49.新しい居場所(5)
「ーーアマリリス!ちょっとコレを合わせてみてくれない?」
聞こえたジゼルの声に、すぐに返事を返す。
「申し訳ありません…呼ばれたので、また今度」
「あっ……!」
「はい!今行きますっ」
ジゼルに呼ばれて、試着室に向かった。
そして年に一度の王家主催のパーティーにユリシーズの婚約者として出席するために、ユリシーズの服と色がリンクしているドレスをオーダーで作るのだそうだ。
社交界に出なくていいといっても、やはり必ず出席しなければならないパーティーは存在するのである。
アマリリスの髪色はダークチェリー色だ。
そしてユリシーズの髪色は夜空のような藍色である。
ジゼルは明るめな色を使った方がいいと、髪色に合わせた薄桃色の生地を中心にして作る事になった。
結局大量のドレスを購入してもらい、高級ドレスショップを後にした。
先程の男性が、何かを言いたげに此方を見ていたような気がした。
ジゼルと談笑しながら歩きながら、ふと後ろを見ると屈強な騎士達とユリシーズが大量の箱を持ってぞろぞろと歩いていた。
ジゼルとユリシーズは慣れた様子だが、沢山の購入品にソワソワと気持ちが落ち着かない。
「……こんなに沢山、本当にありがとうございます」
「ウフフ、必要なものを買い揃えただけだもの!そうだわ!今度、色違いのドレスをオーダーしない?」
「わぁ……!素敵ですね。是非お願いします」
「嬉しいわ!!こんな形で夢が叶うなんて、わたくし幸せよ!さて、次はアクセサリーを探しに行きましょう」
教訓、長いものには巻かれろ。
こんなに与えてもらっていいのだろうか…と心苦しい気持ちもあるが、喜んでいるジゼルを見ていると此方も嬉しくなる。
「………人と一緒に出かけて買い物するって、こんなに楽しいんですね」
「「…!!」」
こんなに物を買ってもらった事が今まであっただろうか。
借金取りに見つかれば「服でも買っている暇があるなら金返せ」と言われそうなものである。
最近、贅沢三昧でバチが当たりそうで怖くなる。
そんな時、前から見覚えのある二人が歩いてくる。
それは軽く変装しているハーベイとシャロン、そして護衛達の姿だった。
こちらに気がついたシャロンは、可愛らしく手を振っている。
「ーージゼル様、ユリシーズ様ッ!」
耳につく猫撫で声……。
アマリリスの名を呼ばないのは恐らくわざとであろう。
シャロンに嫌われている事くらい気付いている。
そしてこっちだってシャロンが嫌いである。
その後に小さく低い声でボソリと「アマリリス様も居たんですね…見えませんでした」と言われて、「ごきげんよう、目が悪くて大変ですわね」と余裕たっぷりな笑顔で返す。
バチバチ火花を散らす。
そしてハーベイとシャロンの後ろ……護衛の中にはオマリの姿もあった。
皆にバレない様に笑顔でオマリに向けて小さく手を振った。
するとオマリは話しかけたそうに此方を見ている。
「あら、シャロン!久しぶりね」
「お久しぶりです、ジゼル様っ!今日はお買い物ですかぁ?」
「そうよ!アマリリスのドレスやアクセサリー、日用品を買いにね」
シャロンはユリシーズが持った大量の袋や箱を見て目を丸くしている。
「……こ、これ全部ですか?」
「えぇ、そうよ!」
「……!!」
「アマリリスに似合うものが沢山あったのよ!まだまだ足りないくらいだわ。それに今度お揃いのドレスも着る予定なの!」
嬉しそうなジゼルの返事にシャロンは小さく唇を噛んでいる。