表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/94

61.苦しい胸の内(2)

 

冤罪だったことは知っているようだが、実際は色々な噂が飛び交っている。


牢に入れられた原因はシャロンを階段から突き落としたからだ。

誰にも毒など入れたことはないのに、毒殺の容疑をかけられるとは酷い扱いである。


アマリリスになっているのにアマリリスを庇うのもおかしな話だが、生き残る為に強い自分を演じていただけなのだろう。

結果として悪目立ちしてあまり良い方向に向かわなかった。


アマリリスは否定も肯定もせずに、味方を作らなかったからか噂は嘘と本当が混じり合い、どんどんと膨らんでいった。


(多分、諦めていたんだろうな……)


マクロネ公爵家が普通に接してくれるので忘れていたが、外ではまだ"悪女"のままなのだろう。


(あまり派手に動かない方がいいかも……気を付けなくちゃ)


偶然、悪い方向に重なってしまっただけだと言い聞かせていた。


軽くシーツを整えてから横になった。

モヤモヤとした気持ちを抱えたまま眠りについた。




朝起きるといつものように部屋から見える場所でユリシーズとエルマーは剣を交えていた。

激しく剣が打つかり合う音は此処まで聞こえてくるようだ。


暫くボーっとしていると、ララカの控えめなノックの音が聞こえて肩を揺らした。



(……大丈夫、いつも通りに笑える)



パンッと軽く頬を叩いてから返事をする。


ララカはいつもと同じ様子に安心したように笑みを浮かべていた。


支度をして朝食を軽く済ませてからフランとヒートの元へ向かった。

二人は悲しそうな悔しそうな顔をした。


フランとヒートの文句と愚痴は三十分以上も続いた。

「俺達は絶対に許さない」「二度と会いたくない」最後にはそう吐き捨てて仕事に戻っていった。


ジゼルは何も言わずに抱きしめてくれたのだった。



仕事を終えてマクロネ公爵邸に帰ってきたエルマーは「私は君の為に出来る事をする……本当に申し訳なかった」と、真剣な表情で言った。

「あの時の事は気にしないで下さい」と伝えると、エルマーは小さく首を振った。


そして「アマリリスの事を教えてくれないか?」と、言ったエルマーは、話を聞きながら何度も相槌を打っていた。


そして今度はエルマーの事を詳しく聞いた。

ミッチェルの事を話すエルマーと、騎士としての高い志を持つエルマーは全く違っていて、ジゼルの言っていた「まるで別人よ」という意味が分かった気がした。


そして刺繍を大いに気に入ったらしく、目を煌めかせながら「騎士達に自慢して回る」と言って、刺繍を持って出掛けて行った。


ユリシーズとエルマーとマクロネ公爵は、和柄刺繍の素晴らしさについて夜な夜な語り合っているとララカが教えてくれた。


まるで本当の兄が出来たようで嬉しかった。

エルマーは悪い噂を潰して回ってくれているようだ。


そんなマクロネ公爵家の優しさに心は温まっていった。

またいつもの日常に戻りつつあった。





ーーそんな時だった。






マクロネ公爵邸にシルベルタ公爵と夫人が訪ねてきたとララカが知らせてくれた。


ジゼルとエルマーがシルベルタ公爵達の対応をしている間、ララカと共に二人が帰るまで部屋で待つことになった。



「……一体何をしに来たのでしょうね。お嬢様にあれだけのことをしておいて」


「ララカ………シルベルタ公爵達は、わたくしに会いに来た訳じゃないわ。お二人はエルマー様に会いにきたんじゃないかしら?」


「……そうでしょうか」


「きっとそうよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 今更感が半端ない。娘が食べないとか言って泣きついてきたんじゃないか?それでエルマーがほだされるw
2021/09/15 11:46 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ