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06.絶望的な牢屋ライフ(2)




(もしかして、このまま何もしなければ死ぬのかな……)


今はアマリリスがシャロンという人を階段から突き落として、牢屋に入っている最中だとしてーーー。



(これって、絶望的では……?)



死ぬだろうということを思い出したところで、果たして今、自分に何が出来るのだろう。


(牢屋の中で私は一体、どうすればいいのだろうか…?)


暫く悩んだところで、ずっと突っ込みたい事があった。



「…………苦しい」



コルセットで締め付けられた腹部についてである。

恐らく一生お目にかかる事のない高級なドレスを着ているのだが、牢屋にいたらその輝きも役に立つことはない。


(脱ぐか……)


アマリリスがドレスを脱ごうと背に手を伸ばすが、背中の紐が絡まってしまい上手く外す事が出来ない。

解こうとすればする程に絡まる紐に、あたふたしていた時だった。



「……食事を、お持ちしました」



腰に剣を携えた騎士がトレイに乗った食事を持って現れた。


その顔は険しく、此方を警戒しているように見える。

しかし、そんな視線に傷付いている場合ではない。

それよりもコルセットの窮屈さの方が辛かった。


(内臓が飛び出そうだわ……)


カタリと置かれた食事、すぐに去っていこうとする騎士を引き止める。



「あの……!」


「………何でしょう」


「ドレスを脱ぎたいのですが、手伝って頂けますでしょうか」


「……ッ!?」



騎士は唖然としてコチラを見ている。



「これでは食事をするどころか寝ることすら出来ませんわ……お願いです。騎士様」



何度背に手を伸ばしたところで、複雑に紐が絡んでいるドレスを一人で脱ぐことは出来ない。

後ろに手を回す姿勢も長時間は不可能。


縋るような思いで、目の前の騎士を見る。

腹が押される感覚にオエッとなりそうなのを必死に耐えていた。


(はぁあぁ、どうでもいいから早く脱ぎたい。頭が痛い……!)



「ぁ……」



貧血のような感覚フラリとその場によろめいた。

やはりこんな状態で寝ていたのが原因だろうか。


痛みはどんどん増していくような気がした。



「……大丈夫ですか?」


「見て分かる通り、全く大丈夫ではありませんわ」


「……」


「それと、食事をありがとうございます。お腹が空いていたから助かったわ」



アマリリスがニコリと笑うと騎士は顔を赤くする。

こちらは腹部の窮屈さに顔が青くなるばかりである。



「……城の、侍女を呼んできます」


「本当ですか……!?」


「は、はい!」


「ありがとうございます……!騎士様」


「!!」



やはり男である騎士がドレスを脱がす事はできないのだろう。

圧迫感に冷や汗を拭いながら言うと、騎士は困惑しながら足早に地下牢を出て行った。


今更ではあるが、アマリリスの口から出る言葉は自動的にお嬢様言葉に変換されるようだ。

頭で考えている言葉と口から出る言葉が違っていて、自分でも違和感がある。







ーーー三十分程、経過しただろうか







(………侍女、来ないじゃんか)



いくら期待して待っていても、騎士が牢の前に再び姿を現すことはなかった。

やはりアマリリスが嫌われていることが原因なのだろうか。


チラリと騎士が置いていった食事が乗ったトレイが目に入る。


いい匂いはするものの、硬そうなパンと野菜の切れ端が寄せ集められた炒め物。

それと見たことがない魚が焼いてあり、油のような薄黄色の汁が掛かっている。


普通ならば「何これ…」と言ってしまいそうな食事内容ではあるが、何もしていないのに食事が運ばれてくるなんて幸せがあってもいいのだろうか。


そうやって誤魔化していても、体の締め付けは消えてはくれない。

やはり幸せはタダでは手に入らないようだ。



(ぐ、ぐるじい……)




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