53.新しい居場所(9)
「さすがアマリリス様というか……」
「アマリリスって、働き者よね」
「……あぁ」
「侍女と一緒に楽々と仕事をこなすのよ?驚きだわ」
「確かに…牢でも当たり前のように自分の事を自分でしていましたから」
「リノヴェルタ侯爵家でのアマリリスの扱いは酷いものだった………その所為だろう」
「「……」」
あの日の事を思い出すと苛立ちが抑えられなくなる。
「……今はユリがアマリリスを守れるわ」
「ああ……」
「わたくし達もね」
「ありがとう、姉上」
「ウフフ、ユリが恋をしてから素直で嬉しいわ」
「……」
「皆、まだアマリリスを悪女とか悪魔とか言うけれど、わたくし達から見るアマリリスとは全然印象が違うわよね………むしろ真逆だわ」
「皆さんは誤解しています。アマリリス様は変わったのだということを伝えたいのに……」
二人の言葉に小さく頷いた。
社交界を派手に騒がせていたからか、今でも様々な噂が飛び交っている。
そしてリノヴェルタ侯爵家を追い出された時は、アマリリスの不幸を喜ぶ声で溢れていた。
令嬢達からは嫉妬や羨望の声が上がっていた。
マクロネ公爵を恐れてか、ジゼルの目を気にしてか、大声でアマリリスを馬鹿にするものは居なくなった。
だが、未だにアマリリスの噂は根強く残っている。
そして社交界から消えたアマリリスは、本当に結婚するのか疑われているそうだ。
「そうだわ!わたくし良い事思い付いちゃった」
「姉上……余計なことは」
「余計なことじゃないわよ、失礼ね!今度の王家主催のパーティーはアマリリスが変わったと知らしめる良い機会でしょう?それにアマリリスとユリの仲を見せつけて……ウフフ」
「「………」」
二人は怪しく笑っているジゼルからそっと視線を外した。
「今日はスペンサーが帰ってくるのよ!良い方法があるか相談してみましょう」
そんな時、ジゼルは突然ハッとしてから此方に向き直る。
「ちょっと待って、スペンサーが帰ってくるって事は……エルマーお兄様が帰ってくるわ!」
「……!!」
「エルマー様って、スペンサー殿下の近衛騎士であるエルマー様ですよね!?」
「スペンサーとの公務でミッドナイト王国へ行っていたの。手紙で今日、帰ってくるって言っていたから……マクロネ邸に直帰するんじゃないかしら?」
「………まずいな」
「え!?何がまずいんですか?」
「お兄様は……今のアマリリスを知らないのよ。それに良い意味でも悪い意味でも厳格過ぎるというか……頭が固いから」
「……確かに」
「スペンサーが手紙を見せてくれてれば良いんだけど……」
「で、でも今のアマリリス様なら全然…!」
「そうね。でも今日はアマリリスが邸で働く人達とランチしているのなら………間違いなく鉢合わせるわよね?」
「何か嫌な予感がする」
「わたくしもよ。何もなければいいけど」
そんな話をしている頃………。
アマリリスはララカやフラン達と共に、中庭でお弁当を食べていた。
「ぶぇっくしーーん!!」
「アマリリス様……?」
「失礼……誰かがわたくしの噂でもしているのかしら」
「きっとユリシーズ様達が美味しいって、お弁当を食べて下さっているんじゃないですか?」
「そうだと嬉しいけど……もう少し時間があったら綺麗に盛り付けできたのに。惜しい事をしたわ」
「十分ですよ!でもアマリリス様はどこから料理の知識を?僕達ですら知らない事を知っていますから不思議で……」
「ですよね、俺も気になってました。このタマゴヤキなんて聞いたことない料理だけど、めちゃくちゃ美味しいですよ」
「………それは、えっと」




