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52.新しい居場所(8)



「それで愛妻弁当を持って来てくれたのね」


「ああ」


「否定しないところが可愛いわ」


「隊長、朝からずっとウキウキし…ッフゴっ!!」


「ユリ!オマリが可哀想でしょう!?」


「……」


「た、隊長!俺の分もくださいよぉ」



ジゼルとオマリと共にバルドル城の中庭に居た。

フランとヒートと共に作ったお弁当を、ジゼルとオマリに渡して欲しいと言われていた為、二人をお昼に誘ったのである。



「さあ、お弁当を頂きましょう」



弁当箱の蓋を開けると、見たことのない料理が沢山詰まっている。

彩りや栄養バランス、勿論味もバッチリなアマリリスのお弁当。

朝から大量に作り、昼にはマクロネ公爵家で働く侍女や料理人達を誘って食べると言っていた。



「まぁ、素敵!」


「アマリリス様は、本当に器用ですよね……」


「全部、ユリの好物ばかりっていうのが素敵よね」


「あ、隊長照れて……フガッ!!」


「ユリ!!」


「……」



マクロネ公爵家の食卓はフランとヒート加入後、アマリリスのアイディアも加わって、爆発的に美味しくなった。


最近では激務のマクロネ公爵も、わざわざ家に帰って食事してから再び仕事に出掛けているらしい。


オマリが小突かれた額を押さえながら起き上がる。



「そういえば隊長、知ってます…?最近、城での食事が不満だからって、国中から料理人を集めているらしいですよ!」


「…!」


「これは間違いなく、隊長がフランとヒートをマクロネ公爵家に引き抜いたからでしょうね」


「……あの二人も、アマリリスの元に行きたいと望んでいたからな」


「わたくしも最近、公爵家に帰ってから食べる食事が楽しみなの!とても食べ易くて美味しいの」


「分かります!さっぱりしてますよね」


「アマリリスの料理に慣れていると、他の料理人が作るものが脂っこく感じるのよね」



そんな話をしながら、弁当箱の中身はサラサラと減っていく。



「あ、そうだわ!今度、スペンサーが公爵家に行きたいって。王妃陛下も一緒にいらっしゃるそうなんだけど……大丈夫かしら?」


「全く大丈夫ではない。詳しい日程と時刻を教えてくれ。それまでに準備をするように伝えねば」


「やっぱりそうよねぇ…」


「どうしたんですか?」



不思議そうに問いかけるオマリにマクロネ公爵家で暮らしているアマリリスの様子を語った。


当直から帰り、アマリリスの姿が見当たらずに、屋敷内を探し回っていると、侍女服を着て床をピカピカに磨いているアマリリスの姿。


そしてまた別日、アマリリスに足りないものはないかと聞こうと屋敷内を探し回っていると、ララカや侍女達が妙にソワソワしている事に気付く。


ユリシーズが問いかけると「アマリリス様は、庭にいます…」と気不味そうに答えた。


ユリシーズが庭に向かうと、庭師に借りた作業服を着て元気に草むしりをしている姿……。

驚き過ぎて固まっているとミミズを持ちながら「ここの土は素晴らしいですわ」と、自慢げな庭師と共に喜ぶアマリリス。


そしてユリシーズに見つかると怒られることを学んだのか、此方のスケジュールを把握しては、コッソリと仕事を手伝い、屋敷に帰ってくる頃には着替えて待っているようになった。


ララカから報告を受けているものの、アマリリスの手伝いは日に日に激しさを増していく。


働き回るアマリリスに「何故そんなことをするんだ?」と問いかけた。

するとアマリリスは震えながら…。


「働け、働けって……どこかから声が聞こえてくるんです」


と、遠くを見つめながら答えたアマリリス。


真顔で医者の元に連れて行こうとすると、全力で抵抗したアマリリスは少しだけ大人しくなったらしい。


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