29.全て私の思いのまま(4)
けれどアマリリスが牢に入ってからというものハーベイのアピールは増していく。
(私はユリシーズ様と結ばれるんだから……!)
そんなハーベイを躱し続けるのも鬱陶しいと思うようになっていた。
そして今まで、此方に対して何の感情もなかったはずのユリシーズが、何故だかは分からないが敵意を向け始めている。
けれどそれもユリシーズに真実を伝えれば、全てが上手くいく。
ミッドナイト王国を継ぐユリシーズこそ、未来予知という特別な力を持った自分自身に相応しい相手ではないか。
それに、この国の為に未来予知の力を使いたくはなかった。
(私が幸せになる為にこの力があるのに……皆、国のために国の為にって煩いのよ)
スペンサーやハーベイに近づく為には特別な力があると知らしめなければならなかった。
本当にその力があるのか、城で試されている最中だ。
もっと早くユリシーズの魅力と秘密に気付いていたら、作戦を変えてユリシーズの為だけにこの力を使えたのに……。
そうすれば、こんな面倒なことにはならなかっただろう。
それにハーベイが此方に気持ちを向けているからか、ユリシーズが中々好きになってくれないのだ。
(………本当、どいつもこいつも邪魔なのよ)
「頼んだぞ、ユリシーズ」
「お任せ下さい」
ユリシーズの後ろ姿を見ながら、話が噛み合う様に祈る思いでいた。
ーーーしかし、シャロンの願いは届くことはなかった。
数日後、ユリシーズがハーベイとシャロンの元に数枚の資料を持って報告しに来た。
目撃者の証言は全てバラバラで、誰も証言とは一致しなかった。
そしてユリシーズが目撃者達をキツく問い詰めたことで真犯人が発覚したのだ。
「何だって……!?シャロンを突き落としたのは、アマリリスの弟であるルーシベルタなのか!?」
「はい、間違いありません。全て吐かせました」
「流石だな……ユリシーズ、ありがとう」
「有り難きお言葉です、ハーベイ殿下」
「やはり、君は僕の最も信頼する騎士だ」
「……はい」
ハーベイを見ながら柔らかく微笑むユリシーズを見て胸は高鳴っていた。
(ああ、なんて素敵なの……あの笑顔も全部、絶対に私が手に入れてみせるわ)
「アマリリスを牢から解放してくれ……許されるのなら謝罪がしたい。話し合いの場を設けてくれないか?」
「!!」
「え……!?」
「勿論、シャロンも同席するだろう?君はとても優しいから、心を痛めているのではないかと思ってね」
「……っ!」
「シャロン…?」
「……」
「……もっ、勿論です。何の罪もないアマリリス様を罪人にしてしまう、ところでしたもの……っ」
必死に笑顔を作っていると、ハーベイは「やっぱりシャロンは優しいね」と言って嬉しそうに微笑んでいる。
(余計な事を言うんじゃないわよ…ッ!どうして私があんな女にっ!謝罪なんて……ありえないっ!ありえないわ)
はらわたは煮えくり返りそうだった。
幸せな未来へ続く道は、アマリリスとハーベイのせいで次々と崩れ去っていく。
正義感が強く、生真面目すぎるハーベイのこういうところが大嫌いだった。
それも最近では、惚れさせる事で上手くコントロール出来ていたのに……。
こうなってしまえば、アマリリスの牢に一人で行くと言った時と同じで、いくらお願いしたとしても靡くことはないだろう。
扱い辛いハーベイに苛立ちは募っていくばかりだ。




