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33. 容疑が晴れても、その先は(4)



「僕に触るなッ!!騎士の分際で!お前らなどお父様とお母様に言えばすぐに……ッ」



アマリリスはルーシベルタを見て立ち止まった。



「………ルーシベルタ」


「この疫病神が……!!お前が余計な事をしなければ、こんな事にはならなかったのにッ!!何故お前が牢から出られて、僕が閉じ込められなければならないんだッ」


「………」


「ーーその目ッ!僕を見下すその目が嫌いなんだ……養子の分際で僕を馬鹿にして!!お父様もお母様もお前を嫌っているんだからな!」



アマリリスはじっとルーシベルタを見ていた。

次々に吐き出される暴言は、耳を塞ぎたくなるものばかりだ。



「お前が婚約破棄されたと聞いた時、腹を抱えて笑ったよ!そして犯人でなくなったとしても、もうお前に未来はないんだよッ!侯爵家からも追放されて、社交界から消えるがいい………!」


「無駄口を叩くな!行くぞ…!」



騎士がルーシベルタに注意をするが、ルーシベルタは怯む様子はない。



「離せッ無礼者が!!はっ……お前の帰る場所はもうないんだよっ……リノヴェルタ侯爵家もお前を捨てるいい理由が出来た!僕は親孝行をしたんだッ」


「………おい、今すぐその口を閉じろ」


「なんだ、お前は……今、僕が話しているんだぞ!?」



ルーシベルタが不機嫌そうに此方を睨みつける。

負けじと殺気と怒りが篭った視線を送り返す。



「ふ、ふんっ……女みたいな顔した騎士が何を偉そうにッ」


「俺は、ユリシーズ・マクロネだ。ルーシベルタ・リノヴェルタ……」


「!?」


「……」


「はっ……まさか月の騎士がこんな女顔だったなんて、なんかガッカリだな」



地味にルーシベルタの攻撃が心を抉っていく。

その様子を黙って見ていたアマリリスが前に出てから静かにルーシベルタを見据える。



「……ルーシベルタ、撤回なさい」


「はぁ……!?何故この僕が、お前如きに注意されねばならんのだ。恥を知れ」



その言葉をそっくりそのまま返してやりたいと、この場にいる全員が思っていた。



「ルーシベルタ、今すぐ謝罪しなさい」


「………っ」



アマリリスの声が低くなる。

久しぶりに牢に入る前のアマリリスを彷彿とさせる姿に驚いていた。



「わたくしのことは何を言っても構いません……ユリシーズ様は素晴らしい方です。謝りなさい」


「……っ」



アマリリスは唇を噛むルーシベルタに冷めた視線を送った後、小さく息を吐いた。



「………ああ、馬鹿には何を言っても無駄な事を忘れておりました」


「クソッ!!何なんだよ、お前ばかり良い思いをして!今更外に出られたってお前は嫌われ者の悪女なんだ!!」



ルーシベルタは騎士に引き摺られるようにして連れて行かれた。

ルーシベルタは飽きもせずにアマリリスに暴言を吐き続けている。

遠くからルーシベルタの声が地下に響いていた。



「ユリシーズ様、行きましょう」


「あぁ……」



アマリリスは顔色ひとつ変えなかった。

あれだけのことを言われても怒りもせず、平然としている姿を見ていると何故か寂しくも感じた。





(あんな人間、本当に居るのね……)


ルーシベルタの愚かさを目の当たりにして、内心驚いていた。

記憶通りといえば記憶通りなのだが、過度に甘やかされた為か見事な程に色々と勘違いしている。


しかし、恩人であるユリシーズへの暴言だけは許せなかった。


地下室の階段を一段ずつ登っていく。


(……元の世界に戻っても地獄。この世界でも地獄)



階段を上がる足が重く感じた。


そして数ヶ月ぶりに見る陽の光に目を細めたのだった。


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