接してくれる。

その笑顔を見ているとつられて笑みを浮かべずにはいられない。


(にやけちゃダメよ……しっかり、アマリリス)


会場に着いて暫くすると、見覚えのある顔があった。




それはアマリリスの憎む相手であるリノヴェルタ侯爵達だった。



リノヴェルタ侯爵、侯爵夫人、そしてアマリリスを貶めたルーシベルタだ。

視線の先に気付いたのか、ユリシーズは頭を下げて静かに耳打ちする。



「堂々としていろ」


「え……?」


「お前は、もうあの家族とは関係ない。マクロネ公爵家の一員なのだから」


「………っ、はい」



ユリシーズの言葉で心にかかった雲が晴れていく。


"後でスペンサーと共に貴女の元に行くから待っててね"

"何があっても、何を言われても胸を張って毅然としていなさい"


馬車の中でジゼルにそう言われていた。


そして、スペンサーとジゼルがアマリリスを可愛がっているところを公の場で見せつけることが出来れば牽制になるから、と。


(ジゼル様……ありがとうございます)


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