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31. 容疑が晴れても、その先は(2)




二人は何故アマリリスが嫌がるのか分からなかった。

普通ならば牢から出られる事を喜ぶはずなのに。


けれど牢の中で聞いたアマリリスの言葉を思い出す。

家に居場所が無いと言っていたアマリリスは、牢から出た後に暮らす場所がないからだと納得してしまう。


そしてアマリリスを貶める為だけに、シャロンを傷つけたルーシベルタ。

そしてアマリリスの処遇に関して、一切口を出さなかったリノヴェルタ侯爵家。


ルーシベルタが犯人だと分かり、騎士団に拘束された際には「うちの息子がそんなことをするはずがない」「何かの間違いだ」「調べ直してくれ」と直様、城に抗議しに来たというのに……。


そして最後には「あの女に唆されたに違いない」と言ったのだ。

あの女とはアマリリスのことだろう。


これだけのルーシベルタとの扱いの差を見せつけられて、アマリリスに同情せずにはいられなかった。 


こんな中で育てば、心も荒んでしまうだろうと……。


冤罪からの婚約破棄……そしてアマリリスは牢へと入った。


そのことでアマリリスの未来は完全に潰えてしまっただろう。


(僕がアマリリスの人生を台無しにしてしまった……帰る場所すら奪い取ってしまったんだ)


アマリリスの冤罪の件を説明と謝罪する為に、リノヴェルタ侯爵家に向かった。

世間体を気にしていたリノヴェルタ侯爵と夫人は、ルーシベルタではなくアマリリスを強く恨んでいるようだった。


アマリリスが冤罪だと分かった瞬間の残念そうなリノヴェルタ侯爵と夫人の顔が、今も目に浮かぶ。


そして一言。


「ルーシベルタではなく、あの女が犯人で良かったのに」


冷たく、そう言い放ったのだ。


家名に泥を塗ったアマリリスを再び引き取る意思はリノヴェルタ侯爵家にはなかった。

「手放すいいきっかけだ……殿下もそう思ったのでしょう?」と言いながら、ほくそ笑んだのだ。


その発言に言葉を失った。

リノヴェルタ侯爵と夫人の本音は衝撃的だった。


(僕の間違った判断のせいで、アマリリスは……全てを失った)


本当は責任を果たすために、国王と王妃はアマリリスと再び婚約関係を結んだ方がいいと言った。

そうなればアマリリスも今まで通り暮らせるからと。


けれど周囲からの反発が強かった。


しかも、侯爵家から除籍されるアマリリスと婚約するメリットはないと宰相達から言われていた。

そして未来予知が出来るシャロンこそ、結婚相手として相応しく国のためになると。


板挟みの中で、シャロンを選んだことに罪悪感を覚えていた。

けれど、これでいいと自分に言い聞かせた。


兄であるスペンサーに「本当に、それで後悔しないのかい?」そう問われた事が、今も心に残っていた。


シャロンもシャロンで結婚には乗り気ではないようだ。

いつもやんわりと、はぐらかされてしまうがシャロンに想いを寄せている。

今のこの状況を受け入れて待つしかないのだ。



ーーシャロンの心が自分に動く事を信じて



「ユリシーズ、申し訳ないがアマリリスにこれからどうしていくつもりなのか確認をとってくれないか?」


「……はい」









ハーベイの命を受けたユリシーズはアマリリスがいる地下牢へと向かった。

ユリシーズは複雑な心境で地下へと続く階段を降りていった。



「あ………ユリシーズ様、ご機嫌よう」



牢から出られることを伝えた日から、アマリリスは元気を無くしていた。


それから「人生の夏休みが突然、終わりを迎えた」「さよなら、三食昼寝付きの幸せよ」「……こんな幸せな場所、初めてだったのに」とブツブツ訳の分からない言葉を呟いている。


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